第56回日本作業療法学会

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一般演題

基礎研究

[OP-4] 一般演題:基礎研究 4

Sat. Sep 17, 2022 10:10 AM - 11:10 AM 第6会場 (RoomB-1)

座長:平川 裕一(弘前大学大学院)

[OP-4-5] 口述発表:基礎研究 4「脳卒中作業機能障害スクリーニングツール:Stroke Occupational Dysfunction Screening Tool:SODST」の試作版の作成

丸池 駿介1寺岡 睦2京極 真2 (1富山リハビリテーション病院こども支援センター,2吉備国際大学大学院保健科学研究科)

序論:脳卒中は,運動機能障害や高次脳機能障害など様々な症状が生活行為へ影響を及ぼす.生活行為が適切にやり遂げられない状態は,健康問題という観点から作業機能障害として捉えられる.作業機能障害は作業公正と健康問題の観点を有しており,患者の生活行為を,健康のための作業と,作業公正における作業参加への権利や機会などを捉える事が可能である.脳卒中を呈した者の生活行為を,作業機能障害の視点から評価することは有用であると考える.しかし脳卒中を呈した者の生活行為の評価を実施する際,意思疎通が困難となる場合がある.よって生活行為を行動観察や会話内容,周囲の情報などからスクリーニング評価が出来る尺度が有用であると考える.生活行為を作業機能障害の視点から捉える概念として,作業に根ざした実践2.0(Occupational-Based Practice:以下OBP2.0)がある.しかし現状,OBP2.0では,脳卒中を呈した者に対して作業機能障害の種類をスクリーニング評価できる尺度がない.
目的:本研究は,脳卒中を呈した者の作業機能障害の種類を評価するスクリーニングツール「脳卒中作業機能障害スクリーニングツール:Stroke Occupational Dysfunction Screening Tool:以下SODST」の試作版の作成が目的である.
対象と方法:本研究は,尺度開発の国際基準であるCOSMIN (Consensus-based Standards for selection of health Measurement INstruments) のガイドラインを参考に,本研究における作業機能障害の種類の検討,内容的妥当性の検討を実施した.作業機能障害の種類の定義の検討として,構成概念である作業機能障害の既存の4種類が,脳卒中発症後の生活行為において妥当であるかを先行文献を参考に検討した.さらに項目は,脳卒中発症後の生活やQOLへの影響や作業機能障害に関する文献などを参考に作成した.項目は,作業療法士2名の対象者と,項目の議論,修正,選定を行った.内容的妥当性はコンセンサスメソッドを採用した.作業療法士6名を対象として,Googleフォームを使用し,対象者に項目プールの各項目が,研究目的と構成概念に対して,「妥当である」,「妥当でない」のいずれかで判断してもらい,「妥当でない」とした場合は項目に対する意見を記載してもらった.項目の同意は75%以上の一致率を以て同意したとみなし,75%未満の項目は加筆修正を行い,再度検討を依頼した.なお,本研究は吉備国際大学の倫理審査委員会より承認を得ており,対象者へは研究概要を説明し,同意を得ている.
結果:作業機能障害の種類の定義の検討では,既存の4種類を用いる事とした.項目プールは計57項目作成した.その後,項目の議論,修正,選定を実施し,項目プールは作業機能障害の4種類に対して各10項目,計40項目とした.内容的妥当性の検討では,1回目では9項目が妥当性を得られた.2回目では20項目が妥当性を得られた.3回目では8項目が妥当性を得られた.項目プールの40項目中37項目が内容的妥当性を得られた.内容的妥当性を得られなかった3項目は,加筆,修正を行い試作版へ追加した.試作版SODSTは作業機能障害の4種類に対して各10項目,計40項目とした.
考察:本研究の目的は試作版SODSTを作成し,その特徴を検討する事である.内容的妥当性は,COSMINにおいて最も重要視されている.内容的妥当性を得られた37項目は,脳卒中を呈した者の作業機能障害を評価するスクリーニングツールとして構成されていると考えられる.また試作版SODSTの内容は既存の作業機能障害の尺度と比較すると,社会,所属集団など環境からの作業への影響,周囲の人との関係性の変化などを捉えた項目が特徴的である.