[ON-7-5] 口述発表:地域 7高齢者における社会参加と生きがいの関連
JAGES2013-2016-2019縦断パネル研究
【はじめに】
近年,これまでの身体的健康だけでなく,「生きがい」なども重視したポジティヴヘルスなど新たな健康概念が注目(Huber et al., 2016)されており,生きがいは高齢者の幅広い健康や幸福を促進することが報告されている(Okuzono et al., 2022).本邦でも健康日本21(第二次)で目指す姿の一つとして「高齢者が生きがいをもてる社会」が掲げられている(厚生労働省,2012).こうした社会づくりへの介入可能性のある要因として,社会参加が挙げられる.作業療法士も地域社会に参画する専門職として,生きがいづくりに貢献することが望まれる.高齢者の社会参加と生きがいには正の関連があることが知られているものの,その多くは横断研究であり,社会参加と生きがいの時間的前後関係の検証は十分ではない.
【目的】
高齢者の社会参加と3年後の生きがいの関連を検証する.
【方法】
本研究は,日本老年学的評価研究(Japan Gerontological Evaluation Study;JAGES)の2013年,2016年,2019年のデータを用いた縦断研究である.対象は3時点の自記式調査に回答した全国21市町65歳以上の高齢者819人(平均年齢71.9歳)である.目的変数は2019年の生きがいなし,説明変数は2016年の社会参加とし,8種類の地域組織への年数回以上の参加をLevasseurら(2010)の定義に基づき,自己興味・課題指向型(スポーツ,趣味,老人クラブ,学習・教養サークル,介護予防・健康づくりの活動のいずれか),他者支援・社会貢献型(ボランティア,町内会,特技伝達のいずれか)の2つに分類した.逆の因果の影響を抑制するため,生きがい(2019年)と社会参加(2016年)の両時点より前の2013年調査の生きがいをはじめ,社会参加(自己興味・課題指向型,他者支援・社会貢献型),年齢,性,婚姻状況,等価所得,同居家族,教育歴,治療中疾患,居住年数,可住地人口密度,日常生活動作,就労,うつ状態を調整変数とした(VanderWeele etal., 2016).統計学的分析では,ポアソン回帰分析(強制投入法,有意水準5%)を用いてIRR(incidence rate ratio),95%信頼区間(confidence interval;CI),p値を算出した.各変数の欠損値は,多重代入法で補完した.統計ソフトはStata 17/ICを用いた.本研究は関係機関の倫理審査委員会の承認を得て実施し,対象者には書面で説明し,同意を得た.
【結果】
2019年に生きがいなしと回答した者は247人(30.2%),2016年の自己興味・課題指向型の社会参加者は573人(70.0%),他者支援・社会貢献型の社会参加者は483人(59.0%)であった.それぞれの社会参加なしを参照群とした生きがいなしのIRRは,自己興味・課題指向型1.04(95%CI:0.78-1.40,p=0.774),他者支援・社会貢献型0.76(95%CI:0.58-0.99,p=0.043)であった.
【考察】
他者支援・社会貢献型の社会参加をしている高齢者は,そうでない高齢者と比べて,3年後に生きがいの低下を防ぐことができる可能性が示された.本研究より,他者支援・社会貢献型の社会参加は高齢者が生きがいをもてる社会づくりの一助となることが示唆された.また,作業療法士が高齢者の生きがいを支えるにあたり他者支援・社会支援型の社会参加は重要な要素の一つとなりうると考えられる.
近年,これまでの身体的健康だけでなく,「生きがい」なども重視したポジティヴヘルスなど新たな健康概念が注目(Huber et al., 2016)されており,生きがいは高齢者の幅広い健康や幸福を促進することが報告されている(Okuzono et al., 2022).本邦でも健康日本21(第二次)で目指す姿の一つとして「高齢者が生きがいをもてる社会」が掲げられている(厚生労働省,2012).こうした社会づくりへの介入可能性のある要因として,社会参加が挙げられる.作業療法士も地域社会に参画する専門職として,生きがいづくりに貢献することが望まれる.高齢者の社会参加と生きがいには正の関連があることが知られているものの,その多くは横断研究であり,社会参加と生きがいの時間的前後関係の検証は十分ではない.
【目的】
高齢者の社会参加と3年後の生きがいの関連を検証する.
【方法】
本研究は,日本老年学的評価研究(Japan Gerontological Evaluation Study;JAGES)の2013年,2016年,2019年のデータを用いた縦断研究である.対象は3時点の自記式調査に回答した全国21市町65歳以上の高齢者819人(平均年齢71.9歳)である.目的変数は2019年の生きがいなし,説明変数は2016年の社会参加とし,8種類の地域組織への年数回以上の参加をLevasseurら(2010)の定義に基づき,自己興味・課題指向型(スポーツ,趣味,老人クラブ,学習・教養サークル,介護予防・健康づくりの活動のいずれか),他者支援・社会貢献型(ボランティア,町内会,特技伝達のいずれか)の2つに分類した.逆の因果の影響を抑制するため,生きがい(2019年)と社会参加(2016年)の両時点より前の2013年調査の生きがいをはじめ,社会参加(自己興味・課題指向型,他者支援・社会貢献型),年齢,性,婚姻状況,等価所得,同居家族,教育歴,治療中疾患,居住年数,可住地人口密度,日常生活動作,就労,うつ状態を調整変数とした(VanderWeele etal., 2016).統計学的分析では,ポアソン回帰分析(強制投入法,有意水準5%)を用いてIRR(incidence rate ratio),95%信頼区間(confidence interval;CI),p値を算出した.各変数の欠損値は,多重代入法で補完した.統計ソフトはStata 17/ICを用いた.本研究は関係機関の倫理審査委員会の承認を得て実施し,対象者には書面で説明し,同意を得た.
【結果】
2019年に生きがいなしと回答した者は247人(30.2%),2016年の自己興味・課題指向型の社会参加者は573人(70.0%),他者支援・社会貢献型の社会参加者は483人(59.0%)であった.それぞれの社会参加なしを参照群とした生きがいなしのIRRは,自己興味・課題指向型1.04(95%CI:0.78-1.40,p=0.774),他者支援・社会貢献型0.76(95%CI:0.58-0.99,p=0.043)であった.
【考察】
他者支援・社会貢献型の社会参加をしている高齢者は,そうでない高齢者と比べて,3年後に生きがいの低下を防ぐことができる可能性が示された.本研究より,他者支援・社会貢献型の社会参加は高齢者が生きがいをもてる社会づくりの一助となることが示唆された.また,作業療法士が高齢者の生きがいを支えるにあたり他者支援・社会支援型の社会参加は重要な要素の一つとなりうると考えられる.