[OK-4-5] 口述発表:認知障害(高次脳機能障害を含む) 4認知症高齢者の行動パターンの類型化と予測
クラスタ分析とネットワーク解析による行動パターンの類型化と決定木分析による予測
【背景】人の行動は一見複雑に見えるが「人は習慣の生き物である」という言葉が表す通り,日常行動のほとんどは,無意識に行われる習慣化された行動に依拠している(Dewey J,1958).認知症高齢者の日常行動も何らかの習慣化された行動パターンに基づいているならば,行動情報を分析することで,それらパターンを類型化することができ,その予測も分析可能である.
【目的】本研究は,通所リハビリテーション(デイケア)利用中の認知症高齢者の位置情報を分析することで,行動パターンを抽出,類型化し,精神・行動障害(BPSD)の項目からその類型を予測することを目的とする.
【方法】対象は,デイケアを利用している96名の認知症高齢者である.位置情報はFUJITSUユビキタスウェアを用い,6m間隔で天井に9箇所設定したビーコンからの電波を対象者に装着したセンサーバンドで受信することで,3秒毎の位置情報を検出した.一方,BPSDの評価にはNeuropsychiatric inventory(NPI)を用いた.分析は,位置情報を縦軸,経過時間を横軸としたラインチャートを作成,correlationによるクラスタ(CL)分析を行い,行動パターンを分類した.また,行動パターンの特徴を解釈するため,グラフ理論に基づくネットワーク解析を行い,行動パターンを可視化した.ネットワーク解析ではノード間の接続数と方向性に着目,それぞれのノードの媒介中心性を分析,ノードに媒介中心性,エッジに移動回数が反映されるよう可視化した.次に,分類されたCLを予測する決定木分析を実施した.決定木分析では,CL該当可否を従属変数,NPIの下位項目を独立変数とした.モデルの過学習を防止するため,親ノードの事例数を10,子ノードの事例数を3,階層の最大深度は3に設定した.なお本研究は,筆頭著者の所属する施設の倫理審査員会から承認を得たうえで実施した.
【結果】CL分析の結果,行動パターンは3つに分類された(CL1:29名,CL2:19名,CL3:46名).ネットワーク解析を用い3類型の行動パターンを可視化したところ,CL1は自席とトイレだけを何度も行き来する常同型行動パターン,CL2は荷物置場に頻回に移動し,頻回に荷物を確認する不安型行動パターン,CL3は自席でじっとしている無動型行動パターンであった.一方,決定木分析の結果,CL1の予測モデルは,一層「易怒性」,二層「興奮」,三層「異常行動」で生成され,「易怒性」なしの27.2%,「脱抑制」なしを加えると30.8%,「異常行動」ありを加えると50.0%の該当確立であった.CL2の予測モデルは,一層「多幸」で生成され,「多幸」なしの21.8%が該当した.CL3の予測モデルは,一層「易怒性」,二層「脱抑制」で,「易怒性」ありの50.6%,「脱抑制」なしを加えると52.9%の該当率であった.
【考察】本結果から,デイケア利用中の認知症高齢者の行動パターンは,常同型,不安型,無動型の3つに分類され,それぞれを予測するBPSDの項目は,常同型が「易怒性」「興奮」「異常行動」,不安型が「多幸」,無動型が「易怒性」「脱抑制」であった.認知症高齢者と関わるとき,我々は真摯に向き合うからこそ,知らず知らずのうちに行動変容を期待してしまうが,実行動の変容は難しくギャップが生じる.そして,このギャップはストレスの一因にもなる(Rogers C,1959).しかし,前もって認知症高齢者の行動パターンが予測できれば,このような状態を回避できるばかりでなく,認知症高齢者の行動の理解を深める一助となると考えられる.
【目的】本研究は,通所リハビリテーション(デイケア)利用中の認知症高齢者の位置情報を分析することで,行動パターンを抽出,類型化し,精神・行動障害(BPSD)の項目からその類型を予測することを目的とする.
【方法】対象は,デイケアを利用している96名の認知症高齢者である.位置情報はFUJITSUユビキタスウェアを用い,6m間隔で天井に9箇所設定したビーコンからの電波を対象者に装着したセンサーバンドで受信することで,3秒毎の位置情報を検出した.一方,BPSDの評価にはNeuropsychiatric inventory(NPI)を用いた.分析は,位置情報を縦軸,経過時間を横軸としたラインチャートを作成,correlationによるクラスタ(CL)分析を行い,行動パターンを分類した.また,行動パターンの特徴を解釈するため,グラフ理論に基づくネットワーク解析を行い,行動パターンを可視化した.ネットワーク解析ではノード間の接続数と方向性に着目,それぞれのノードの媒介中心性を分析,ノードに媒介中心性,エッジに移動回数が反映されるよう可視化した.次に,分類されたCLを予測する決定木分析を実施した.決定木分析では,CL該当可否を従属変数,NPIの下位項目を独立変数とした.モデルの過学習を防止するため,親ノードの事例数を10,子ノードの事例数を3,階層の最大深度は3に設定した.なお本研究は,筆頭著者の所属する施設の倫理審査員会から承認を得たうえで実施した.
【結果】CL分析の結果,行動パターンは3つに分類された(CL1:29名,CL2:19名,CL3:46名).ネットワーク解析を用い3類型の行動パターンを可視化したところ,CL1は自席とトイレだけを何度も行き来する常同型行動パターン,CL2は荷物置場に頻回に移動し,頻回に荷物を確認する不安型行動パターン,CL3は自席でじっとしている無動型行動パターンであった.一方,決定木分析の結果,CL1の予測モデルは,一層「易怒性」,二層「興奮」,三層「異常行動」で生成され,「易怒性」なしの27.2%,「脱抑制」なしを加えると30.8%,「異常行動」ありを加えると50.0%の該当確立であった.CL2の予測モデルは,一層「多幸」で生成され,「多幸」なしの21.8%が該当した.CL3の予測モデルは,一層「易怒性」,二層「脱抑制」で,「易怒性」ありの50.6%,「脱抑制」なしを加えると52.9%の該当率であった.
【考察】本結果から,デイケア利用中の認知症高齢者の行動パターンは,常同型,不安型,無動型の3つに分類され,それぞれを予測するBPSDの項目は,常同型が「易怒性」「興奮」「異常行動」,不安型が「多幸」,無動型が「易怒性」「脱抑制」であった.認知症高齢者と関わるとき,我々は真摯に向き合うからこそ,知らず知らずのうちに行動変容を期待してしまうが,実行動の変容は難しくギャップが生じる.そして,このギャップはストレスの一因にもなる(Rogers C,1959).しかし,前もって認知症高齢者の行動パターンが予測できれば,このような状態を回避できるばかりでなく,認知症高齢者の行動の理解を深める一助となると考えられる.