[OP-2-2] 口述発表:基礎研究 2/内科疾患 1運動学習進行過程における前頭前野の賦活の変化
【はじめに】運動学習に伴う様々な領域で生じる脳活動の変化を生理学的データから捉えることは作業療法効果を生理学的側面から示すことに他ならないが,それらの検証は未だ不十分である.一方,運動学習は個体ごとで学習速度に違いがあり,運動学習の遅速で脳の変化も違うと仮説が立てられる.それ故,学習速度を一律のものと考えずに運動学習の遅速による脳の変化の違いを生理学的側面から検証することは,運動学習による脳活動の変化を生理学的データで検証するための基盤となる.そこで本研究の目的は近赤外分光(NIRS)を用いて運動学習進行時の前頭前野の賦活の変化及び運動学習の遅速の違いによる脳の変化を明らかにし,作業療法の効果を生理学的データから示す基礎的資料を提示することである.
【方法】対象者は健常者20名である.運動学習課題は系列反応時間課題を用い,600ms刺激提示される箇所と対応するボタンを押す課題とし,反応速度を記録した.脳機能計測にNIRS(日立製作所製OT-R41)を使用し,ターゲットタスクを運動学習課題,コントロールタスクを1-2-3-4と規則的な刺激提示に対して対応するボタンを押す課題とした.また,ターゲットタスクとコントロールタスクは各3回試行し,3回のターゲットタスクを加算平均処理し,ターゲットタスク20秒間における各関心領域のOxy-Hb濃度変化を算出した.また,プローブの配置は,国際10-20法でホルダーを装着し,関心領域を左右の眼窩前頭野,前頭極,背外側前頭前野,側頭極,上側頭回,中側頭回,下前頭回,補足運動野とした(Tsuzuki D, 2007).実験は運動学習前課題,5分間練習,運動学習後課題のプロトコルで実施した.統計解析は運動学習前後の反応速度の変化量を求め,中央値より変化量が大きい群を運動学習高度進行群(以下:高度進行群),小さい群を運動学習中等度進行群(以下:中等度進行群)の2群に分け一般化線形混合モデルによる二元配置分散分析を実施した.有意水準は5%とし,統計解析にはSPSS25を使用した.筆頭著者所属施設倫理委員会の承認を得ている.
【結果】反応速度は高度進行群では運動学習前553±25msから運動学習後477±41msへと減少し,中等度進行群では運動学習前542±16msから運動学習後522±25msへと減少した.各関心領域における賦活量は右背外側前頭前野,左前頭眼窩,左右の前頭極において,練習前後×群の交互作用は認めないが運動学習前後で有意な主効果を認め,両群とも同様に賦活量は減少した.
【考察】運動学習の早期では認知資源を多く必要とされるが後期に移行するにつれ減少する(Eversheim U, 2011).今回,運動学習により賦活が減少した脳領域は認知の中枢であると同時に注意機能の中枢でもある.賦活の減少は,より少ない神経細胞の活動で課題を遂行できるようになることを表すことから(Poldrack, R, 2000),運動学習に伴い背外側前頭前野,前頭眼窩,前頭極の活動の減少は,神経細胞の活動の効率化が生じた結果と類推される.このように,本結果は,背外側前頭前野,前頭眼窩や前頭極をモニタリングすることで,運動学習の効果を生理学的データで示すことができたと解釈される.一方,運動学習の遅速の違いによる脳の変化は認められなかった.しかし,今回,実施した単一領域での賦活量という側面だけでは,脳機能を捉えるには不十分であり,ネットワーク解析の手法を用いるなど賦活量とは違う別の側面からも検討を重ねなければならないと考えられ,それが本研究の課題である.
【方法】対象者は健常者20名である.運動学習課題は系列反応時間課題を用い,600ms刺激提示される箇所と対応するボタンを押す課題とし,反応速度を記録した.脳機能計測にNIRS(日立製作所製OT-R41)を使用し,ターゲットタスクを運動学習課題,コントロールタスクを1-2-3-4と規則的な刺激提示に対して対応するボタンを押す課題とした.また,ターゲットタスクとコントロールタスクは各3回試行し,3回のターゲットタスクを加算平均処理し,ターゲットタスク20秒間における各関心領域のOxy-Hb濃度変化を算出した.また,プローブの配置は,国際10-20法でホルダーを装着し,関心領域を左右の眼窩前頭野,前頭極,背外側前頭前野,側頭極,上側頭回,中側頭回,下前頭回,補足運動野とした(Tsuzuki D, 2007).実験は運動学習前課題,5分間練習,運動学習後課題のプロトコルで実施した.統計解析は運動学習前後の反応速度の変化量を求め,中央値より変化量が大きい群を運動学習高度進行群(以下:高度進行群),小さい群を運動学習中等度進行群(以下:中等度進行群)の2群に分け一般化線形混合モデルによる二元配置分散分析を実施した.有意水準は5%とし,統計解析にはSPSS25を使用した.筆頭著者所属施設倫理委員会の承認を得ている.
【結果】反応速度は高度進行群では運動学習前553±25msから運動学習後477±41msへと減少し,中等度進行群では運動学習前542±16msから運動学習後522±25msへと減少した.各関心領域における賦活量は右背外側前頭前野,左前頭眼窩,左右の前頭極において,練習前後×群の交互作用は認めないが運動学習前後で有意な主効果を認め,両群とも同様に賦活量は減少した.
【考察】運動学習の早期では認知資源を多く必要とされるが後期に移行するにつれ減少する(Eversheim U, 2011).今回,運動学習により賦活が減少した脳領域は認知の中枢であると同時に注意機能の中枢でもある.賦活の減少は,より少ない神経細胞の活動で課題を遂行できるようになることを表すことから(Poldrack, R, 2000),運動学習に伴い背外側前頭前野,前頭眼窩,前頭極の活動の減少は,神経細胞の活動の効率化が生じた結果と類推される.このように,本結果は,背外側前頭前野,前頭眼窩や前頭極をモニタリングすることで,運動学習の効果を生理学的データで示すことができたと解釈される.一方,運動学習の遅速の違いによる脳の変化は認められなかった.しかし,今回,実施した単一領域での賦活量という側面だけでは,脳機能を捉えるには不十分であり,ネットワーク解析の手法を用いるなど賦活量とは違う別の側面からも検討を重ねなければならないと考えられ,それが本研究の課題である.