第56回日本作業療法学会

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一般演題

地域

[ON-7] 一般演題:地域 7

Sat. Sep 17, 2022 3:10 PM - 4:20 PM 第3会場 (Annex2)

座長:宮寺 亮輔(群馬医療福祉大学)

[ON-7-2] 口述発表:地域 72020年と2021年における地域在住高齢者の活動・参加の実施状況と,健康関連QOL・フレイル度・属性が及ぼす影響

谷利 美希1上村 純一2濱田 知美3堀 文子4 (1中部大学生命健康科学部作業療法学科,2名古屋大学大学院医学系研究科総合保健学専攻,3中部大学経営情報学部,4中部大学生命健康科学部保健看護学科)

【はじめに】昨今,新型感染症流行により,地域在住高齢者は外出や対人交流といった作業活動を自粛せざるを得ない環境となり,心身の健康への悪影響が報告されている(Parlapani E et al.,2021).今後の地域作業療法実践のため,これらの影響を経時的に観察し,必要な支援につなげる必要があるが,活動参加に焦点を当てた先行研究は限られている.本研究の目的は,1)2020年と2021年の地域在住高齢者の活動参加の実施状況,健康関連QOL,フレイル度の変化を把握すること,2)活動参加に対する健康関連QOL・フレイル度・属性の影響を明らかにすることした.
【方法】A地区老人会会員である地域在住高齢者を対象とし,2020年9月と2021年10月の2時点で自記式質問紙調査を実施した.調査内容は,属性(年齢・性別・同居者・介護保険状況),活動実施数(Activity Card Sort-日本版:ACS-JPN),フレイル度(CHS基準),健康関連QOL(SF-8;身体的側面:PCS,精神的側面:MCS)とした.活動実施数はACS-JPNの72項目の作業活動について,手段的日常生活活動(以下,IADL),レジャー身体低負荷(以下,低負荷),レジャー身体高負荷(以下,高負荷),社会文化的活動の4領域別に回答を得た.解析は,まず各属性が活動4領域に与える影響を確認した.次に,2時点における活動4領域の実施数・フレイル度・健康関連QOL(PCS・MCS)を対応のあるt検定もしくはWilcoxon符号付順位和検定にて比較した.最後に,活動4領域を従属変数,前解析により影響のあった属性(性別・同居者有無)・フレイル度・健康関連QOL(PCS・MCS)を予測変数,調査時期を被験者内変数とした一般化推定方程式により,活動領域別の影響因子を検討した.解析にはSPSS ver.25を使用し,有意水準は5%未満とした.質問紙には回答返却をもって研究同意とみなすことを明記した.本研究は所属機関の倫理審査委員会の承認を得ている(承認番号:20190097-4).
【結果】追跡可能であった43名(追跡率:53.1%)を解析対象とした.属性は,平均年齢77.9(SD= .80)歳,男性22名,女性21名,同居形態は独居7名,同居者有35名,不明1名,要介護認定者は2020年4名,2021年5名であった.4領域別の活動実施数は,女性の方がIADLを多く実施し(p= .003),独居者の方がIADL(p= .007)・レジャー高負荷(p= .042)・社会文化的活動(p= .002)を多く実施していた.2020年と2021年の比較では,4領域の活動実施数はIADLを除いた3領域が有意に上昇し(p< .001),フレイル度は悪化し(p= .010),PCSとMCSは差がなかった.また,IADLの実施数には同居者の有無(p= .024),MCS(p= .015),レジャー低負荷にはMCS(p= .001),レジャー高負荷には同居者の有無(p= .005),PCS(p= .001),MCS(p= .002),社会文化的活動には同居者の有無(p= .000),PCS(p= .002)が関与していた.
【考察】2021年の調査時は感染者数が減少傾向であったため,IADLを除く活動の実施数が上昇したと考えられたが,フレイル度は悪化しており,2020年の行動自粛の長期的影響が示唆された.また,本研究対象者の活動参加には,フレイル度は関与せず,同居者の有無や健康関連QOLの影響度が高いことが示された.ただし,活動参加とQOLは相互に関係し合うため(Berger S et al.,2018),因果については検討が必要である.本研究により,今後の感染症流行下および流行後の地域在住高齢者の活動参加の変化への対応を考える上で,主観的な健康観,環境を含めて多面的に評価する必要性が示唆された.感染症予防のための行動制限は未だ継続しており,具体的な支援の実施とともに,継続的な観察が推奨される.