[OJ-5-3] 口述発表:高齢期 5地域在住高齢者における主観的記憶障害(SMC)と重要な活動の満足度との関連
【はじめに】
地域在住高齢者における主観的記憶障害(以下:SMC)の有症率は,25-50%であり(Ried L et al,2006),SMCは社会活動の低下との関連が認められている(Hajime T et al,2020).また,SMCは客観的な認知機能低下よりも,抑うつなど精神的健康が有意に関連することが報告されている(Balash Y et al,2013).一方,高齢者が重要な活動に従事することは精神的健康に良い影響を与えることが報告されており(Maruta M et al,2020),重要な活動がSMCと関連している可能性が考えられる.そこで,本研究は地域在住高齢者におけるSMCと重要な活動の満足度の関連を明らかにすることを目的とした.
【対象と方法】
鹿児島県垂水市の地域コホート研究(垂水研究2019)に参加した65歳以上の高齢者690名のうち,認知機能が維持されており(Mini-Cog:3点以上),重要な活動やSMCに関する質問,フレイルなど主要データに欠損のない539名(女性65.0%,平均年齢73.6±6.1歳)を対象とした.なお,神経疾患や精神疾患の既往のある者は除外した.重要な活動は,作業選択意思決定支援ソフト(ADOC)を用いて3-5つの活動を聴取し,最も重要とする活動の満足度を5段階,遂行度を10段階で評価した.SMCは,先行研究(Tsutsumimoto K et al,2017)を参考に4項目の質問(あなたは記憶に関して問題を抱えていますか,以前よりも物を置いた場所を忘れることが多くなりましたか,親しい友人・知人の名前を忘れることがありますか,周囲の人から忘れっぽくなったと言われることがありますか)のうち,1項目以上肯定的回答(はい)があった者をSMCと判定し,SMC群と健常群の2群に分けた.その後,2群間の比較を行うため,性別,主観的健康感,うつ症状の有無(GDS-15),認知機能(NCGG-FAT),身体的フレイルの有無,ADOCの活動種目をχ²検定,残差分析,年齢,BMI,教育歴,服薬数,JST版活動能力指標を対応のないt検定,満足度,遂行度はMann-WhitneyのU検定を用いて解析を行った.そして,SMCの影響因子を特定するため,従属変数にSMCの有無,独立変数に満足度を設定,人口統計学的変数と二変量解析で有意差があった項目を共変量として調整し,ロジスティック回帰分析を行った.統計解析はSPSS ver.26を用い,有意水準は5%未満とした.本研究は,鹿児島大学疫学研究等倫理委員会の承認(170351疫)を得て実施した.
【結果】
地域在住高齢者におけるSMCの有症率は60.6%(339人)であった.SMC群は健常群と比較し,主観的健康感が低く(p<0.05),抑うつ傾向(p<0.01)であり,身体的フレイルの有症率が高くなっていた(p<0.01).重要な活動では,活動種目,遂行度に有意差は認めなかったが,満足度はSMC群が健常群と比較し有意に低くなっていた(p<0.01).ロジスティック回帰分析の結果,SMCの影響因子として,うつ症状の有無(OR 3.04,p<0.01),満足度(OR 0.79,p<0.04)が最終的に選択された.
【考察】
本研究におけるSMCの有症率は60.6%と先行研究と比較し高い水準にあった.また,地域在住高齢者におけるSMCは,重要な活動の満足度と有意に関連していた.これは,地域在住高齢者における重要な活動の満足度の低さが,SMCと関連している可能性を示唆している.SMCを有する地域在住高齢者では,精神心理面をサポートしつつ,重要な活動の満足度を高めるような支援が重要であると考える.
地域在住高齢者における主観的記憶障害(以下:SMC)の有症率は,25-50%であり(Ried L et al,2006),SMCは社会活動の低下との関連が認められている(Hajime T et al,2020).また,SMCは客観的な認知機能低下よりも,抑うつなど精神的健康が有意に関連することが報告されている(Balash Y et al,2013).一方,高齢者が重要な活動に従事することは精神的健康に良い影響を与えることが報告されており(Maruta M et al,2020),重要な活動がSMCと関連している可能性が考えられる.そこで,本研究は地域在住高齢者におけるSMCと重要な活動の満足度の関連を明らかにすることを目的とした.
【対象と方法】
鹿児島県垂水市の地域コホート研究(垂水研究2019)に参加した65歳以上の高齢者690名のうち,認知機能が維持されており(Mini-Cog:3点以上),重要な活動やSMCに関する質問,フレイルなど主要データに欠損のない539名(女性65.0%,平均年齢73.6±6.1歳)を対象とした.なお,神経疾患や精神疾患の既往のある者は除外した.重要な活動は,作業選択意思決定支援ソフト(ADOC)を用いて3-5つの活動を聴取し,最も重要とする活動の満足度を5段階,遂行度を10段階で評価した.SMCは,先行研究(Tsutsumimoto K et al,2017)を参考に4項目の質問(あなたは記憶に関して問題を抱えていますか,以前よりも物を置いた場所を忘れることが多くなりましたか,親しい友人・知人の名前を忘れることがありますか,周囲の人から忘れっぽくなったと言われることがありますか)のうち,1項目以上肯定的回答(はい)があった者をSMCと判定し,SMC群と健常群の2群に分けた.その後,2群間の比較を行うため,性別,主観的健康感,うつ症状の有無(GDS-15),認知機能(NCGG-FAT),身体的フレイルの有無,ADOCの活動種目をχ²検定,残差分析,年齢,BMI,教育歴,服薬数,JST版活動能力指標を対応のないt検定,満足度,遂行度はMann-WhitneyのU検定を用いて解析を行った.そして,SMCの影響因子を特定するため,従属変数にSMCの有無,独立変数に満足度を設定,人口統計学的変数と二変量解析で有意差があった項目を共変量として調整し,ロジスティック回帰分析を行った.統計解析はSPSS ver.26を用い,有意水準は5%未満とした.本研究は,鹿児島大学疫学研究等倫理委員会の承認(170351疫)を得て実施した.
【結果】
地域在住高齢者におけるSMCの有症率は60.6%(339人)であった.SMC群は健常群と比較し,主観的健康感が低く(p<0.05),抑うつ傾向(p<0.01)であり,身体的フレイルの有症率が高くなっていた(p<0.01).重要な活動では,活動種目,遂行度に有意差は認めなかったが,満足度はSMC群が健常群と比較し有意に低くなっていた(p<0.01).ロジスティック回帰分析の結果,SMCの影響因子として,うつ症状の有無(OR 3.04,p<0.01),満足度(OR 0.79,p<0.04)が最終的に選択された.
【考察】
本研究におけるSMCの有症率は60.6%と先行研究と比較し高い水準にあった.また,地域在住高齢者におけるSMCは,重要な活動の満足度と有意に関連していた.これは,地域在住高齢者における重要な活動の満足度の低さが,SMCと関連している可能性を示唆している.SMCを有する地域在住高齢者では,精神心理面をサポートしつつ,重要な活動の満足度を高めるような支援が重要であると考える.