[OP-1-2] 口述発表:基礎研究 1両手フィンガータッピングの速さに依存した指タップフォースとDLPFC脳血流量の変化について
【はじめに】
シンプルな動作であるフィンガータッピング(finger tapping: FT)は運動機能の有用な評価法であると同時に,近年は認知機能の評価への応用が期待されている.一方,両手で行うFTの指タップの動作の位相のずれ(複雑さ)や指タップのスピードが前頭前野背外側部(Dorsolateral prefrontal cortex:DLPFC)の脳血流動態にどのような変化を与えるのかはよく分かっていない.そこで,本研究では両手のFT遂行時の運動的特徴に加え,DLPFCの脳血流動態を検討することを目的とした.
【方法】
本研究は四條畷学園大学と京都大学の倫理委員会の承認を得て,十分な倫理的配慮のもとに行った.実験参加者は右利きの若年健常者14名(うち女性5名, 平均年齢20.6±0.9歳,平均±SD)であった.FTは両手の示指を交互に内外転しながらタッピングし, 以下の2種類の運動を行った : ①左右の示指が同じタイミングで内転と外転を行う運動(以下In-phase),②片方の示指が内転の時にもう片方が外転となる運動(以下Anti-phase).In-phaseとAnti-phase運動はともに3段階のスピード(1Hz,2Hz,4Hz)でFTを行った.指タップはメトロノームの音に合わせてタップさせた.その際にロードセル(LCC21N100, A&D)を叩かせ,指タップのフォースを計測した.同時に近赤外線分光法測定機器のNIRO-200NX(浜松ホトニクス)を用いて左右のDLPFCの酸素化ヘモグロビン(以下oxyHb)の濃度変化を測定した.NIRSのプローブは国際10-20法によるFp1とFp2の位置に貼付した.統計解析について,指タップのフォースはタップのフォースピーク値の平均を従属変数,左右の手,フェーズ,およびスピードを独立変数として,反復測定分散分析を行った.NIRSはoxy-Hbの増加量のピーク値を従属変数として,左右のDLPFCとフェーズとスピードを独立変数として,反復測定分散分析を行った.有意水準は5%未満とした.
【結果】
指タップのフォースはIn-phaseおよびAnti-phaseのどちらも1Hz>2Hz>4Hzの順に小さくなった.フェーズ(In-phase 内転vs Anti-phase 内転, In-phase 外転 vs Anti-phase 外転, In-phase内転/外転vs Anti-phase 外転/内転)には主効果が見られなかったが,In-phaseおよびAnti-phaseのそれぞれの左右差とスピードには主効果が認められた.左右の指タップはIn-phaseとAnti-phaseともに1Hzでは左手が先に,4Hzでは右手が先にタップしており,1Hz>2Hz>4Hzの順に右手が速くタップするように動作がシフトしていた.2Hzでは内転側の動きは右手が先に,外転側の動きでは左手が先にタップを行っていた.NIRSのoxy-Hbの増加量は左右のDLPFCともに1Hz >2Hz >4Hzの順で大きくなった.左右のDLPFC間およびフェーズ間の主効果は見られなかったが,スピードについては主効果が見られた.フォース,NIRSともに交互作用はなかった.
【考察】
両手のFTには空間・時間・力の3つの自由度が生じて制御が複雑になるため,両手の同期が生じる(Kelso 1979,Turvey 1990).本研究ではスピードが増すにつれて,タップのフォースは小さくなり,先にタップする指が非利き手から利き手にシフトした.これは参加者が自由度を減少させ,時間のパラメーターのみに注意をシフトした可能性を示唆するものである.また, DLPFCの活動はタッピングのスピードが増加するにつれて上昇することが示唆された.今後,対象者の注意機能検査の結果をFTの運動パフォーマンスと比較し,追加の検討を行う予定である.
シンプルな動作であるフィンガータッピング(finger tapping: FT)は運動機能の有用な評価法であると同時に,近年は認知機能の評価への応用が期待されている.一方,両手で行うFTの指タップの動作の位相のずれ(複雑さ)や指タップのスピードが前頭前野背外側部(Dorsolateral prefrontal cortex:DLPFC)の脳血流動態にどのような変化を与えるのかはよく分かっていない.そこで,本研究では両手のFT遂行時の運動的特徴に加え,DLPFCの脳血流動態を検討することを目的とした.
【方法】
本研究は四條畷学園大学と京都大学の倫理委員会の承認を得て,十分な倫理的配慮のもとに行った.実験参加者は右利きの若年健常者14名(うち女性5名, 平均年齢20.6±0.9歳,平均±SD)であった.FTは両手の示指を交互に内外転しながらタッピングし, 以下の2種類の運動を行った : ①左右の示指が同じタイミングで内転と外転を行う運動(以下In-phase),②片方の示指が内転の時にもう片方が外転となる運動(以下Anti-phase).In-phaseとAnti-phase運動はともに3段階のスピード(1Hz,2Hz,4Hz)でFTを行った.指タップはメトロノームの音に合わせてタップさせた.その際にロードセル(LCC21N100, A&D)を叩かせ,指タップのフォースを計測した.同時に近赤外線分光法測定機器のNIRO-200NX(浜松ホトニクス)を用いて左右のDLPFCの酸素化ヘモグロビン(以下oxyHb)の濃度変化を測定した.NIRSのプローブは国際10-20法によるFp1とFp2の位置に貼付した.統計解析について,指タップのフォースはタップのフォースピーク値の平均を従属変数,左右の手,フェーズ,およびスピードを独立変数として,反復測定分散分析を行った.NIRSはoxy-Hbの増加量のピーク値を従属変数として,左右のDLPFCとフェーズとスピードを独立変数として,反復測定分散分析を行った.有意水準は5%未満とした.
【結果】
指タップのフォースはIn-phaseおよびAnti-phaseのどちらも1Hz>2Hz>4Hzの順に小さくなった.フェーズ(In-phase 内転vs Anti-phase 内転, In-phase 外転 vs Anti-phase 外転, In-phase内転/外転vs Anti-phase 外転/内転)には主効果が見られなかったが,In-phaseおよびAnti-phaseのそれぞれの左右差とスピードには主効果が認められた.左右の指タップはIn-phaseとAnti-phaseともに1Hzでは左手が先に,4Hzでは右手が先にタップしており,1Hz>2Hz>4Hzの順に右手が速くタップするように動作がシフトしていた.2Hzでは内転側の動きは右手が先に,外転側の動きでは左手が先にタップを行っていた.NIRSのoxy-Hbの増加量は左右のDLPFCともに1Hz >2Hz >4Hzの順で大きくなった.左右のDLPFC間およびフェーズ間の主効果は見られなかったが,スピードについては主効果が見られた.フォース,NIRSともに交互作用はなかった.
【考察】
両手のFTには空間・時間・力の3つの自由度が生じて制御が複雑になるため,両手の同期が生じる(Kelso 1979,Turvey 1990).本研究ではスピードが増すにつれて,タップのフォースは小さくなり,先にタップする指が非利き手から利き手にシフトした.これは参加者が自由度を減少させ,時間のパラメーターのみに注意をシフトした可能性を示唆するものである.また, DLPFCの活動はタッピングのスピードが増加するにつれて上昇することが示唆された.今後,対象者の注意機能検査の結果をFTの運動パフォーマンスと比較し,追加の検討を行う予定である.