第56回日本作業療法学会

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一般演題

教育

[OR-1] 一般演題:教育 1

Fri. Sep 16, 2022 12:10 PM - 1:10 PM 第6会場 (RoomB-1)

座長:髙島 千敬(広島都市学園大学

[OR-1-2] 口述発表:教育 1作業療法士養成校における義手教育の現状と課題

アンケート調査から

大庭 潤平1妹尾 勝利2柴田 八衣子3 (1神戸学院大学,2川崎医療福祉大学,3兵庫県立リハビリテーション中央病院)

【はじめに】
義手は,理学療法士作業療法士学校養成施設指定規則や理学療法士作業療法士国家試験出題基準に明記され,作業療法士養成課程では専門科目として教授されている.特に能動義手適合検査方法を教授する際,各教科書によって表記方法や基準値の違いがあり,さらに国家試験では適合検査に関する出題があった場合,教科書によりその記載内容が異なる点があるため,不適切問題として議論がなされることがある.このような現状は,臨床のみでなく作業療法士養成教育においてもあってはならないことであり早急な改善が必要である.そこで,本報告は作業療法士養成校に対して適合検査に関する調査を実施し,その教育の現状と課題について報告する.
【方法】
研究デザインは横断研究とし,Webによるアンケート調査とした.調査対象は全国すべての作業療法士養成校212課程の義肢装具学の科目責任者とした.調査期間は2021年3月17日から2021年3月31日とした.調査対象には研究依頼文を送付し,参加同意はアンケートの返信をもって同意とした.調査内容は,①属性②義手の講義科目(科目名,コマ数(時間数),指定教科書,科目担当職種等)③義手の実習科目(科目名,コマ数(時間数),指定教科書,科目担当職種等)④義手適合検査(教授法や備品等)とした.分析方法は量的データの基礎統計量を算出し単純集計による分析を行った.なお倫理審査委員会の承認を得て実施した.
【結果】
 回収率は87.7%(186校)であった.養成校分類は4年制大学48.4%,4年制専門職大学5.9%,3年制短期大学2.1%,4年制専門学校21.0%,3年制専門学校22.6%であった.義手の講義コマ数〈中央値(最小値,最大値)〉は5(1,11以上),内,適合検査コマ数は〈中央値(最小値, 最大値)〉は1(1,7)であった.講義担当者が作業療法士86.7%であった.義手実習科目を開講している養成校は46.2%で,義手の実習コマ数〈中央値(最小値, 最大値)〉は5(1,11以上),内,適合検査コマ数は〈中央値(最小値,最大値)〉は2(1,8)であった.実習担当者が作業療法士80.3%であった.適合検査教授法では模擬義手54.5%,動画25.8%と上位を占めた.指定教科書は,作業療法学全書作業療法技術学Ⅰ義肢装具(協同医書出版社),義肢装具のチェックポイント(医学書院),義肢装具と作業療法評価から実践まで(医歯薬出版株式会社)が73.7%を占めた.適合検査の教授に難しさを感じるが60.2%で,その内容は「義手(適合判定)の臨地経験がない(41.9%)」「教科書間の内容が異なっている(31.4%)」「仮義手や模擬義手がない(20.1%)」などがあった.適合検査の統一化は「とても望む・望む(78.0%)」であった. 
【考察】
 回答率88.6%と高く,多くの養成校から回答を得た.適合検査の教授の難しさを感じるとの答えが過半数を超える一方で,講義および実習で適合検査に充てるコマ数2コマ以下が80%超と多いことが分かった.その理由には,教員の経験不足,教科書の基準値の不統一,教授手法の不確立が挙げられると考える.また,適合検査の統一化の要望は多く,さらには教育効果の高い教授方法の確立が望まれる.今回の調査結果は,適合検査の改正に向けた一つの根拠となり得る情報と考える.今後は,本調査結果が作業療法教育ならびに臨床の一助となるように関係機関および関連団体と協力し,適合検査の改正に向けた取り組みを行っていきたい.