[ON-5-5] 口述発表:地域 5軽度知的能力障害者が一般就労へ移行していくための作業療法士の取り組み
【背景】障害者雇用促進法が2020年に改正され,現在の民間企業における法定雇用率は2.3%になった.2020年の集計結果によると,知的能力障害者の新規雇用分は精神障害者や身体障害者と比較すると少ない.先行研究によると,軽度知的能力障害者は若年時から離転職を繰り返し,安定した雇用に結びつかない者がいるとされている.原因として家族と本人も障害があることに気付かず,一般高校入学後又は卒業後に外部から指摘を受けて発覚することや,小中学校ではなんとか学校生活を送ることができている等の理由から,特別支援学校高等部ではなく一般高校への進学を選択する者が存在し,特別支援学校におけるような生徒の能力に合わせた,キャリア教育・職業教育が十分に受けられていないことが挙げられる.また文献研究を行うと,作業療法士が軽度知的能力障害者を対象として就労支援を行っている研究は少なく,近年の現状が把握できていない.
【目的】軽度知的能力障害者の就労支援において,作業療法士がどのような取り組みをしているか,また取り組む際の視点や支援方法を明らかにすること.
【対象者】就労移行支援を実施する事業所等に現在勤務している,又は過去に勤務しており,就労支援の経験年数が10年以上,又は軽度知的能力障害者の支援経験事例数が25事例以上の作業療法士とした.対象者の募集方法は,東京都作業療法士会の就労支援委員会に所属する作業療法士及び共同研究者を通して,選定基準に合う作業療法士の紹介を受け依頼した.
【方法】2021年4~10月にWeb会議サービスの1つであるZoomを用いて,研究者が個別に半構造化インタビューを行った.分析は研究結果の実践的活用を重視する研究法である,修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ(M-GTA)に準拠した.分析テーマは「作業療法士が行う軽度知的能力障害者が一般就労へ移行していく支援プロセス」,分析焦点者は「軽度知的能力障害者への就労支援経験がある作業療法士」とした.本研究は筆頭著者の所属先の研究倫理委員会の承認を得て実施した.発表に際して開示すべきCOI関係にある企業等はない.
【結果】対象者は11名で,就労支援経験は平均で11.7±5.4年であった.M-GTAの分析から24個の概念〈〉と5個のサブカテゴリー≪≫,4個のカテゴリー【】が生成された.作業療法士における軽度知的能力障害者が一般就労へ移行していく支援プロセスとして,まず土台となるのは【幅広いアセスメント】をすることであった.アセスメントにより対象者を深く理解することで,作業療法士は対象者に対し【伴走者としての支援】を行いつつ【就労に向けた支援】を行っていた.これらの作業療法士が行う支援プロセスは,現在のことだけではなく〈子どもの頃からのアドバイス〉や〈先を見通した支援〉を含む【支援の連続性】のなかで行われていた.
【考察】作業療法士のアセスメントには,精神機能・身体機能・言語・社会性など幅広い視点が含まれていた.また,対象者の所属する施設では福祉専門職の配置が多かったことから,軽度知的能力障害者の作業を,医学的知識を含め多角的・複合的に捉える作業療法士の視点は,有用であると考えられた.そして軽度知的能力障害は幼児期から高齢期に至るまで,長い期間支援に関わる必要がある.今回の研究において,就労支援は目の前の課題だけではなく,将来的な目標に向かって段階的に取り組むような先を見通した支援が大切だと示唆された.そのため作業療法士は対象者の発達段階やライフステージを常に意識し,対象者に対して適切な目標を設定し,一般就労へ移行していく過程に寄り添う支援を行っていることが明らかになった.
【目的】軽度知的能力障害者の就労支援において,作業療法士がどのような取り組みをしているか,また取り組む際の視点や支援方法を明らかにすること.
【対象者】就労移行支援を実施する事業所等に現在勤務している,又は過去に勤務しており,就労支援の経験年数が10年以上,又は軽度知的能力障害者の支援経験事例数が25事例以上の作業療法士とした.対象者の募集方法は,東京都作業療法士会の就労支援委員会に所属する作業療法士及び共同研究者を通して,選定基準に合う作業療法士の紹介を受け依頼した.
【方法】2021年4~10月にWeb会議サービスの1つであるZoomを用いて,研究者が個別に半構造化インタビューを行った.分析は研究結果の実践的活用を重視する研究法である,修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ(M-GTA)に準拠した.分析テーマは「作業療法士が行う軽度知的能力障害者が一般就労へ移行していく支援プロセス」,分析焦点者は「軽度知的能力障害者への就労支援経験がある作業療法士」とした.本研究は筆頭著者の所属先の研究倫理委員会の承認を得て実施した.発表に際して開示すべきCOI関係にある企業等はない.
【結果】対象者は11名で,就労支援経験は平均で11.7±5.4年であった.M-GTAの分析から24個の概念〈〉と5個のサブカテゴリー≪≫,4個のカテゴリー【】が生成された.作業療法士における軽度知的能力障害者が一般就労へ移行していく支援プロセスとして,まず土台となるのは【幅広いアセスメント】をすることであった.アセスメントにより対象者を深く理解することで,作業療法士は対象者に対し【伴走者としての支援】を行いつつ【就労に向けた支援】を行っていた.これらの作業療法士が行う支援プロセスは,現在のことだけではなく〈子どもの頃からのアドバイス〉や〈先を見通した支援〉を含む【支援の連続性】のなかで行われていた.
【考察】作業療法士のアセスメントには,精神機能・身体機能・言語・社会性など幅広い視点が含まれていた.また,対象者の所属する施設では福祉専門職の配置が多かったことから,軽度知的能力障害者の作業を,医学的知識を含め多角的・複合的に捉える作業療法士の視点は,有用であると考えられた.そして軽度知的能力障害は幼児期から高齢期に至るまで,長い期間支援に関わる必要がある.今回の研究において,就労支援は目の前の課題だけではなく,将来的な目標に向かって段階的に取り組むような先を見通した支援が大切だと示唆された.そのため作業療法士は対象者の発達段階やライフステージを常に意識し,対象者に対して適切な目標を設定し,一般就労へ移行していく過程に寄り添う支援を行っていることが明らかになった.