第56回日本作業療法学会

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一般演題

地域

[ON-5] 一般演題:地域 5

Sat. Sep 17, 2022 12:30 PM - 1:40 PM 第3会場 (Annex2)

座長:中島そのみ(札幌医科大学)

[ON-5-6] 口述発表:地域 5当事業所における事例を通した就労支援の現状と今後の課題について

鎌田 亜希1小山 雅之1石田 理恵1 (1障害福祉サービス事業所 SOI STANCE)

【はじめに】昨今,障害福祉サービス事業の訓練給付サービスにおいて作業療法士の配置が評価され,就労支援分野での作業療法士(以下OT)の活躍が期待されている.今回,OT3名を主体とした自立訓練(生活訓練),就労継続支援B型(以下就B)の事業所を開設した.関係機関から意見を聴取した結果と事例をもとに現状と今後の課題について報告する.尚,今回の発表において各事業所,本症例の承諾を得ている.
【事業内容】定員:就B14名,自立訓練(生活訓練):12名,介護保険の共生型通所介護.配置職員:OT4名,看護師2名,健康運動指導士,介護福祉士,栄養士,社会福祉士各1名.
【関係機関からの意見】行政:精神疾患,身体障害を併発している方に対して家屋改修,身体,就労について相談しやすい.自立訓練(生活訓練)の対象範囲が広く様々な状況の方を相談しやすい.相談事業所:介護保険サービスでは支援し難い若年層の就労希望者に対して心身と就労のサポートを行なってもらえる.
【利用者疾患別割合】
当事業所:脳血管障害19%,統合失調症19%,鬱病14%,発達障害14%.他事業所A:脳血管障害3%,統合失調症5%,鬱病46%.他事業所B:脳血管障害6%,統合失調症37%.他事業所に比べ脳血管障害の紹介が多い.
【事例1】
右被殻出血,左片麻痺.BRS:Ⅲ-Ⅲ-Ⅳ.注意障害.FIM:108/126 点(運動項目80
,認知項目28).自立訓練開始時期:X年5月.左上下肢の機能維持,就労を意識し週5回通所可能となる体力をつけることを目標に通所開始.支援内容:左上下肢に対して機能訓練,注意課題,PC操作訓練を実施.通所開始時:週2回通所.半年経過時点:週4回通所可能.ハローワークへの情報収集,失業手当,障害年金取得の手続き,自動車運転再獲得に向けたサポート,履歴書,職務経歴書の記入など就職活動の支援を開始.1年経過時点:週5回利用が可能.ハローワークにて障害者雇用の求人票を検索し,履歴書の記入,障害者就業・生活支援センター,相談員,ケアマネと担当者会議を適時開催し連携を図る.1年半時点:BRS:Ⅳ-Ⅲ-Ⅳ〜Ⅴ.FIM:117/126 点.企業の集団面接会に参加.面接を行い障害者雇用枠として内定をもらう.現在は就労と自立訓練を併用しフォローを行なっている.
【事例2】低酸素脳症.麻痺,感覚障害なし.右同名半盲,失書.FIM:122/126 点(運動項目91,認知項目31).自立訓練開始時期:X年5月.就労に向けた生活リズムの改善とコミュニケーション能力の向上を目標に利用開始.通所開始時:週4回.書字困難,発話量が少ない.半年経過時:かな文字,PCでのローマ字打ち習得.1年経過時:主治医と関係機関にて担当者会議を行い,自転車での通所,自動車運転獲得に向けた支援を行う.1年半時点:自立訓練と就Bを併用し,コミュニケーション能力の獲得,就労場面を経験することを目的に当就Bへの実習が開始.今後,関係機関と連携し障害者雇用枠での見学,体験を進めていく.自動車運転は今後開始予定.
【今後の課題】
 障害福祉サービスにてOTが配置されていることで他の事業所には少ない脳血管障害の方の紹介を得ることが可能.就労支援においてOTの専門的な視点を活かしながら関係機関と連携を図ることで有期限である自立訓練においても就労へ繋げることができる.脳血管障害の方の中で就労が必要な若年の対象者は回復期退院時点で介護保険サービスに繋がる例は多いが,就労支援サービスに繋がることは少ない.今後は地域包括支援センター,回復期などの医療機関等へ当事業所のような就労支援事業についての認知度向上を図る必要があると考える.