第56回日本作業療法学会

講演情報

一般演題

地域

[ON-2] 一般演題:地域 2

2022年9月16日(金) 15:40 〜 16:50 第4会場 (RoomA)

座長:石井 清志(国際医療福祉大学)

[ON-2-3] 口述発表:地域 2多職種で連携する通所型サービスCが社会活動に関連する過ごし方満足度に及ぼす効果

由利 禄巳1久保田 奈美2兼田 敏克1東 泰弘1東野 玄3 (1森ノ宮医療大学作業療法学科,2大阪市浪速区社会福祉協議会,3堺市立総合医療センター)

【序論】我々は大阪府和泉市の通所型サービスC(以下,通所C)において,由利らが開発した「生活目標設定手法」を導入した多職種連携支援を実践している.今回,2020年度から2022年度12月までに終了した通所C参加者における,高齢者向けの「社会活動に関する過ごし方満足度尺度(岡本,2010)(以下,満足度)」に及ぼす影響を検討したので報告する.
【目的】通所C参加者の満足度に及ぼす影響を検討することである.
【方法】通所Cは週1回120分(全12回)行う.主な指導・評価は健康運動指導士・栄養士・歯科衛生士が行い,作業療法士(以下,OT)は1回目と11回目の評価時に面接で目標設定を行い,取り組み課題の具体化等を行う.同日開催の関係多職種によるカンファレンスで生活目標や支援課題・方法を共有し,1回目は通所C利用中の専門職訪問指導の要否を11回目は終了後の支援方針を検討する.評価項目は属性とOT面接で設定した達成度と満足度,運動機能は長座体前屈,片脚立位時間,握力,Timed-Up & Go(以下,TUG),手段的日常生活動作(以下,IADL)の指標としてFrenchay Activities Index (以下,FAI),満足度を確認した.分析は開始時(以下,前)と終了時(以下,後)の値を対応のあるt検定を用いた.対象者には書面による同意,市役所及び所属の倫理審査会の承認を得て行った.
【結果】分析対象者は55名,男性12名(21.8%),女性43名(78.2%),平均年齢は77.9±6.8歳,独居は21名(38.2%)であった.介護度は総合事業の対象者35名(63.6%),要支援Ⅰ15名(27.3%),要支援Ⅱ5名(9.1%)であった.設定した目標の多くは趣味活動が多く,次いで家事や役割活動であった.前後比較では,目標の達成度前4.2±2.4,後5.9±2.6,満足度前4.8±2.9,後6.7±2.5でいずれも有意な差(P<0.001)があった.運動機能測定値の長座体前屈前28.9±11.0,後34.1±10.2(P<0.001)と片脚立位時間前13.1±17.7,後21.3±21.6(p=0.003)は差があったが,握力前20.8±5.4,後21.1±5.6とTUG前9.8±4.5,後9.1±5.5は差がなかった.FAIの合計は前24.2±8.7,後24.9±8.7で差がなかった.満足度は合計点前43.5±12.5,後48.9±9.8で差(p<0.001)があった.下位項目の学習に関する満足度(以下,学習)前12.9±4.3,後14.4±3.1(p=0.003)と健康・体力に関する満足度(以下,健康)前8.7±3.0,後11.5±1.9(p<0.001)に差があったが,他者・社会への貢献に関する満足度と友人に関する満足度は差がなかった.
【考察】3か月間の通所C参加において,身体機能の柔軟性やバランス能力が向上し,設定した趣味や家事,役割の目標を達成度と満足度が向上した.これらが満足度の学習と健康の値に影響を及ぼしたと考えられた.学習の因子は学びなどからなり,健康は体力や健康への自信などからなる.通所Cで自分自身を健康に保つために行うべきことを学び,実行したことが影響したと考えられた.しかし,FAIの値は向上しなかったことは,FAIが実行頻度を問う指標であることから,参加者の多くはすでにIADLを実行しているが,行いにくさを感じていたと考えられた.