第56回日本作業療法学会

講演情報

一般演題

教育

[OR-2] 一般演題:教育 2

2022年9月16日(金) 13:20 〜 14:20 第6会場 (RoomB-1)

座長:青山 克実(九州栄養福祉大学)

[OR-2-5] 口述発表:教育 2専門職大学におけるオンラインを用いたアクティブラーニングの効果

足立 一1辻 美和1日高 愛2 (1高知リハビリテーション専門職大学,2アイリブとちぎ)

【はじめに】
 作業療法教育でアクティブラーニングに関する報告は少ない. その要因として, 作業療法教育ではアクティブラーニングの方法と目的が設定しづらいと考える. 本研究は学生の内発的動機づけを目的に,オンラインを用いたアクティブラーニングである作業療法実習を実施し, その効果を明らかにした.
【方法】
 令和3年度に高知リハビリテーション専門職大学(本学)作業療法学専攻におけるオンラインを用いた授業を導入した(オンライン群), コントロール群として検査測定を教員が指導し, 学生間で演習する授業と群間比較を行った. オンライン群は, web会議システムzoomを使用し, グループホームへ入居する精神障害のある者(対象者)とつなぎ, 学生が小グループに分かれ, 作業療法評価を演習した. いずれの授業もなるべく学生の主体的行動を重視した. 対象は本学作業療法学専攻の学生計25名で, 効果判定には,学生の授業における内発的動機づけの程度を明らかにするために, 畑野の学習動機づけ尺度を測定した. また授業における動機づけに影響を与える因子を明らかにするために, 塚本のARCS評価を測定した. いずれの尺度も各授業終了直後にGoogleアンケートで同意の得られた学生のみ匿名で答えてもらった. 本研究は, 本学倫理研究審査の承認を得て実施した(R3-5).
【結果】
 オンライン群がコントロール群よりも内発的動機づけが有意に高かった. 特に「おもしろかったから頑張れた」「興味があったから頑張れた」「独自の楽しさがあったから頑張れた」「関心があったから頑張れた」という項目で有意に高かった. ARCS評価は, 原版通りの因子構造が再現されなかったため, 対象者のデータを用いて最尤法・プロマックス回転による因子分析を行い, 4因子構造を得た.「この内容がおもしろかったから」「この内容は好奇心があったから」「やってみて自信がついたから」などを「面白くて自信がつく授業」と名称をつけた.「身につけたい内容だった」「この内容は自分に関係があった」「この内容はやりがいがあった」などを「役に立ちやりがいのある授業」と名称をつけた.「学習を確実に進めることができる」「学習をして自分なりの工夫ができた」「(成績)評価に一貫性があった」などを「成長を実感でき公平な授業」と名称をつけた.「目標があいまいだった」「この内容は眠たくならなかった」を「明確で集中できる授業」と名称をつけた. うち「面白くて自信がつく授業」のみ, オンライン群がコントロール群よりも高かった. また学習動機づけ尺度との関連性は, オンライン群, コントロール群共に「面白くて自信のつく授業」からのみ正のパスが示された.
【考察】
 今回のオンラインを用いた作業療法評価の演習は, 内発的動機づけを高める授業であり, そのためには, やりがいや眠たくならない工夫よりも「面白くて自信のつく授業」であることが結果から分かる.本授業の大きな特徴は, オンラインで学生が対象者へ介入することである. 対象者の方が学生同士の演習よりも難易度は高いはずだが, 教員や施設の作業療法士が見守る中, 小グループで, オンライン上の介入であったことが安心感を与えたのではないかと考える. また介入の結果, 自然と得られた対象者からの肯定的な反応が大きな自信となり, すなわち, 内発的動機づけが向上したと考える.