第56回日本作業療法学会

Presentation information

一般演題

管理運営

[OQ-3] 一般演題:管理運営 3/援助機器 2

Sat. Sep 17, 2022 1:40 PM - 2:40 PM 第6会場 (RoomB-1)

座長:林 亜遊(大阪医療福祉専門学校)

[OQ-3-2] 口述発表:管理運営 3/援助機器 2リハビリテーションスタッフのエンカレッジを目的としたクリニカルラダーの作成

松井 亜沙美1渡邉 誠2中井 琢哉1神保 武則1福田 倫也1 (1北里大学病院リハビリテーション部,2北里大学医療衛生学部)

【背景】
本邦における作業療法士を取り巻く環境は変化してきている.有資格者数は年々増加を示す中で,養成教育制度や医療提供体制の変化に対応していくことが各施設に求められるようになった.施設内における作業療法士の人材育成体制を整備することは喫緊の課題と言える.近年看護教育を中心に,クリニカルラダーを用いた能力開発が実施されており,当院看護部でもクリニカルラダーの開発,運用をしている.2018年には当院リハビリテーション部(以下,リハ部)内でクリニカルラダー作成ワーキンググループ(以下,WG)を立ち上げ,看護部の助言のもと,クリニカルラダーの作成を行なった.そこで今回,クリニカルラダーの開発過程とその内容を以下に報告する.
【方法】
当院リハ部は,医師4名,理学療法士37名,作業療法士20名,言語聴覚士13名が所属し,WGは9名(理学療法士6名,作業療法士3名)で構成された(2019年3月).当院のクリニカルラダーは人事考課としては使用せず,スタッフの成長を導くエンカレッジを目的とした.また,到達目標は「ジェネラリストとしての療法士」とした.まず,リハ部の全スタッフにて「理想となる療法士のジェネラリスト像」に求められるコンピテンシーについてグループワークを行い,キーワードを抽出した.これらのキーワードをWG内で集約し,当院看護部のクリニカルラダーを参考に,クリニカルラダーの領域とレベルを決定した(2019年7月).さらに各領域におけるレベルごとの到達目標をWG内で議論し,到達課題を作成した(2020年3月).
【結果】
作成したクリニカルラダーは,5つの領域(臨床実践,倫理,教育,管理,研究研鑽)で構成され,領域ごとに4つのレベルを設定した.臨床実践はリハビリテーションの臨床業務,倫理はリハビリテーション場面で遭遇する倫理的ジレンマ,教育は学生やスタッフに対する教育,管理は個人や所属チームのマネジメント,研究研鑽は自己学習や研究に関わる項目で構成された.ラダーレベル1はスタッフ個人の課題を助言のもと達成することを目標とし,助言のもとでの臨床業務,自身に焦点を当てた教育と管理,研究研鑽の導入を到達課題とした.レベル2では,課題を自立して達成することを目標とし,臨床業務の自立,学生や新人への教育,研究研鑽への参加を到達課題とした.レベル3では,所属するチームの課題に気づき解決することを目標とし,臨床場面においてチーム内のロールモデルとなること,チーム内の教育や管理業務,研究研鑽の実施を到達課題とした.レベル4では,リハ部全体の課題に気づき解決することを目標とし,臨床場面におけるリハ部のロールモデルとなること,リハ部全体に対する教育や管理業務,研究研鑽の推進を到達課題とした.
【考察】
クリニカルラダー作成に際しWG内で確認を繰り返したのは,スタッフのエンカレッジを目的とすることであった.そのため,到達課題の内容が決して評価項目とならないよう,自身の成果や強みを把握でき,成長を促進する内容とした.到達課題の構成は,各レベルにおける到達課題が途切れることなく,一連の流れがあることを意識して行なった.また,レベル設定において,「ジェネラリストとしての療法士」をレベル4,「新人」をレベル1とし,各レベルで必要となる能力を段階的に示すことで,領域ごとにおける自身の課題を確認しながら能力を習熟させていくシステムとした.現在クリニカルラダーの運用に際し,運用システムの作成に加え,指導者育成のための研修を行なっており,今後(2023年4月)実装に至る予定である.