第56回日本作業療法学会

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一般演題

地域

[ON-5] 一般演題:地域 5

Sat. Sep 17, 2022 12:30 PM - 1:40 PM 第3会場 (Annex2)

座長:中島そのみ(札幌医科大学)

[ON-5-3] 口述発表:地域 5放課後児童クラブにおける作業療法士のコンサルテーション事業の有用性について

~インタビュー調査~

森川 芳彦1有安 芽衣1吉村 学2 (1専門学校川崎リハビリテーション学院作業療法学科,2川崎医療福祉大学リハビリテーション学部 作業療法学科)

【序論】岡山県では2016年度から放課後児童クラブ(以下,児童クラブ)において作業療法士(以下,OT)のコンサルテーション事業(以下,コンサル事業)が開始され,2020年度で5年目となる.この事業は,一般社団法人岡山県作業療法士会が児童クラブ団体から依頼を受けて,児童クラブにOTを派遣し,放課後児童支援員(以下,支援員)に対して発達が気になる子どもの支援についてアドバイスをするものである.佐野ら(作業療法38,2019)は,OTのコンサル事業によって得られる支援員のスキルアップ構造についてインタビュー調査をし,支援員への効果を検証しているが,コンサル事業の有用性が示された論文の数はまだ少ないのが現状である.
【目的】今回,支援員へのインタビュー調査を行い,児童クラブにおけるOTのコンサル事業の有用性について明らかにする.
【方法】コンサル事業終了後,5クラブの支援員7人に対して1人ずつインタビューを実施した.調査は新型コロナウイルス感染症の影響があり,オンラインで実施し,1人につき約60分程度行った.バイアスを避けるため,質問者は訪問したOTとは異なるようにした.質問内容は半構造化し,主な質問項目はOTのコンサル実施前のクラブの状況,コンサルを受けた感想,OTのアドバイスが役立ったか,支援員間の情報共有の変化,コンサルに使用された書類が役立ったか,支援員の心理的な変化についてであった.インタビューは録画し,記録として残し,逐語録を作成した.データ解析は修正版グラウンテッド・セオリー・アプローチ(Modified Grounded Theory Approach:M-GTA)で行った.倫理的配慮として,川崎医科大学・同附属病院倫理委員会の承認を得ており(承認番号5168-00),対象となる支援員に口頭,及び書面で説明し,書面での同意を得た.
【結果】データの解析の結果,カテゴリー8,サブカテゴリー9,概念42が得られた.カテゴリーの名称(サブカテゴリー/概念)の順に区分すると,①OTコンサル前の子どもの様子(4/10),②支援員の心理的側面(2/5),③支援員の子どもに関する知識的および実践的側面(3/12),④支援員の連携(0/2),⑤事前情報シート作成による支援員の変化(0/3),⑥OT報告書の有用性(0/3),⑦保護者・学校連携への影響(0/2),⑧子ども側の変化(0/5)であった.
【考察】今回の調査の結果,「事前情報シート作成による支援員の変化」のカテゴリーが分類された.これは支援員が事前情報シートを作成する際,子どもについて文章化するために支援員同士での話し合いをしており,その機会を通して,子どもへの考えが整理できたと考えられた.「知識的および実践的側面」のカテゴリーが分類された.これはOTのアドバイスにより支援員が子どもの行動の原因や特性を理解することができ,支援の目標が明確になり,直接的な支援方法,環境設定といったことを知ることができたと考えられた.また,「支援員の心理的側面」というカテゴリーが分類された.OTが支援員に肯定的なフィードバックや支持的な言葉掛けをしたり,支援の根拠付けをしたりすることで,支援員の自信や安心感に影響したと考えられた.これらことは支援員の保育実践につながり,子どもへの関わり方や環境が変わることで,子どもの行動が変化していくと考えられ,OTのコンサルの有用性が示唆されたと考える.今後の課題として,客観的な指標を用いて,コンサル前後の支援員の関わりや子どもの行動の変化について量的な研究も検討する必要がある.