第56回日本作業療法学会

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一般演題

MTDLP

[OM-1] 一般演題:MTDLP 1/ 理論 1

Sat. Sep 17, 2022 12:30 PM - 1:30 PM 第4会場 (RoomA)

座長:石川 隆志(秋田大学大学院)

[OM-1-1] 口述発表:MTDLP 1/ 理論 1地域包括ケア病棟での在宅復帰に向けたMTDLPの有用性の報告

~ケースシリーズ~

佐野 裕和1平田 哲男1佐野 伸之2 (1井原市立井原市民病院リハビリテーション科,2福岡国際医療福祉大学医療学部作業療法学科)

【はじめに】地域包括ケア病棟の役割として在宅復帰支援が挙げられるが,入院期間は60日であり,多職種が協働し,早期に生活機能を回復させることが求められている(地域包括ケア病棟協会,2019).多職種協働を促進し,生活機能を向上させる実践手法として生活行為向上マネジメント(以下,MTDLP)が開発されている(日本作業療法士協会,2014).このため,地域包括ケア病棟においてMTDLPを活用することで,対象者の生活機能が向上し,在宅復帰につながると予測されるが,地域包括ケア病棟でMTDLPを活用した報告は少ない.本報告の目的は地域包括ケア病棟に入院した2事例に対するMTDLPを報告し,地域包括ケア病棟におけるMTDLPの有用性を検討する.事例より署名にて発表同意を得た.
【事例紹介】左片麻痺を呈した脳血管疾患の80代男性(A氏),70代女性(B氏).A氏は当院入院し,発症から10日後のX日に地域包括ケア病棟へ転棟した.B氏は急性期病院での治療後,発症から54日後のY日に当院の地域包括ケア病棟へ転院した.
【生活行為アセスメント】A氏のBRSは5/5/5,左上下肢に中等度感覚鈍麻があった.FIMは79点であった.B氏のBRSは5/5/4,左上下肢の重度感覚鈍麻があり,注意の分配性が低下していた.FIMは82点であった.両事例は日中臥床傾向であった.両事例の環境面は持ち家に住み,家族が協力的であった.
【介入方針】生活行為アセスメントに基づき両事例のX・Y日直後のカンファレンスで合意目標を設定し,本人の取り組みや各職種の支援を共有した生活行為向上プランを立案する.それらの内容を簡略化したマネジメントシート(以下,シート)を病室に設置することで,本人,家族,多職種が常に確認できる工夫を施し,在宅復帰につなげる.
【経過】
A氏:合意目標は「外出準備を1人で整え,妻と一緒に毎日お墓まで散歩する」であり,実行度・満足度は1であった.活動性向上のために,応用的プログラムで着替えと日記を促した.また,基本的プログラムで趣味の将棋を用いて左上肢の積極的使用を促した.それらのプログラムの声かけと確認を妻や病棟スタッフへ依頼した.社会適応プログラムでは,T字杖歩行で妻と手をつなぐ方法で,お墓まで散歩を行った.
B氏:合意目標は「病室トイレ動作を見守りで可能となり,自宅トイレ動作自立につなげる」であり,実行度・満足度は1であった.社会適応プログラムの自宅トイレ練習では,動作手順が曖昧で多くの声かけや介助を要した.自宅トイレ動作を習得するために,応用的プログラムでトイレ動作の手順書を作成し,手順や声かけの方法を病棟スタッフと統一した上で,反復による動作学習を促した.
【結果】A氏の合意目標は実行度8,満足度7となった.BRSは6/6/6,左上下肢軽度感覚鈍麻,FIMは107点に改善し,X+30日に自宅退院した.B氏の合意目標は実行度・満足度10となった.BRSは6/6/5,左上下肢中等度感覚鈍麻,FIMは95点に改善し,介護保険サービスへ生活行為申し送り表を作成した上で,Y+55日に自宅退院した.
【考察】MTDLPを用いて多職種で目標共有,役割の明確化を行い,シートを作成することで目標に対しての各職種の役割を可視化することができ,限られた入院期間での効率的な協働を促した可能性がある.また,生活行為アセスメントは心身機能,活動・参加を包括的に捉えられる枠組みが整理されており,生活行為向上プランは生活行為のバランスを考慮したプログラムの段階付けや,多職種のマネジメントを円滑化する.地域包括ケア病棟での在宅復帰に向けた支援において,MTDLPを介入早期から活用することによって,多職種協働を促進することが期待できる.