第56回日本作業療法学会

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一般演題

地域

[ON-3] 一般演題:地域 3

Sat. Sep 17, 2022 10:10 AM - 11:10 AM 第3会場 (Annex2)

座長:由利 禄巳(森ノ宮医療大学)

[ON-3-2] 口述発表:地域 3要支援,要介護者における活動・参加への作業療法介入に着目した文献レビュー

山田 竜大1菊池 祐介13溝部 和12千葉 馨1石田 裕二1 (1函館市医師会看護・リハビリテーション学院作業療法学科,2合同会社クオリティ―ライズ,3東京都立大学健康福祉学部作業療法学科)

【はじめに】厚生労働省は,少子高齢化という問題に対応するために,地域包括ケアシステムの構築を推進している.年齢階層別の要介護認定率は80歳以上から約3割急上昇するとされており,地域在住後期高齢者の介護対策が急がれている(飯野ら,2017).このような社会情勢の中,土井は,地域包括ケアにおける作業療法士の役割は生活機能の状態に応じて,人物や物的環境,サービスの環境などを整え活かし,その人らしく生活できるよう支援することであると述べており,生活行為向上マネジメント(以下,MTDLP)は,国民にわかりやすく地域包括ケアに貢献できる作業療法の形となるよう日本作業療法士協会より開発された. 先行研究では,後期高齢者の身体機能は,前期高齢者よりも握力,下肢筋力,バランス能力,歩行能力が有意に低下することが報告されている(飯野ら,2017)(上田ら,2015).また,認知機能に関して,先行研究では認知症の進行がactivities of daily living(以下,ADL)低下に関連していることや,高齢化は認知症の発症率を増加させることを指摘しており(横井ら,2003),介護が必要となった原因として認知症が最も多いとされている.このように,地域在住高齢者を対象とした身体機能,認知機能,基本的ADLに着目した作業療法介入はみられる. そこで筆者らは要支援,要介護者への国際生活機能分類における活動,参加に着目した作業療法介入の内容を概観することを目的に,文献レビューを実施した.
【方法】システィマティックレビューおよびメタアナリシスのための優先的報告事項(以下,PRISMA声明)に準拠し,データベース検索として,医学中央雑誌で「(要介護 or 要支援) and (活動 or 参加) and 作業療法 」を検索式とし,原著論文に関するWeb検索を行った.データベース検索後,一次スクリーニングとして,病院,大学,養成校の紀要や,地方の作業療法の関連誌を除外し,全国誌に掲載された論文を選抜,二次スクリーニングとして単一事例報告を選抜し,報告の内容が研究の目的に合致するかを判断した.
【結果】Web検索により特定された論文は338編,この338編の論文から,一次スクリーニング,二次スクリーニングを行った結果,最終的に6編となった.概念的実践モデルでの分類は6編中MOHOを用いた介入が2編, OTIPMを用いた介入が2編,運動コントロールモデルを用いた介入が1編,認知モデルが1編であった.介入の内容ではADL(排泄動作,移動)への介入が2編,IADL(調理,掃除)への介入が2編,参加(詩吟教室の開催,夫への手紙)への介入が2編であった.
【考察】作業療法介入の概念的実践モデルによる分類では, MOHOを用いた介入が2編,OTIPMを用いた介入が2編,運動コントロールモデルを用いた介入が1編,認知モデルが1編とばらつきがみられたが,そのすべてが過去10年以内の論文であり,MTDLPの普及とともに作業療法士における活動,参加面への関心が高まってきていることが示唆された.一方,MTDLPを通した実践は1編もみられなかった.また,介入内容も排泄動作,移動,調理,掃除,詩吟教室への参加,夫への手紙といった結果になり,これは対象者が価値を置く作業の違いによる影響が大きいと考える.一方友利らは目標設定とは単に将来像を決定すればよいということではなく,目標を協働的に設定していくプロセスも重要であると述べていることから介入する作業療法士の関わり方にも着目する必要がある.今後は日本作業療法士協会の事例報告制度も含め,要支援や要介護者に対し作業療法士がどのように介入しているのか,範囲を拡げた文献レビューを行っていくとともにMTDLPを通した実践の論文が増えていくことを期待したい.