[OR-1-3] 口述発表:教育 1作業療法士養成校における義手教育の現状と課題
テキストマイニングによるニーズ分析
【はじめに】
作業療法士養成課程における義手に関する知識と技能は,作業療法教育ガイドライン(2019)に規定され,理学療法士作業療法士国家試験に出題されている.しかしながら,これまでの義手教育は,適合検査などに見られるテキスト間の相違や教員の臨地経験不足の中で行われてきた経緯がある.そこで,これらに対策を講じることは,義手教育の向上により作業療法がこれまで以上に切断者の支援において役割を果たすことができるようになると思われる.本報告の目的は,作業療法士養成校における義手教育の現状とニーズを可視化し,今後の課題と対策を明示することである.
【方法】
研究デザインは横断研究とし,Webによるアンケート調査とした.調査対象は,全国すべての作業療法士養成課程212課程の義肢装具学の科目責任者とした.調査期間は2021年3月17日から2021年3月31日とした.参加同意は,調査対象に研究依頼文を送付し,アンケートの返信をもって同意とした.調査は「義手に関する講義や実習の教授における意見や要望」について自記式質問紙法で行った.回答結果は,計量テキスト分析のプログラムであるKH Coder 3で分析した.分析は以下の手順で行った.1)抽出語リストの作成:テキストデータをKH Coder 3に読み込んだ後,前処理を行い作成した.2)多次元尺度構成法によるクラスター分類:出現回数3回以上の抽出語を用いて語の位置関係を確認し,クラスター分類を行った.3)共起ネットワーク分析:出現回数3回以上の抽出語の共起関係をJaccard係数0.3以上で行った.4)課題とニーズの抽出:2)と3)の結果を基に,語の類似性やKWICコンコーダンスによってテキストデータを振り返りながら最終的な課題とニーズを整理した.結果の分析及び課題とニーズの整理は,妥当性を担保するため3名の共同研究者で行った.本報告は倫理審査委員会で承認を得た.
【結果】
アンケート回収率は,87.7%(186課程)であった.1)抽出語リストの作成:総抽出語は271語で,出現回数が3回以上の抽出語は55語であった.頻出語は「動画(出現回数:79)」「義手(59)」「操作(36)」「欲しい(33)」「適合検査(28)」の順に多かった.2)多次元尺度構成法によるクラスター分類:対象は3回以上の抽出語(55語)としたが,「授業」は除外され54語が抽出された.全体として8つのクラスターに分類された.3)共起ネットワーク分析:再頻出語である「動画」は「義手」「操作」「欲しい」「適合検査」と共起関係を認めた.また,「基準」と「統一」,「ADL」と「使用」の共起関係を認めた.全体として11のサブグラフが抽出された.4)課題とニーズの抽出:抽出された主な課題は,①科目担当者の臨地経験不足への対策,②適合検査の方法や基準値のテキスト間の相違であった.主なニーズは,①適合検査・義手操作・作業療法場面などの動画教材の作成,②適合検査の方法や基準値の統一などであった.
【考察】
今回の結果は,これまでの義手教育において問題と感じていた内容を顕在化した.そして,抽出された課題への対策は,抽出されたニーズに応えることであることが示された.今後は,関係機関及び関連団体と協力し,適合検査の方法や基準値の刷新を行い,動画教材等の作成を行っていきたい.そして,義手教育の質の向上を図り,作業療法が切断者の支援において十分な役割を果たすことができるよう努めていきたい.
作業療法士養成課程における義手に関する知識と技能は,作業療法教育ガイドライン(2019)に規定され,理学療法士作業療法士国家試験に出題されている.しかしながら,これまでの義手教育は,適合検査などに見られるテキスト間の相違や教員の臨地経験不足の中で行われてきた経緯がある.そこで,これらに対策を講じることは,義手教育の向上により作業療法がこれまで以上に切断者の支援において役割を果たすことができるようになると思われる.本報告の目的は,作業療法士養成校における義手教育の現状とニーズを可視化し,今後の課題と対策を明示することである.
【方法】
研究デザインは横断研究とし,Webによるアンケート調査とした.調査対象は,全国すべての作業療法士養成課程212課程の義肢装具学の科目責任者とした.調査期間は2021年3月17日から2021年3月31日とした.参加同意は,調査対象に研究依頼文を送付し,アンケートの返信をもって同意とした.調査は「義手に関する講義や実習の教授における意見や要望」について自記式質問紙法で行った.回答結果は,計量テキスト分析のプログラムであるKH Coder 3で分析した.分析は以下の手順で行った.1)抽出語リストの作成:テキストデータをKH Coder 3に読み込んだ後,前処理を行い作成した.2)多次元尺度構成法によるクラスター分類:出現回数3回以上の抽出語を用いて語の位置関係を確認し,クラスター分類を行った.3)共起ネットワーク分析:出現回数3回以上の抽出語の共起関係をJaccard係数0.3以上で行った.4)課題とニーズの抽出:2)と3)の結果を基に,語の類似性やKWICコンコーダンスによってテキストデータを振り返りながら最終的な課題とニーズを整理した.結果の分析及び課題とニーズの整理は,妥当性を担保するため3名の共同研究者で行った.本報告は倫理審査委員会で承認を得た.
【結果】
アンケート回収率は,87.7%(186課程)であった.1)抽出語リストの作成:総抽出語は271語で,出現回数が3回以上の抽出語は55語であった.頻出語は「動画(出現回数:79)」「義手(59)」「操作(36)」「欲しい(33)」「適合検査(28)」の順に多かった.2)多次元尺度構成法によるクラスター分類:対象は3回以上の抽出語(55語)としたが,「授業」は除外され54語が抽出された.全体として8つのクラスターに分類された.3)共起ネットワーク分析:再頻出語である「動画」は「義手」「操作」「欲しい」「適合検査」と共起関係を認めた.また,「基準」と「統一」,「ADL」と「使用」の共起関係を認めた.全体として11のサブグラフが抽出された.4)課題とニーズの抽出:抽出された主な課題は,①科目担当者の臨地経験不足への対策,②適合検査の方法や基準値のテキスト間の相違であった.主なニーズは,①適合検査・義手操作・作業療法場面などの動画教材の作成,②適合検査の方法や基準値の統一などであった.
【考察】
今回の結果は,これまでの義手教育において問題と感じていた内容を顕在化した.そして,抽出された課題への対策は,抽出されたニーズに応えることであることが示された.今後は,関係機関及び関連団体と協力し,適合検査の方法や基準値の刷新を行い,動画教材等の作成を行っていきたい.そして,義手教育の質の向上を図り,作業療法が切断者の支援において十分な役割を果たすことができるよう努めていきたい.