第56回日本作業療法学会

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一般演題

基礎研究

[OP-1] 一般演題:基礎研究 1

Fri. Sep 16, 2022 12:10 PM - 1:10 PM 第5会場 (RoomB)

座長:中村 充雄(札幌医科大学)

[OP-1-3] 口述発表:基礎研究 1セラプラストを対象とした硬さや付着性の物性に関する予備的研究

吉野 智佳子1成田 悠哉2
(1前千葉県立保健医療大学健康科学部リハビリテーション学科作業療法学専攻,2千葉県立保健医療大学健康科学部リハビリテーション学科作業療法学専攻)

【はじめに】作業療法士(以下OT)の臨床場面ではセラプラストを使用し,握力や把持力の向上を目的とした作業療法プログラムが展開されている.訓練時に硬さの異なるセラプラストを選定する基準としては製品に表示されている強度の「ソフト」などの用語やOTが実際にセラプラストの使い心地を主観的に確認し,対象者に提供しているのが現状である.そこで今回押し込んだ際のセラピストの変位や粘性を測定する機会を得たのでここに報告する.
【目的】セラプラストを押し込む力が定量的に測定されることでOTの臨床場面において一定の基準をもって使用することが可能となることを目的とする.
【 方 法 】 対象製品は未使用の酒井医療 「 エコパテ 」 イエロ ー ( DMG-20852 ) ・ レッド(DMG-20853)・パープル(DMG-20856),「ライトパテ(エコパテに比べて25%軽量)」ブル ー ( DMG-10655 ) を使用した . 計測には本学栄養学科保有のテンシプレッサ ー(TENSIPRESSER,タケトモ電機製 TTP-50BX)My BoyⅡを用いた.Φ11.25mmの円柱型プランジャーを用いて,測定スピード2mm/sec,圧縮率は対象製品の高さの90%とし,得られたテクスチャー曲線から硬さ,付着性を求めた.各製品に対して2回ずつ測定し,平均値を算出した.
【結果】セラプラストの重さはイエロー(ソフト)84.37g,レッド(ミディアムソフト)86.47g,パープル(エクストラファーム)83.98g,ブルー(ファーム)68.13gであった.測定項目は,硬さ,付着性,サンプルの厚さであった.イエローでは,硬さ1回目410.2gw/cm2,2回目459.6 gw/cm2,平均434.9 gw/cm2,付着性1回目322.6 gw・cm/cm2,2回目456.7 gw・cm/cm2,平均389.7 gw・cm/cm2,サンプルの厚さ1回目22.6mm,2回目23.2 mm,平均22.9 mm,レッドでは,硬さ1回目547.5 gw/cm2,2回目550.5 gw/cm2,平均549.0 gw/cm2,付着性1回目355.5gw・cm/cm2,2回目530.5 gw・cm/cm2,平均443.0 gw・cm/cm2,サンプルの厚さ1回目24.2mm,2回目24.6 mm,平均24.4 mm,パープルでは,硬さ1回目2398.0 gw/cm2,2回目2158.0 gw/cm2,平均2278.0 gw/cm2,付着性1回目626.0 gw・cm/cm2,2回目533.4 gw・cm/cm2,平均579.7 gw・cm/cm2,サンプルの厚さ1回目22.5 mm,2回目22.8 mm,平均22.6mm,ブルーでは,硬さ1回目2188.0 gw/cm2,2回目1939.0 gw/cm2,平均2063.5 gw/cm2,付着性1回目479.5 gw・cm/cm2,2回目224.2 gw・cm/cm2,平均351.9 gw・cm/cm2,サンプルの厚さ1回目24.9 mm,2回目23.3 mm,平均22.6 mmであった.硬さは高い順にパープル,ブルー,レッド,イエローで一番硬いのはパープルであった.付着性は高い順にパープル,レッド,イエロー,ブルーで一番付着性が高いのはパープルであった.
【考察】対象としたセラプラストの中でパープルは硬さもあり,付着性も高かった.健常者が把持やつまみの時にかなりの負荷がかかることが想定された.今回の定量的分析により概ねメーカーが示す強度の表記の順位どおりとなった.今後は実際のヒトへの影響やOTが臨床場面で用いる際に定量的な値が参考となるかなど確認していきたい.
【利益相反】報告すべき利益相反はない.