[ON-6-1] 口述発表:地域 6COVID-19感染予防対策のための緊急事態宣言が地域在住高齢者の身体の状況,作業参加の状況に及ぼす影響
~前向きコホート研究~
【序論】COVID-19の感染予防対策として,本国では令和2年4月16日から令和2年5月25日まで全国に緊急事態宣言が発出され(厚生労働省,2020),多くの国民は日常生活が制限された.渡邉らは,運動サロンと体力測定に参加した地域在住高齢者328名に対しアンケート調査を実施し,緊急事態宣言下における高齢者は,個人的な活動の自粛,社会的な活動の休止,運動量の低下,先行研究と比較したロコモティブシンドローム有病率の上昇が認められたことを報告している(渡邉,2021).渡邉らの報告は,緊急事態宣言下の地域在住高齢者は活動の制限,休止により作業参加の状況が不良化していることを示唆している.しかし,緊急事態宣言が地域在住高齢者の作業参加の状況に及ぼす影響について明確なエビデンスがないのが現状である.
【目的】緊急事態宣言下における地域在住高齢者の作業参加の状況を前後比較することで,緊急事態宣言が地域在住高齢者の作業参加に及ぼす影響を明らかにすることである.
【方法】A市在住の65歳以上の高齢者に対し広報を実施した.測定は2回実施し,追跡調査は初回調査から6か月以上の間隔を空けて実施した.身体の状況の調査として,ロコモ25を実施した.ロコモ25は痛みや生活の困難さについての質問で構成される25問の質問紙である.高得点であるほど移動機能の低下が進行している状況であるとされ,身体の状況が不良である.作業参加の状況の調査として,自記式作業遂行指標(SOPI)を実施した.SOPIは作業遂行の状況を対象者自身が評定する9問の質問紙である.高得点であるほど作業遂行の状況が良好である.
緊急事態宣言が発出される前に2回の調査を実施した者をコロナ前測定群,緊急事態宣言発出前に初回調査,発出後に追跡調査を実施した者をコロナ期測定群とした.各群でのロコモ25,SOPIの前後比較をウィルコクソンの符号順位検定を用いて統計解析した.また,平均値差に基づく効果量を算出した.統計解析にはIBM SPSS Statistics Version24を用い,統計学的有意水準を5%とした.本研究はB大学倫理委員会(承認番号:19037)にて承認を受け,対象者に口頭と文書にて説明をし,同意を得て測定を実施した.
【結果】25名(平均年齢72.9歳,コロナ前測定群11名,コロナ期測定群14名)が対象者となった.コロナ前測定群において有意差を示した項目はなかった.コロナ期測定群(初回,追跡,効果量)のSOPI統制(13.2,10.9,0.99),SOPIバランス(13.2,10.8,1.08),SOPI満足(12.9,10.5,0.88),SOPI余暇活動(13.2,10.2,1.20),SOPI生産活動(12.7,9.7,0.95),SOPI総得点(39.4,32.2,1.03)において,追跡調査は初回調査に比べ有意に低い値を示した(p<0.05).
【考察】緊急事態宣言下におけるわが国では,新しい生活様式が推奨された.国民は自己決定をする機会が減少し,コロナ期測定群のSOPI統制,SOPIバランス,SOPI満足の得点が有意に低下したと考えられる.また,感染予防のためオンラインや少人数での活動が推奨され,余暇活動や生産活動の様式を変更することを余儀なくされた.活動様式の変更によりコロナ期測定群のSOPI余暇活動,SOPI生産活動の得点が有意に低下したと考えられる.作業の専門家である作業療法士は,緊急事態宣言下における地域在住高齢者に対し,専門的な介入を実施することで対象者の健康と幸福に資する必要がある.
【目的】緊急事態宣言下における地域在住高齢者の作業参加の状況を前後比較することで,緊急事態宣言が地域在住高齢者の作業参加に及ぼす影響を明らかにすることである.
【方法】A市在住の65歳以上の高齢者に対し広報を実施した.測定は2回実施し,追跡調査は初回調査から6か月以上の間隔を空けて実施した.身体の状況の調査として,ロコモ25を実施した.ロコモ25は痛みや生活の困難さについての質問で構成される25問の質問紙である.高得点であるほど移動機能の低下が進行している状況であるとされ,身体の状況が不良である.作業参加の状況の調査として,自記式作業遂行指標(SOPI)を実施した.SOPIは作業遂行の状況を対象者自身が評定する9問の質問紙である.高得点であるほど作業遂行の状況が良好である.
緊急事態宣言が発出される前に2回の調査を実施した者をコロナ前測定群,緊急事態宣言発出前に初回調査,発出後に追跡調査を実施した者をコロナ期測定群とした.各群でのロコモ25,SOPIの前後比較をウィルコクソンの符号順位検定を用いて統計解析した.また,平均値差に基づく効果量を算出した.統計解析にはIBM SPSS Statistics Version24を用い,統計学的有意水準を5%とした.本研究はB大学倫理委員会(承認番号:19037)にて承認を受け,対象者に口頭と文書にて説明をし,同意を得て測定を実施した.
【結果】25名(平均年齢72.9歳,コロナ前測定群11名,コロナ期測定群14名)が対象者となった.コロナ前測定群において有意差を示した項目はなかった.コロナ期測定群(初回,追跡,効果量)のSOPI統制(13.2,10.9,0.99),SOPIバランス(13.2,10.8,1.08),SOPI満足(12.9,10.5,0.88),SOPI余暇活動(13.2,10.2,1.20),SOPI生産活動(12.7,9.7,0.95),SOPI総得点(39.4,32.2,1.03)において,追跡調査は初回調査に比べ有意に低い値を示した(p<0.05).
【考察】緊急事態宣言下におけるわが国では,新しい生活様式が推奨された.国民は自己決定をする機会が減少し,コロナ期測定群のSOPI統制,SOPIバランス,SOPI満足の得点が有意に低下したと考えられる.また,感染予防のためオンラインや少人数での活動が推奨され,余暇活動や生産活動の様式を変更することを余儀なくされた.活動様式の変更によりコロナ期測定群のSOPI余暇活動,SOPI生産活動の得点が有意に低下したと考えられる.作業の専門家である作業療法士は,緊急事態宣言下における地域在住高齢者に対し,専門的な介入を実施することで対象者の健康と幸福に資する必要がある.