[OP-5-3] 口述発表:基礎研究 5食事動作中の把持形態の特徴
【はじめに】
把持動作は日常生活で頻繁に利用される手の運動機能の一つである.食事をする際,道具に応じた手の把持形態が必要であり,食事内容によって左右の手の使用方法が変わる.本邦では,利き手で箸を使って食事を摂るのが一般的であり,作業療法での食事動作介入には箸の使用を考慮した把持形態の獲得が必要である.これまでに,ADLで使用される把持形態についての報告はあり,食事や整容などのADLは多様であると報告されている.しかし,食事中に必要な把持形態に特化して詳細な分析をした報告はない.そこで,本研究では,食事動作中の把持形態を分類し,左右特性に注目して食事動作に必要な把持形態を明らかにすることを目的とした.
【方法】
右利き健常成人20名(男性6名,女性14名,平均年齢22.1±0.3歳)を対象とした.課題は食事動作とし,食事内容の指定は行わなかった.食事動作は被験者の正面から,食事動作開始から終了までを動画撮影した.食事動作中の把持形態は鎌倉による把持分類をもとに握力把持系5種類,中間把持系4種類,精密把持系4種類,母指不関与系1種類の計14種類に分類した.本研究では,把持の定義を「物体を片手でとらえて空中に保持,かつ手の接触部位が変わらない状態」とした.分析では,動画編集ソフトWondershare Filmora Ⅹを使用し,食事動作の動画から14種類の把持形態を抽出し,両手同時使用時,右手単独使用時,左手単独使用時に分けて把持形態を集計した.さらに,食事内容別にも把持形態を集計し,集計結果から把持形態の使用時間を秒単位で算出した.右手と左手の把持形態の使用時間の比較にはフリードマン検定,下位検定には多重比較法を用いた.把持形態の出現の有無には,1標本のt検定を行った.有意水準は5%未満とした.
本研究は,ヘルシンキ宣言に則り対象者に研究内容の十分な説明を行った後,同意を得て実施した.
【結果】
食事内容は,定食9名,麺2名,ファストフード2名,カレーライス2名,弁当2名,その他(パンとスープ,軽食,ナンカレー)3名であった.右手の使用時間は主に箸の使用に関する中間把持系が他の把持形態と比べて有意に長く,左手の使用時間は主に皿やグラスなどの食器の把持に関する精密把持系が他の把持形態と比べて有意に長かった.右手は両手同時使用時と単独使用時のどちらも1種類(中間把持系)のみであり,把持形態の個数は同数であったが,両手同時使用時の左手は4種類(握力把持系:1種類,精密把持系:3種類),左手単独使用時は1種類(精密把持系)であった.また,食事内容別では.食器を把持する必要がある定食,素手で把持するファストフード,食器を把持しないカレーライスや弁当では把持形態が異なっていた.
【考察】
食事動作では右手は箸使用に関する中間把持系,左手は食器の把持に関する精密把持系の使用時間が長く,食器を把持して箸で食べるという日本の食習慣が反映された結果と考えられた.一方で,右手の把持形態はほぼ同じであるにも関わらず,左手は様々な把持形態を使用していた.これは,食事内容によって,食器の数や使う食具が異なるため,多様な把持形態が必要になることを示しており,食事動作の介入では右手の中間把持系の獲得だけでなく,左手の精密把持系を中心とした多様な把持形態の獲得が必要であると考えられた.
把持動作は日常生活で頻繁に利用される手の運動機能の一つである.食事をする際,道具に応じた手の把持形態が必要であり,食事内容によって左右の手の使用方法が変わる.本邦では,利き手で箸を使って食事を摂るのが一般的であり,作業療法での食事動作介入には箸の使用を考慮した把持形態の獲得が必要である.これまでに,ADLで使用される把持形態についての報告はあり,食事や整容などのADLは多様であると報告されている.しかし,食事中に必要な把持形態に特化して詳細な分析をした報告はない.そこで,本研究では,食事動作中の把持形態を分類し,左右特性に注目して食事動作に必要な把持形態を明らかにすることを目的とした.
【方法】
右利き健常成人20名(男性6名,女性14名,平均年齢22.1±0.3歳)を対象とした.課題は食事動作とし,食事内容の指定は行わなかった.食事動作は被験者の正面から,食事動作開始から終了までを動画撮影した.食事動作中の把持形態は鎌倉による把持分類をもとに握力把持系5種類,中間把持系4種類,精密把持系4種類,母指不関与系1種類の計14種類に分類した.本研究では,把持の定義を「物体を片手でとらえて空中に保持,かつ手の接触部位が変わらない状態」とした.分析では,動画編集ソフトWondershare Filmora Ⅹを使用し,食事動作の動画から14種類の把持形態を抽出し,両手同時使用時,右手単独使用時,左手単独使用時に分けて把持形態を集計した.さらに,食事内容別にも把持形態を集計し,集計結果から把持形態の使用時間を秒単位で算出した.右手と左手の把持形態の使用時間の比較にはフリードマン検定,下位検定には多重比較法を用いた.把持形態の出現の有無には,1標本のt検定を行った.有意水準は5%未満とした.
本研究は,ヘルシンキ宣言に則り対象者に研究内容の十分な説明を行った後,同意を得て実施した.
【結果】
食事内容は,定食9名,麺2名,ファストフード2名,カレーライス2名,弁当2名,その他(パンとスープ,軽食,ナンカレー)3名であった.右手の使用時間は主に箸の使用に関する中間把持系が他の把持形態と比べて有意に長く,左手の使用時間は主に皿やグラスなどの食器の把持に関する精密把持系が他の把持形態と比べて有意に長かった.右手は両手同時使用時と単独使用時のどちらも1種類(中間把持系)のみであり,把持形態の個数は同数であったが,両手同時使用時の左手は4種類(握力把持系:1種類,精密把持系:3種類),左手単独使用時は1種類(精密把持系)であった.また,食事内容別では.食器を把持する必要がある定食,素手で把持するファストフード,食器を把持しないカレーライスや弁当では把持形態が異なっていた.
【考察】
食事動作では右手は箸使用に関する中間把持系,左手は食器の把持に関する精密把持系の使用時間が長く,食器を把持して箸で食べるという日本の食習慣が反映された結果と考えられた.一方で,右手の把持形態はほぼ同じであるにも関わらず,左手は様々な把持形態を使用していた.これは,食事内容によって,食器の数や使う食具が異なるため,多様な把持形態が必要になることを示しており,食事動作の介入では右手の中間把持系の獲得だけでなく,左手の精密把持系を中心とした多様な把持形態の獲得が必要であると考えられた.