[OK-4-3] 口述発表:認知障害(高次脳機能障害を含む) 4若年性認知症の診断後より実動作を中心とした介入によりADL拡大に繋がった事例
【はじめに】
若年性認知症の原因疾患の神経軸索スフェロイド形成を伴う遺伝性びまん性白質脳症(以下HDLS)により入院前から寝たきりに近い症例を担当した.若年性認知症は高齢期の認知症よりも進行が早く,容態に応じた適切な介護等の支援が必要とされる.一方,身体機能は維持され,家族は進行防止に関わりたいという意欲が高い.過去,入院での作業療法(以下OT)の報告は見当たらず,生活期の報告より活動や参加の促進に寄与するとある.今回,診断後より残存機能を活かし,今できる生活行為の獲得に向け介入した事でADLが拡大したので報告する.なお,家族より書面で同意を得ている.
【症例紹介】
30代男性で診断名HDLS.入院1ヶ月前にバイクで事故し,精密検査で受診.認知機能低下,パーキンソンニズムなどを認め入院.翌日よりOT開始.発症前は独居で仕事は自動車関連.趣味はiPadでの音楽鑑賞.母,弟2人の4人暮らしで父は単身赴任中.弟(次男)がHDLSで母が介護をしている.
【作業療法評価】
簡単な会話は可能も情報量が多いと戸惑う.質問には無表情で手短に応答し,主訴はなし.趣味の話では饒舌となる.認知機能はMMSE-J19点,FAB5点.失行スクリーニング検査は誤りなし.精神機能はvitality index7点でカットオフ値以下.運動機能は筋力が上下肢ともにMMT5も左下肢優位に失調を認め,歩行は不安定.生活機能はFIM70点(運動46認知24).母より入浴や更衣に介助を要し,排泄はオムツを着用も自立.会話は成立しないことが多く,一日の過ごした方はよくわからないが昼夜逆転の生活と話す.
【介入方法】
OT開始時には前頭葉優位の機能障害を認め,今後は進行性の疾患から心身機能の改善は乏しいと考えられた.そのため,現時点で運動機能が比較的保たれている利点を活かし,遂行可能なADLを検討し,獲得することとした.また,介護者に支援方法を提供することとした.一方,ADL獲得だけでは離床機会に繋がらず,退院後の楽しみとなる活動の獲得が必要と考えられた.また,家族心理に会話が成立しないことへのストレスを感じ,将来に対して不安を抱く時期であることから趣味の再開を進め,本人と楽しみを共有できる生活が実現できるように介入することとした.
【経過と結果】
入院中に9回介入.入院初期は促しがなければベッド上で寝て過ごし,生理的な欲求のみ自発的な言動がみられた.ADLは入浴,移動のみふらつきを認めたため軽介助で進め,それ以外は介入にて見守りで可能となり病棟で実施を進めた.病室では自らTVを見て過ごすなど離床が進み,失禁回数も減少したがオムツの脱却は困難であった.入院後期に趣味の再開を進めた.動画鑑賞は誘導があれば視聴ができ,音楽を介して感情の表出を認めた.退院時は心身機能に変化はないがFIM82点(運動58認知24)まで向上し,ADLが拡大.趣味を通して家族で楽しみを共有できるツールになり得た.母親に紙面で情報提供し,退院後は身障手帳,指定難病申請取得後に障害福祉サービスの利用方向となった.
【考察】
若年性認知症で特にHDLSは通常5年以内に寝たきりになるとされる.本事例は入院前から運動機能は比較的保たれるも前頭葉優位に機能低下を示し,適切な支援も足りない事で不規則な生活となり寝たきりに近い状態と推測された.そのため,診断後より運動機能を活かし,認知症に有用とされる誤りなし学習の実動作練習と介護者への支援指導が早期にFIM改善に繋がったと考えられた.診断後の介入支援は症状の変化に対し,残存機能を活かした新たな生活行為の獲得と家族への支援指導ができ有効と思われた.
若年性認知症の原因疾患の神経軸索スフェロイド形成を伴う遺伝性びまん性白質脳症(以下HDLS)により入院前から寝たきりに近い症例を担当した.若年性認知症は高齢期の認知症よりも進行が早く,容態に応じた適切な介護等の支援が必要とされる.一方,身体機能は維持され,家族は進行防止に関わりたいという意欲が高い.過去,入院での作業療法(以下OT)の報告は見当たらず,生活期の報告より活動や参加の促進に寄与するとある.今回,診断後より残存機能を活かし,今できる生活行為の獲得に向け介入した事でADLが拡大したので報告する.なお,家族より書面で同意を得ている.
【症例紹介】
30代男性で診断名HDLS.入院1ヶ月前にバイクで事故し,精密検査で受診.認知機能低下,パーキンソンニズムなどを認め入院.翌日よりOT開始.発症前は独居で仕事は自動車関連.趣味はiPadでの音楽鑑賞.母,弟2人の4人暮らしで父は単身赴任中.弟(次男)がHDLSで母が介護をしている.
【作業療法評価】
簡単な会話は可能も情報量が多いと戸惑う.質問には無表情で手短に応答し,主訴はなし.趣味の話では饒舌となる.認知機能はMMSE-J19点,FAB5点.失行スクリーニング検査は誤りなし.精神機能はvitality index7点でカットオフ値以下.運動機能は筋力が上下肢ともにMMT5も左下肢優位に失調を認め,歩行は不安定.生活機能はFIM70点(運動46認知24).母より入浴や更衣に介助を要し,排泄はオムツを着用も自立.会話は成立しないことが多く,一日の過ごした方はよくわからないが昼夜逆転の生活と話す.
【介入方法】
OT開始時には前頭葉優位の機能障害を認め,今後は進行性の疾患から心身機能の改善は乏しいと考えられた.そのため,現時点で運動機能が比較的保たれている利点を活かし,遂行可能なADLを検討し,獲得することとした.また,介護者に支援方法を提供することとした.一方,ADL獲得だけでは離床機会に繋がらず,退院後の楽しみとなる活動の獲得が必要と考えられた.また,家族心理に会話が成立しないことへのストレスを感じ,将来に対して不安を抱く時期であることから趣味の再開を進め,本人と楽しみを共有できる生活が実現できるように介入することとした.
【経過と結果】
入院中に9回介入.入院初期は促しがなければベッド上で寝て過ごし,生理的な欲求のみ自発的な言動がみられた.ADLは入浴,移動のみふらつきを認めたため軽介助で進め,それ以外は介入にて見守りで可能となり病棟で実施を進めた.病室では自らTVを見て過ごすなど離床が進み,失禁回数も減少したがオムツの脱却は困難であった.入院後期に趣味の再開を進めた.動画鑑賞は誘導があれば視聴ができ,音楽を介して感情の表出を認めた.退院時は心身機能に変化はないがFIM82点(運動58認知24)まで向上し,ADLが拡大.趣味を通して家族で楽しみを共有できるツールになり得た.母親に紙面で情報提供し,退院後は身障手帳,指定難病申請取得後に障害福祉サービスの利用方向となった.
【考察】
若年性認知症で特にHDLSは通常5年以内に寝たきりになるとされる.本事例は入院前から運動機能は比較的保たれるも前頭葉優位に機能低下を示し,適切な支援も足りない事で不規則な生活となり寝たきりに近い状態と推測された.そのため,診断後より運動機能を活かし,認知症に有用とされる誤りなし学習の実動作練習と介護者への支援指導が早期にFIM改善に繋がったと考えられた.診断後の介入支援は症状の変化に対し,残存機能を活かした新たな生活行為の獲得と家族への支援指導ができ有効と思われた.