第56回日本作業療法学会

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一般演題

地域

[ON-2] 一般演題:地域 2

2022年9月16日(金) 15:40 〜 16:50 第4会場 (RoomA)

座長:石井 清志(国際医療福祉大学)

[ON-2-1] 口述発表:地域 2我が国の介護予防領域における多職種連携の実態

坂本 泰平12石橋 裕1若松 來夢13 (1東京都立大学人間健康科学研究科 作業療法科学域,2医療法人社団哺育会 浅草病院リハビリテーション科,3IMSグループ 西八王子病院リハビリテーション科)

【はじめに】英国の医療・社会保障政策では,複雑で多様なニーズを抱える高齢者を支援するために専門家間での連携(inter-professional working:IPW)が提唱されている(Department of Health London).我が国においても厚生労働省は,関係機関が連携し,多職種協働により在宅医療・介護を一体的に提供できる体制を構築するための取組を推進しており,地域における多職種連携の取り組みが求められている.さらにリハビリテーション専門職(以下,リハ職)と介護職との連携に関する調査研究事業より連携の提案者は介護支援専門員が最も多く,介護支援専門員がリハ職に連携を提案する理由として①より質の高いサービスが提供できると考えられたから②リハ職による動作の確認が必要と考えたから③ADLの低下や転倒不安感の増強などがみられたからとしている.我が国の介護予防領域における多職種連携の実態を調査した報告は見当たらなかった.
【目的】本研究の目的は我が国の介護予防領域における多職種連携の実態を調査し,明らかにすることである.
【方法】文献検索は医中誌Webにて検索式は(介護予防/TH or 介護予防/AL) and ((専門職間人間関係/TH or 多職種連携/AL) or (チーム医療/TH or 多職種連携/AL) or (多部門連携/TH or 多職種連携/AL))) and (PT=原著論文)とし,2022年2月13日正午に実施した.タイトルと抄録にてスクリーニングを行い,入手可能であった論文から本文吟味を行った.内容の分類はDaksha TrivediらのThe effectiveness of inter-professional working for older people living in the community: a systematic reviewを参考に行った.データ抽出は独立した作業療法士2名が同時並行で行った.
【結果】6件の論文が対象となった.実施された介護予防領域は介護予防プログラム,イベント,教室などが4件,訪問リハビリが1件,訪問型短期集中予防サービスが1件であった.対象者は集団が4件,個人が2件であった.多職種連携に関与していた職種としてリハ職が5件,介護支援専門員が5件,看護師が3件,保健師が2件,ヘルパーが2件,管理栄養士が2件,その他として健康運動指導士,歯科衛生士,通所スタッフ,医師などであった.使用されていたアウトカムは心身機能が3件,活動・参加が1件であった.また,6件のうち5件が実践報告であり,1件がクラスター非ランダム化試験であった.
【考察】
 厚生労働省は介護予防とは,心身機能の改善や環境の調整を通じて,高齢者の生活機能の向上や地域社会活動への参加をはかることにより,一人ひとりの生涯にわたる,生きがいのある生活・自己実現(Q O Lの向上)を目指すものとしている.今回の結果ではアウトカム指標は心身機能に偏っており,心身機能のみならず生活課題についてのアウトカムの使用も望まれる.また,国内の介護予防領域における多職種連携の有無の影響を比較したものは少なく多職種連携の有効性を証明するには不十分であり,今後さらなる研究が必要であると考える.