第56回日本作業療法学会

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一般演題

基礎研究

[OP-5] 一般演題:基礎研究 5

Sat. Sep 17, 2022 11:20 AM - 12:20 PM 第6会場 (RoomB-1)

座長:上谷 英史(弘前大学大学院)

[OP-5-4] 口述発表:基礎研究 5課題難易度の変化に伴う二重課題干渉の相違

谷村 圭一郎1木村 憲仁2杉 正明1 (1時計台記念病院リハビリテーション部作業療法科,2時計台記念病院リハビリテーション科)

【はじめに】
 二重課題は,2つの課題に必要な課題関連情報を同時に処理する能力(同時処理能力)を評価・訓練するための手法である.二重課題成績は,単独課題成績と比較し,二重課題干渉により低下することが明らかにされている(山田ら,2008).二重課題干渉の強さは課題難易度(大角ら,2017),被験者の習熟度によって変化するため,二重課題訓練において課題自体の調整が必要となる.しかし,二重課題に用いられた二つの課題成績の観点から,課題難易度の変化に伴う二重課題干渉の影響は明らかにされていない.
【目的】
 本研究の目的は,運動課題成績及び認知課題成績の双方の観点から,課題難易度の変化に伴う二重課題干渉の相違を明らかにすることである.
【方法】
 対象は右利きの健常成人,27例(平均年齢27.3±4.4歳,男19名,女8名).主要評価項目は,運動課題成績(おはじきの移動個数)および認知課題の誤反応率((誤解答+無解答)/出題数)とした.運動課題は,運動N:運動課題なし,運動R:右手での箸操作課題,運動L:左手での箸操作課題とした.運動課題は,椅子座位で実施され,箸でおはじきを皿から皿へ素早く移動する課題であった.認知課題は,認知N:認知課題なし,認知A:Auditory Detection Task(ADT),認知P:Paced Auditory Serial Addition(PASAT)の1秒条件とした.本研究では,運動課題成績の比較において,2水準の運動課題(運動R,運動L)と3水準の認知課題の組み合わせによる2×3反復測定分散分析(ANOVA)が適応された.また,認知課題成績の比較において,3水準の運動課題と2水準の認知課題(認知A,認知P)の組み合わせによる3×2ANOVAが適応された.必要に応じて対応のあるt-testによりpost-hoc testが実施された.多重比較補正にはBonferoni補正が用いられ,全ての有意水準は5%とした.統計解析ソフトはIBM SPSS statistics 19.0(IBM-SPSS Inc., Chicago,IL, USA)が使用された.本研究は,当院の倫理審査委員会の承認の下実施された.
【結果】
 運動課題成績の2×3 ANOVAより,有意な交互作用効果が認められた(F(2, 52) = 11.660,p <0.001). Post-hoc testより,同じ難易度の認知課題間において,左手条件の運動課題成績は右手条件よりも有意に低下した(all p < 0.05).加えて,右手条件の運動課題成績において,認知P,認知A,認知Nの順に有意に低下した(all p < 0.05).一方,左手条件の運動課題成績において,有意な変化はなかった(all p > 0.05).認知課題成績の3×2 ANOVAより,有意な交互作用効果は認められなかったが(F(2, 52) = 2.979, p = 0.060),運動課題(F(2, 52) = 5.337, p = 0.008),認知課題(F(1, 26) = 16.827, p < 0.001)ともに有意な主効果が認められた.Post-hoc testより,認知課題成績はADT条件よりもPASAT条件下で,また単独課題条件よりも二重課題条件で有意に低下した(all p < 0.05).
【考察】
 二重課題干渉は選択された課題負荷の程度によって異なり,習慣的な運動能力にさえ影響を及ぼす(Guilleryら,2017).本研究において,運動課題成績の場合,習熟した運動課題成績は認知課題の難易度に応じた二重課題干渉を受けたが,未習熟な運動課題成績は二重課題干渉を受けなかった.一方,認知課題成績の場合,運動課題による二重課題干渉は認められたが,認知課題成績における二重課題干渉は課題難易度(運動,認知共に)の違いによる影響を受けない可能性が示唆された.したがって,二重課題訓練に用いる課題選択には,求める成果に合わせた課題難易度選択が必要であり,特に運動課題の負荷量を考慮する必要がある.