第56回日本作業療法学会

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一般演題

認知障害(高次脳機能障害を含む)

[OK-1] 一般演題:認知障害(高次脳機能障害を含む) 1

Fri. Sep 16, 2022 2:30 PM - 3:30 PM 第7会場 (RoomD)

座長:長山 洋史(神奈川県立保健福祉大学)

[OK-1-2] 口述発表:認知障害(高次脳機能障害を含む) 1急性期病院における認知症ケアチーム依頼患者の実態調査

杉本 優輝1千田 茂1新野 由里子2松本 泰子3西川 健3 (1石川県立中央病院医療技術部リハビリテーション室,2石川県立中央病院看護部,3石川県立中央病院診療部)

【はじめに】
 認知症患者は2012年時点で462万人と推定され,以降も年々増加している.新オレンジプランでは,認知症患者の身体合併症の適切な対応を行う為,急性期病院等における行動心理症状への対応を高めることが重要と示されている.2016年には認知症ケア加算が新設され,認知症ケアチームの介入が行われている.当院においても疾患別のリハビリテーションに加え,認知症ケアチームの介入があり重層的に関わっている.これまで,認知症患者の行動や症状について精神科等での報告はみられるが,急性期病院における報告は少ない.そこで今回,当院の認知症ケアチーム依頼患者の実態を調査し,その特徴を明らかにしていくとともに今後の介入について検討したので報告する.
【方法】
 対象は, 2021年4月1日から2021年9月末日までに当院の認知症ケアチームに依頼があり退院された方118名のうち, 介入前に退院した者や状態安定した者等13名を除外した105名を解析対象とした.研究デザインは後方視的調査研究とし,診療録より基本情報,リハビリテーション指示の有無,依頼内容,在院日数,入院から介入依頼までの期間,介入期間を調査した.臨床検査値として,総蛋白(TP), 尿素窒素(BUN), 血清ナトリウム(Na),C反応性タンパク(CRP)を調査した.また,介入開始時と介入終了時のBarthel Index(以下,BI)を調査した.調査内容については単純集計を行った.本研究は当院の倫理委員会の承認を得て実施している.
【結果】
 対象は,年齢78.5±9.1歳,性別(男/女)45/60名.入院前の居住地は自宅87名, 施設14名,転院4名であった.要介護認定は,未申請:50名,要介護2:22名,要介護1:13名の順で多かった. 転帰先は転院:47名, 自宅:36名, 施設・死亡:各11名の順で多かった.入院目的は手術療法26名, その他79名であった.診療科は消化器外科20名,循環器内科13名,救急科・呼吸器外科が各11名の順で多かった. リハビリテーション指示は有90名,無15名であった.依頼内容は危険行動への対応42名, 夜間せん妄40名, 昼夜逆転と動きまわるが各26名の順で多かった.在院日数は20.4±13.2日,入院から介入依頼までの期間は5.8±6.1日,介入期間は13.2±8.8日であった.臨床検査値は,TP5.9±0.8g/dL(n=99), BUN24.2±18.3mg/dL, Na137.2±14.8mEq/L, CRP6.3±7.5mg/dL(n=100)であった.介入開始時BIは24.8±28.6点で,介入終了時BIは44.5±34.1点であった. 
【考察】
 今回, 依頼内容として危険行動への対応や動きまわる等の多動や攻撃性に関わる行動, 夜間せん妄や昼夜逆転といった睡眠に関わる行動に対しての依頼が多くある事がわかった.環境や睡眠リズムの調整等の早期のベッドサイドでのOT介入がより重要となってくると考える.また,炎症や軽度低栄養もあり,意識機能や記憶機能等のどの精神機能の低下によりそれらの行動が誘発されているかアセスメントしながら対応を見極めていきたい.今後,同一病態の対象を集積し行動や症状との関連性を検討していきたい.