[ON-1-3] 口述発表:地域 1訪問リハビリテーション開始時のFIMスコアが介入3か月後のFIM利得に与える影響
【はじめに】リハビリテーション(以下,リハ)におけるADL評価法のFIMは,介入前後のFIMの差(以下,FIM利得)により,ADLの改善を評価することが多い.回復期リハ病院の報告では,改善の乏しい患者が含まれる「入院時FIMが低い患者」と天井効果の影響がある「入院時FIMが高い患者」のFIM利得は小さいと言われており,FIM利得は入院時FIMの影響を受けるとされている.一方,訪問リハの役割としてADLやIADL向上,家族の介護負担軽減,行動範囲の拡大があげられているが,比較的少人数を対象にした先行研究が多く,エビデンス構築において課題がある.また訪問リハ開始時のFIMスコアがその後のFIM利得に与える影響に関する報告は見当たらない.そこで本研究は,訪問リハの介入によって訪問リハ開始時のFIMがFIM利得に与える影響を明らかにすることを目的にした.
【方法】対象は2016年8月から2019年3月までに訪問リハを開始した205名(平均79歳,男性86/女性119名)とした.疾患内訳は,脳血管疾患48名,廃用症候群43名,大腿骨頸部骨折40名,骨関節疾患(大腿骨頸部骨折を除く)40名,神経筋疾患15名,その他19名であった.対象者にFIMを訪問リハ開始時(以下,開始時FIM)と介入3カ月後(以下,3カ月後FIM)に実施した.そして開始時FIMと3カ月後FIMに有意差があるか調査した.次に開始時FIMの結果から,対象者を18~35点(FIM18-35),36~53点(FIM36-53),54~71点(FIM54-71),72~89点(FIM72-89),90~107点(FIM90-107),108~126点(FIM108-126)の6群に分類した.そして各群において開始時FIMと3カ月後FIMに有意差があるか調査した.比較にはウィルコクソン順位和検定(有意水準5%)を使用した.研究参加には対象者から承諾を得ている.
【結果】開始時FIMと3カ月後FIMの中央値(四分位範囲)は,それぞれ103(89-111),107(91-116)であった.FIM利得は2(0-7)であり,開始時FIMと3カ月後FIMに有意差を認めた.人数構成はFIM18-35が7人,FIM36-53が9人,FIM54-71が16人,FIM72-89が21人,FIM90-107が75人,FIM108-126が77人であった.平均年齢は,FIM18-35が83歳,FIM36-53が85歳,FIM54-71が79歳,FIM72-89が83歳,FIM90-107が80歳,FIM108-126が77歳であった.FIM利得の中央値(四分位範囲)は,FIM18-35は2(0.5~4.5),FIM36-53は1(0~4),FIM54-71は7.5(1.75~17.5),FIM72-89は6(-1~8),FIM90-107は2(-0.5~9),FIM108-126は0(0~3)だった.FIM利得は,おおむね中等度のADL介助量のFIM54-71が最も多かった.またFIM72以上のFIM利得は開始時FIMが高くなるにつれて減少した.またADL介助量の多い開始時FIM53以下のFIM利得は,中等度のADL介助量のFIM54-71より少なかった.6群の開始時FIMと3カ月後FIMで有意差を認めたのは,FIM54-71,FIM72-89,FIM90-107,FIM108-126であった.
【考察】開始時FIMと3カ月後FIMに有意差があったことから,訪問リハ介入はADL改善に効果があると考えた.一方,ADL介助量の多い開始時FIMが53点以下の利用者のFIM改善は他群と比較して乏しく,回復期病院の報告と同様であった.また開始時FIMが72点以上になるとFIM利得が漸減していく傾向から,回復期病院の報告と同様にFIMの天井効果による影響と考えた.以上の結果から,訪問リハ開始時のFIMがその後のFIM利得に影響を与えることが示唆された.そのため訪問リハ介入によるFIM利得の検証や他施設間でFIM利得の比較のときは,対象の訪問リハ開始時のFIMの違いやFIMの天井効果を考慮に入れる必要があると考えた.またADL以外に,IADL,家族の介護負担,行動範囲等に対しての効果判定を実施していくことも重要と思われる.
【方法】対象は2016年8月から2019年3月までに訪問リハを開始した205名(平均79歳,男性86/女性119名)とした.疾患内訳は,脳血管疾患48名,廃用症候群43名,大腿骨頸部骨折40名,骨関節疾患(大腿骨頸部骨折を除く)40名,神経筋疾患15名,その他19名であった.対象者にFIMを訪問リハ開始時(以下,開始時FIM)と介入3カ月後(以下,3カ月後FIM)に実施した.そして開始時FIMと3カ月後FIMに有意差があるか調査した.次に開始時FIMの結果から,対象者を18~35点(FIM18-35),36~53点(FIM36-53),54~71点(FIM54-71),72~89点(FIM72-89),90~107点(FIM90-107),108~126点(FIM108-126)の6群に分類した.そして各群において開始時FIMと3カ月後FIMに有意差があるか調査した.比較にはウィルコクソン順位和検定(有意水準5%)を使用した.研究参加には対象者から承諾を得ている.
【結果】開始時FIMと3カ月後FIMの中央値(四分位範囲)は,それぞれ103(89-111),107(91-116)であった.FIM利得は2(0-7)であり,開始時FIMと3カ月後FIMに有意差を認めた.人数構成はFIM18-35が7人,FIM36-53が9人,FIM54-71が16人,FIM72-89が21人,FIM90-107が75人,FIM108-126が77人であった.平均年齢は,FIM18-35が83歳,FIM36-53が85歳,FIM54-71が79歳,FIM72-89が83歳,FIM90-107が80歳,FIM108-126が77歳であった.FIM利得の中央値(四分位範囲)は,FIM18-35は2(0.5~4.5),FIM36-53は1(0~4),FIM54-71は7.5(1.75~17.5),FIM72-89は6(-1~8),FIM90-107は2(-0.5~9),FIM108-126は0(0~3)だった.FIM利得は,おおむね中等度のADL介助量のFIM54-71が最も多かった.またFIM72以上のFIM利得は開始時FIMが高くなるにつれて減少した.またADL介助量の多い開始時FIM53以下のFIM利得は,中等度のADL介助量のFIM54-71より少なかった.6群の開始時FIMと3カ月後FIMで有意差を認めたのは,FIM54-71,FIM72-89,FIM90-107,FIM108-126であった.
【考察】開始時FIMと3カ月後FIMに有意差があったことから,訪問リハ介入はADL改善に効果があると考えた.一方,ADL介助量の多い開始時FIMが53点以下の利用者のFIM改善は他群と比較して乏しく,回復期病院の報告と同様であった.また開始時FIMが72点以上になるとFIM利得が漸減していく傾向から,回復期病院の報告と同様にFIMの天井効果による影響と考えた.以上の結果から,訪問リハ開始時のFIMがその後のFIM利得に影響を与えることが示唆された.そのため訪問リハ介入によるFIM利得の検証や他施設間でFIM利得の比較のときは,対象の訪問リハ開始時のFIMの違いやFIMの天井効果を考慮に入れる必要があると考えた.またADL以外に,IADL,家族の介護負担,行動範囲等に対しての効果判定を実施していくことも重要と思われる.