第56回日本作業療法学会

講演情報

一般演題

管理運営

[OQ-1] 一般演題:管理運営 1

2022年9月16日(金) 13:20 〜 14:20 第5会場 (RoomB)

座長:小川 真寛(神戸学院大学)

[OQ-1-3] 口述発表:管理運営 1多様性のあるオンライン学会から見えてきたこと

~持続可能な社会を創る作業療法士~

齋藤 嘉子1楠田 耕平2渡邉 聡3小嶋 美代子4 (1介護老人保健施設 茶山のさと,2関西福祉科学大学,3京都市修徳特別養護老人ホーム,4株式会社アワシャーレ)

【経緯と背景】2020年7月,COVID-19による強制的な変化は,現地開催を予定していた第41回近畿作業療法学会を危機的状況に陥れた.学会長である私と運営スタッフは,オンライン開催に漠とした不安を抱えながらも,マンネリズムから脱却するチャンスと捉えた.若手中心のメンバーは,2週間の集中議論を経て,ダイバーシティ(多様性)を主軸とした完全オンライン化に方向転換した.オンラインだからできること,参加してよかったと思えることを目的に検討し,発想を広げてチャレンジングな施策に踏み切った.学会の準備から結果までを振り返り,多様性のあるオンライン学会から見えてきたこと,特に作業療法士(以下OT)が果たす新たな役割について取組と結果を報告する.
【革新的取組】1.OT以外の参加費を抑えることや学生の団体登録を認めるなど,業種,専門分野,年齢,地域など,多様な人が参加できるよう工夫した.近畿以外(海外を含む)の各地から,14以上の職種・学生の参加があった.2.一般演題発表は,SNSなどで使われるハッシュタグで分類することで,専門分野を混在させる形式とした.新たな方法に親しみが湧くよう「タグり寄席」と名付けた.3.講演発表は,事前のオンデマンド配信に加え,当日は議論中心の形式にすることで双方向の参加型を目指した.全てのセッションにファシリテーターを配置し,チャットの意見交換を促すことで多様性のある場を提供した.参加者の要望に応え,終了後もオンデマンド配信期間を設けた.4.VRツール(Remo)を使用するなど,現地開催特有の雑談の場や交流をオンライン上に再現した.あたたかみを失くさないよう,表彰式では賞状を手渡す演出や拍手喝采動画を工夫した.また,デジタルに偏りがちな内容をグラフィックレコーディング(手描きイラスト)の導入で補った.5.広報活動にはインスタ・Facebook・Twitter・ブログなどのSNSを活用した.認知度向上だけでなく,参加者の反応を知る機会や参加者同士が繋がる場としても機能した.6.持続可能な学会を意識し,次世代を担う若手スタッフをリーダーに起用した.すべての会議をリモート接続としたことで,当日まで一度も対面することなく完遂した.7.企画段階から評価指標を定め,定量的および定性的な評価をもって成果を評価した.
【結果と考察】1.参加者層の拡大;オンライン開催により,遠方のかた,育児介護や健康上の理由などで参加が困難だった方など,それぞれの生活スタイルにあわせた参加機会を創出できたと同時に,参加者数の拡大ができた.2.越境による気づき;一般演題における「タグり寄席」(専門分野を越えた議論)は,想定していた以上に参加者の評判が良く,専門領域を越境することで多様性に触れる経験を提供できた.異分野の考え方や取り組みにもOTとの共通性を発見でき,連携できることがわかった.異業種・他職種の講演は,新たな知識習得,かつOTを鳥瞰するきっかけにもなった.居心地の良い場所を一歩踏み出すことは個人の多様性を高め,発想を得るチャンスだと気づいた.3.持続可能な社会を創るOTの可能性;異なる専門分野を混合させることは,これまでの当たり前を見直すことであり,持続可能な社会創りには不可欠だが,同時に知識不足と不安が伴う.しかし今回の実績から,生活すべてに関わるOTが越境に関わることは,社会課題へのアプローチ,環境の調整,社会的役割などの違いを円滑に繋ぐ支援となることがわかった.様々な分野で働くOTは,自らが越境し議論するだけでなく,多様性あるチームを活性化する因子となることで,持続可能な社会を創るための新たな役割を持つと確信した.