[OK-2-5] 口述発表:認知障害(高次脳機能障害を含む) 2回復期脳卒中患者における非麻痺側上肢機能と注意との関連
【はじめに】
脳卒中片麻痺患者の非麻痺側上肢に機能低下が存在するとの報告が散見されている(森田稲子ら1997).一方,高次脳機能障害の中の注意障害は,脳血管障害患者全体の80%と高頻度に出現し(Van Zomerenら1984),ADLを阻害する要因となっている(Sohlbergら1993).しかし,脳卒中患者において非麻痺側上肢機能と注意との関係の検討は十分になされていない.そこで今回の研究目的は,脳卒中患者の非麻痺側上肢機能と注意との関係を視覚性注意検査と聴覚性注意検査および2種類の上肢機能検査の特徴の観点から横断的に検討することである.
【対象】
対象は,2020年11月から2021年9月までに大勝病院の回復期リハ病棟に入院した脳卒中患者96名であった.そのうち,右大脳半球損傷の初発,発症1ヵ月から4ヵ月の回復期であること.また,認知症の診断がなく,かつ意識清明で,方法に示す検査の実施が可能である22名であった.なお,本研究は当院の倫理審査で承認を得られた後に,すべての対象に同意を得て実施した(倫委第2020/3号).
【方法】
上肢機能検査としてSTEFとARATを実施した.また,注意の検査として視覚性注意検査であるTMT‐Aと聴覚性注意検査であるADT実施した.分析は,1.非麻痺側上肢機能検査(STEFとARAT)と注意検査(TMT-AとADT)との相関関係,2.注意障害4群間(視覚性注意障害のみ群:A群,聴覚性注意障害のみ群:B群,両注意障害群:C群,健常群:D群)での非麻痺側上肢機能検査の比較を行った.
【結果】
1.STEFとTMT-Aとは,有意な相関関係を認めた(rs=-0.68,p=0.002).また,STEFとADTとも有意な相関関係を認めた(rs=0.48,p=0.029).一方,ARATとTMT-AおよびADTは,相関しなかった.2.注意障害4群間(視覚性注意障害のみ群:A群,聴覚性注意障害のみ群:B群,両注意障害群:C群,健常群:D群)での非麻痺側上肢機能検査の比較した結果,STEFは, Kruskal-Wallis検定の結果,有意差を認め(p=0.012),効果量(η2)が大(0.53)であった.また,多重比較検定では,両注意障害群が聴覚性注意障害群より有意に低かった.さらに,各群間比較における効果量(r)は,小から大の効果を認めた.そして,ARATでは, Kruskal-Wallis検定の結果,有意差を認め(p=0.044),効果量(η2)が大(0.39)であった.しかし,多重比較検定では,有意差を認めなかった.一方,各群間比較における効果量(r)は,小から大の効果を認めた.
【考察】
STEFとTMT-AおよびADTとは,有意な相関関係を認めた.よって,非麻痺側上肢機能と注意とは関係することが分かった.また,STEFとARAT得点は,C群がA群またはB群より低下しており,その傾向はSTEFの方がより顕著であった.さらに,A群はB群よりも得点が低く,B群は,D群と同程度であった.(高見美貴ら2013)は,課題の需要容量(必要な注意)が課題遂行者の限界容量(注意の限界量)を超える場合は,効率が低下すると述べている.すなわち,STEFはARATより,よりスピードを要求(需要容量)する検査であることが影響したと考えられる.また,A群とC群は視覚性注意が低下している中でSTEFとARATを実施することになる.よって,物品操作時に視覚性注意における需要容量が増加することが予測され,その影響がSTEFとARATの得点低下につながったと推測される.
脳卒中片麻痺患者の非麻痺側上肢に機能低下が存在するとの報告が散見されている(森田稲子ら1997).一方,高次脳機能障害の中の注意障害は,脳血管障害患者全体の80%と高頻度に出現し(Van Zomerenら1984),ADLを阻害する要因となっている(Sohlbergら1993).しかし,脳卒中患者において非麻痺側上肢機能と注意との関係の検討は十分になされていない.そこで今回の研究目的は,脳卒中患者の非麻痺側上肢機能と注意との関係を視覚性注意検査と聴覚性注意検査および2種類の上肢機能検査の特徴の観点から横断的に検討することである.
【対象】
対象は,2020年11月から2021年9月までに大勝病院の回復期リハ病棟に入院した脳卒中患者96名であった.そのうち,右大脳半球損傷の初発,発症1ヵ月から4ヵ月の回復期であること.また,認知症の診断がなく,かつ意識清明で,方法に示す検査の実施が可能である22名であった.なお,本研究は当院の倫理審査で承認を得られた後に,すべての対象に同意を得て実施した(倫委第2020/3号).
【方法】
上肢機能検査としてSTEFとARATを実施した.また,注意の検査として視覚性注意検査であるTMT‐Aと聴覚性注意検査であるADT実施した.分析は,1.非麻痺側上肢機能検査(STEFとARAT)と注意検査(TMT-AとADT)との相関関係,2.注意障害4群間(視覚性注意障害のみ群:A群,聴覚性注意障害のみ群:B群,両注意障害群:C群,健常群:D群)での非麻痺側上肢機能検査の比較を行った.
【結果】
1.STEFとTMT-Aとは,有意な相関関係を認めた(rs=-0.68,p=0.002).また,STEFとADTとも有意な相関関係を認めた(rs=0.48,p=0.029).一方,ARATとTMT-AおよびADTは,相関しなかった.2.注意障害4群間(視覚性注意障害のみ群:A群,聴覚性注意障害のみ群:B群,両注意障害群:C群,健常群:D群)での非麻痺側上肢機能検査の比較した結果,STEFは, Kruskal-Wallis検定の結果,有意差を認め(p=0.012),効果量(η2)が大(0.53)であった.また,多重比較検定では,両注意障害群が聴覚性注意障害群より有意に低かった.さらに,各群間比較における効果量(r)は,小から大の効果を認めた.そして,ARATでは, Kruskal-Wallis検定の結果,有意差を認め(p=0.044),効果量(η2)が大(0.39)であった.しかし,多重比較検定では,有意差を認めなかった.一方,各群間比較における効果量(r)は,小から大の効果を認めた.
【考察】
STEFとTMT-AおよびADTとは,有意な相関関係を認めた.よって,非麻痺側上肢機能と注意とは関係することが分かった.また,STEFとARAT得点は,C群がA群またはB群より低下しており,その傾向はSTEFの方がより顕著であった.さらに,A群はB群よりも得点が低く,B群は,D群と同程度であった.(高見美貴ら2013)は,課題の需要容量(必要な注意)が課題遂行者の限界容量(注意の限界量)を超える場合は,効率が低下すると述べている.すなわち,STEFはARATより,よりスピードを要求(需要容量)する検査であることが影響したと考えられる.また,A群とC群は視覚性注意が低下している中でSTEFとARATを実施することになる.よって,物品操作時に視覚性注意における需要容量が増加することが予測され,その影響がSTEFとARATの得点低下につながったと推測される.