[OP-6-1] 口述発表:基礎研究 6/援助機器 3箸操作時の手内在筋・外在筋の筋活動と協調性―箸開閉操作の検討―
【はじめに】日本では食事で箸を使うことが一般的であり,障害手や麻痺手の症例に対する作業療法でも箸操作の再獲得を目標に介入することも多い.箸操作には箸の開閉操作や箸で食塊を持ち上げる動作があり,手内在筋および外在筋が関与していると報告されている.しかし,箸操作時の手内在筋・外在筋の筋活動の詳細および筋間協調性については未だ不明であり,効果的な箸操作介入のためにはこれらの情報が必要であると考えられる.本研究は,箸の開閉操作に注目し,箸開閉操作時の筋活動と手内在筋・外在筋の筋間協調性を明らかにすることを目的とした.
【方法】右利き健常成人9名を対象に箸の開閉操作を行い,箸の動き,手指関節運動および手内在筋・外在筋の筋活動を計測した.箸の開閉操作は箸の開閉速度を快適速度および60,120,180回/分の計4条件として実施した.課題中の箸の動きおよび手指関節運動は12台の赤外線カメラを設置した三次元動作解析装置で計測し,箸先端,母指・示指・中指背側に貼付した22個の反射マーカーの位置座標を記録した.記録した位置座標から,箸の動きとして箸先端の距離を,手指関節運動として母指の指節間(IP)関節と中手指節(MP)関節,示指と中指の遠位・近位指節間(DIP・PIP)関節およびMP関節の屈曲/伸展角度を算出した.課題中の筋活動は,手内在筋として第1,第2,第3虫様筋および背側骨間筋,短母指屈筋,短母指外転筋,手外在筋として浅指屈筋,総指伸筋,橈側手根屈筋,長橈側手根伸筋を被検筋に表面筋電図で計測した.各被検筋から得られた筋活動電位はフィルタ処理の後に二乗平均平方根を算出し,各筋の最大随意収縮時で標準化(%MVC)した.箸先端の動きから箸を開くおよび閉じる操作区間を8回分同定し,区間内の箸先端最大距離,手指関節の可動範囲,平均筋活動量を算出し,箸開閉操作(開く・閉じる)と箸開閉速度を要因とした二元配置分散分析を行った.さらに,筋間協調性を分析するため,全開閉速度条件と全筋の時間正規化した筋活動波形に対して非負値行列因子分解を行い,筋シナジーを抽出した.本研究は倫理審査委員会の承認を得て,対象者の同意を得て行った.
【結果】箸先端最大距離は平均4.7cmであり,手指関節可動範囲は母指IP,MP関節が平均4°,1°,示指のDIP,PIP,MP関節が平均11°,9°,2°,中指のDIP,PIP,MP関節が平均6°,10°,4°であった.両者とも箸開閉操作間,箸開閉速度間に有意差はなかった.筋活動量は,第1,2虫様筋で箸を開く操作時(平均26.7,26.1%MVC)が閉じる操作時(平均14.0,14.2%MVC)より有意に大きかったが,箸開閉速度間には有意差はなかった.他の筋は箸開閉操作間,箸開閉速度間ともに有意差はなかった.筋間協調性は,箸を開く操作では3つあり,全て手内在筋間の協調性であった.箸を閉じる操作では筋間協調性が5つあり,手内在筋間だけでなく手内在筋と外在筋間の協調性があった.
【まとめ】箸開閉操作時の箸の動く範囲,手指関節可動範囲には箸開閉操作間および箸開閉速度間で差がなく,筋活動量は虫様筋のみ開く操作が閉じる操作より大きかったことから,箸開閉操作時の筋活動は箸の開閉速度ではなく,箸の操作方向に依存すると考えられる.また,筋間協調性の結果を踏まえると,箸を開く操作は虫様筋を中心に手内在筋により,閉じる操作は手内在筋と外在筋により行われていると示唆される.以上より,箸の開閉操作の方向別に介入すべき筋を考慮する必要があると考えられる.
【方法】右利き健常成人9名を対象に箸の開閉操作を行い,箸の動き,手指関節運動および手内在筋・外在筋の筋活動を計測した.箸の開閉操作は箸の開閉速度を快適速度および60,120,180回/分の計4条件として実施した.課題中の箸の動きおよび手指関節運動は12台の赤外線カメラを設置した三次元動作解析装置で計測し,箸先端,母指・示指・中指背側に貼付した22個の反射マーカーの位置座標を記録した.記録した位置座標から,箸の動きとして箸先端の距離を,手指関節運動として母指の指節間(IP)関節と中手指節(MP)関節,示指と中指の遠位・近位指節間(DIP・PIP)関節およびMP関節の屈曲/伸展角度を算出した.課題中の筋活動は,手内在筋として第1,第2,第3虫様筋および背側骨間筋,短母指屈筋,短母指外転筋,手外在筋として浅指屈筋,総指伸筋,橈側手根屈筋,長橈側手根伸筋を被検筋に表面筋電図で計測した.各被検筋から得られた筋活動電位はフィルタ処理の後に二乗平均平方根を算出し,各筋の最大随意収縮時で標準化(%MVC)した.箸先端の動きから箸を開くおよび閉じる操作区間を8回分同定し,区間内の箸先端最大距離,手指関節の可動範囲,平均筋活動量を算出し,箸開閉操作(開く・閉じる)と箸開閉速度を要因とした二元配置分散分析を行った.さらに,筋間協調性を分析するため,全開閉速度条件と全筋の時間正規化した筋活動波形に対して非負値行列因子分解を行い,筋シナジーを抽出した.本研究は倫理審査委員会の承認を得て,対象者の同意を得て行った.
【結果】箸先端最大距離は平均4.7cmであり,手指関節可動範囲は母指IP,MP関節が平均4°,1°,示指のDIP,PIP,MP関節が平均11°,9°,2°,中指のDIP,PIP,MP関節が平均6°,10°,4°であった.両者とも箸開閉操作間,箸開閉速度間に有意差はなかった.筋活動量は,第1,2虫様筋で箸を開く操作時(平均26.7,26.1%MVC)が閉じる操作時(平均14.0,14.2%MVC)より有意に大きかったが,箸開閉速度間には有意差はなかった.他の筋は箸開閉操作間,箸開閉速度間ともに有意差はなかった.筋間協調性は,箸を開く操作では3つあり,全て手内在筋間の協調性であった.箸を閉じる操作では筋間協調性が5つあり,手内在筋間だけでなく手内在筋と外在筋間の協調性があった.
【まとめ】箸開閉操作時の箸の動く範囲,手指関節可動範囲には箸開閉操作間および箸開閉速度間で差がなく,筋活動量は虫様筋のみ開く操作が閉じる操作より大きかったことから,箸開閉操作時の筋活動は箸の開閉速度ではなく,箸の操作方向に依存すると考えられる.また,筋間協調性の結果を踏まえると,箸を開く操作は虫様筋を中心に手内在筋により,閉じる操作は手内在筋と外在筋により行われていると示唆される.以上より,箸の開閉操作の方向別に介入すべき筋を考慮する必要があると考えられる.