第56回日本作業療法学会

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一般演題

高齢期

[OJ-5] 一般演題:高齢期 5

Sun. Sep 18, 2022 9:40 AM - 10:40 AM 第3会場 (Annex2)

座長:佐川佳南枝(京都橘大学)

[OJ-5-5] 口述発表:高齢期 5高齢者の趣味活動およびその満足度と主観的認知障害との関連

田平 隆行1池田 由里子1益満 智美1大重 匡1牧迫 飛雄馬1 (1鹿児島大学医学部保健学科)

【序論】
主観的認知障害(Subjective Cognitive Complains; SCC)は神経心理学的検査では検出されにくい自己申告の認知機能の変化のことであり(Studart et al, 2016),軽度認知障害や認知症への移行率が高い(Tsutsumimoto et al, 2017).また,余暇活動や知的活動が認知機能低下の抑制に貢献することも多く報告されているが,趣味を持つことやその満足度と主観的認知機能の特徴については不明である.本研究の目的は,高齢者の趣味活動およびその満足度とSCCの関連を明らかにすることである.
【方法】
本研究のデータは,Yクラウドシステム(Yahoo Japan)でのオンライン調査パネルから収集した.2021年2月に20歳以上を対象に鹿児島大学オンラインヘルスラボ(KU-OHL)プロジェクトの予備調査として実施され,1602人が回答した.本研究では,65歳以上の高齢者200名(女性57名,平均年齢69.6±4.1歳)を分析対象とした.SCCは,健忘(もの忘れがありますか),予定記憶(用事など予定を忘れることがありますか),置き忘れ(財布や鍵など置いた場所がわからなくなることがありますか),地誌的見当識(よく通る道やスーパーで迷うことがありますか),日付見当識(今日の日付がわからなくなることがありますか),語想起(言おうとする言葉が出てこないことがありますか)を調査し(Chu H et al, 2020,Hopman M et al, 2001),賞味期限切れ(冷蔵庫に賞味期限切れの食品が入っていることがありますか)(Ikeda Y et al, 2021)を加えた.趣味は「週1回を3カ月以上続けている趣味はありますか」で調査し,さらに「あり」群のみ満足度(4件法)を調べた.共変量は,年齢,性別,教育歴,社会的フレイル有無,精神的ストレスの有無,International Physical Activity Questionnaire(IPAQ)身体活動レベル(low-high)とした.趣味の有無による主観的認知障害をそれぞれの変数に合わせて対応のないt検定とカイ二乗検定により群間比較した.さらに趣味の有無を従属変数,主観的認知障害を独立変数としたロジスティック回帰分析を行った.趣味あり群は満足度(満足している・していない)により2群に分け,同様の解析を行った.統計解析は,SPSS ver.27.0を用い,有意水準は5%未満とした.本研究は,鹿児島大学医学部倫理審査(疫200240)の承認を得て実施した.
【結果】
趣味あり群(135名,女性33名,平均年齢69.6歳)は趣味なし群(65名,女性24名,平均年齢69.6歳)に比し,主観的な予定記憶障害(ES; 0.21, P<0.002),日付見当識障害(ES; 0.17, P<0.013),IPAQ活動レベルのlow(ES; 0.27, P<0.001)が少なく,ロジスティック回帰分析での共変量調整後も主観的予定記憶障害(OR; 2.69, P<0.017)で有意に関連した.さらに満足群(123名,女性32名,平均年齢69歳)は,不満足群(13名,女性1名,平均年齢69歳)に比し,主観的な予定記憶障害(ES; 0.14, P<0.041),日付見当識障害(ES; 0.21, P<0.016)が少なく,共変量調整後は主観的な日付見当識障害(OR; 9.67, P<0.016)が有意に関連した.
【結論】
前期高齢者は趣味を持っている人が約7割,そのうち9割は満足していた.趣味の有無とSCC,特に高度な認知機能とされる予定記憶障害は関連することが明らかとなった.さらに趣味に満足している群は,主観的な日付見当識障害が少ない可能性も示唆された.本研究は,オンライン調査の非ランダムサンプリング法であり選択バイアスの考慮が必要である.