[ON-6-5] 口述発表:地域 6COVID-19 影響下に園芸活動を行った地域在住高齢者のロコモティブシンドロームと抑うつの調査
【目的】 COVID-19パンデミック第1波により,2020年4月7日から5月21日まで大阪府を含む7都府県に「緊急事態宣言」が発令された.外出自粛期間中,在宅で行える楽しみとして,家庭菜園やガーデニングの需要が高まった.本研究の目的は,地域在住高齢者の外出自粛期間中に行っていた園芸習慣とロコモティブシンドローム,抑うつとの関係を明らかにすることである.
【方法】 対象者は大阪河﨑リハビリテーション大学と大阪府貝塚市が連携して行っている認知症予防事業に参加した地域在住中高年および高齢者197名である.COVID-19パンデミック前の2019年と,パンデミック中の外出自粛期間による影響を受けた2020年の調査結果を比較した.調査にはロコモティブシンドローム調査票のロコモ25と老年期うつ病評価尺度(Geriatric Depression Scale15;以下GDS15)を使用した.ロコモ25の点数は0点(障害なし)~100点(最重症)で,16点以上でロコモティブシンドローム,32点以上で運動器不安定症と判定される.GDS15は5点以下が健常,6点以上は抑うつを示唆する.園芸習慣についてはアンケートを行った.
対象者は園芸習慣がある130名と園芸習慣が無い66名の2群に分け,2019年と2020年におけるロコモ25とGDS15の点数に差があるか否かを検証するために,Wilcoxonの符号付き順位検定(有意水準 p<0.05)を用い差の検定を行った.また差の大きさを確認するために効果量(r)を算出した.統計解析にはSPSS(ver.26)を使用した.本研究は,対象者の書面による同意を得て実施しており,筆頭著者所属機関の研究倫理委員会の承認を受けている(承認番号OKRU20-A013).
【結果】 2019年と2020年の比較の結果,園芸習慣がある群は,ロコモ25の点数は2019年平均値8.3±8.4 → 2020年平均値10.0±8.1(p=0.000,r=0.39)で有意に上昇したが,GDS15の点数は2019年平均値3.5±2.9 → 2020年平均値3.2±2.5(p=0.104,r=0.14)で有意差は認められなかった.一方で園芸習慣が無い群は,ロコモ25の点数は2019年平均値8.6±9.0 → 2020年平均値13.2±12.8(p=0.000,r=0.64),GDS15の点数は2019年平均値3.1±2.7 → 2020年平均値3.8±2.8(p=0.024,r=0.28)で共に有意に高くなった.
【考察】 本研究では,園芸習慣がある群と無い群の2群間についてロコモ25とGDS15の点数で比較した.2群間ともに2020年は2019年よりもロコモティブシンドロームの傾向は強くなったが,園芸習慣の無い群の効果量が高かった.抑うつについては園芸習慣の無い群で抑うつ傾向が強くなったことが認められた.
高齢者が重症化しやすいとされるCOVID-19感染への脅威から外出ができず,他者との交流を避けたことや,施設利用が不可となり運動量が減ったことがロコモ25の結果から示された.GDS15の結果は,先行研究が示す園芸活動やガーデニングの「抑うつや心配の軽減への効果」「精神的な幸福感」「意味のある生活を実感し,達成感を得る」「ストレスと不安の軽減の効果」を支持する結果となった.
外出が制限されていても自宅の庭や畑に出ることは可能であり,不変的な植物の成長は,眼に見えないウイルスや感染する恐怖に対し,安心して見守ることができ,時が来れば可憐に咲く花や若葉の新緑からは,植物の生命力を感じとることができる.先行き不安な生活の中でも,植物の成長を実感し,喜びを得られることで,意欲低下や抑うつ気分を良い思考へ転換できると考えられる.
【方法】 対象者は大阪河﨑リハビリテーション大学と大阪府貝塚市が連携して行っている認知症予防事業に参加した地域在住中高年および高齢者197名である.COVID-19パンデミック前の2019年と,パンデミック中の外出自粛期間による影響を受けた2020年の調査結果を比較した.調査にはロコモティブシンドローム調査票のロコモ25と老年期うつ病評価尺度(Geriatric Depression Scale15;以下GDS15)を使用した.ロコモ25の点数は0点(障害なし)~100点(最重症)で,16点以上でロコモティブシンドローム,32点以上で運動器不安定症と判定される.GDS15は5点以下が健常,6点以上は抑うつを示唆する.園芸習慣についてはアンケートを行った.
対象者は園芸習慣がある130名と園芸習慣が無い66名の2群に分け,2019年と2020年におけるロコモ25とGDS15の点数に差があるか否かを検証するために,Wilcoxonの符号付き順位検定(有意水準 p<0.05)を用い差の検定を行った.また差の大きさを確認するために効果量(r)を算出した.統計解析にはSPSS(ver.26)を使用した.本研究は,対象者の書面による同意を得て実施しており,筆頭著者所属機関の研究倫理委員会の承認を受けている(承認番号OKRU20-A013).
【結果】 2019年と2020年の比較の結果,園芸習慣がある群は,ロコモ25の点数は2019年平均値8.3±8.4 → 2020年平均値10.0±8.1(p=0.000,r=0.39)で有意に上昇したが,GDS15の点数は2019年平均値3.5±2.9 → 2020年平均値3.2±2.5(p=0.104,r=0.14)で有意差は認められなかった.一方で園芸習慣が無い群は,ロコモ25の点数は2019年平均値8.6±9.0 → 2020年平均値13.2±12.8(p=0.000,r=0.64),GDS15の点数は2019年平均値3.1±2.7 → 2020年平均値3.8±2.8(p=0.024,r=0.28)で共に有意に高くなった.
【考察】 本研究では,園芸習慣がある群と無い群の2群間についてロコモ25とGDS15の点数で比較した.2群間ともに2020年は2019年よりもロコモティブシンドロームの傾向は強くなったが,園芸習慣の無い群の効果量が高かった.抑うつについては園芸習慣の無い群で抑うつ傾向が強くなったことが認められた.
高齢者が重症化しやすいとされるCOVID-19感染への脅威から外出ができず,他者との交流を避けたことや,施設利用が不可となり運動量が減ったことがロコモ25の結果から示された.GDS15の結果は,先行研究が示す園芸活動やガーデニングの「抑うつや心配の軽減への効果」「精神的な幸福感」「意味のある生活を実感し,達成感を得る」「ストレスと不安の軽減の効果」を支持する結果となった.
外出が制限されていても自宅の庭や畑に出ることは可能であり,不変的な植物の成長は,眼に見えないウイルスや感染する恐怖に対し,安心して見守ることができ,時が来れば可憐に咲く花や若葉の新緑からは,植物の生命力を感じとることができる.先行き不安な生活の中でも,植物の成長を実感し,喜びを得られることで,意欲低下や抑うつ気分を良い思考へ転換できると考えられる.