第56回日本作業療法学会

講演情報

一般演題

教育

[OR-3] 一般演題:教育 3

2022年9月17日(土) 11:20 〜 12:20 第7会場 (RoomD)

座長:関 一彦(帝京平成大学)

[OR-3-4] 口述発表:教育 3作業療法士養成校における生活行為向上マネジメント(MTDLP)に関する学内教育および臨床実習の実施状況

小林 幸治1松本 嘉次郎2纐纈 功3鈴木 孝治4丹羽 敦5 (1目白大学保健医療学部作業療法学科,2四国医療専門学校作業療法学科,3医療法人社団和風会橋本病院リハビリテーション科,4藍野大学医療保健学部作業療法学科,5福岡国際医療福祉大学作業療法学科)

【はじめに】 生活行為向上マネジメント(MTDLP)は,対象者の生活行為向上に焦点を当てた作業療法マネジメントツールであり,標準的な作業療法の形を示している.日本作業療法士協会(以下,協会)では,養成教育におけるMTDLP教育の普及と充実を推進している.2015年全養成校教員を対象に,教員のためのMTDLP研修を開催し,以降,養成校には卒後までに講義1時限,演習2時限以上の教授を依頼している.2020年にMTDLP推進協力校認定制度規程を改定し,2021年度現在,推進協力強化校8校,協力校17校の計25校となった.厚生労働省指定臨床実習指導者講習会(協会版)プログラムではMTDLPの考え方を用いた診療参加型臨床実習を「作業療法参加型臨床実習」として整理し,その指導方法を説明し演習を行っており,臨床実習でMTDLPを活用する動きにつながっている.【目的】全国作業療法士養成校を対象としてMTDLPに関する学内教育および臨床実習の実施状況に関するWebアンケートを実施し,現状を把握することにより,今後の普及と質向上のための資料とする.【方法】Google FormでWebアンケートを作成,協会事務局より全養成校窓口担当者に向けて回答依頼を行った.質問項目は1)推進協力校に申請する予定,2)MTDLP授業時間数や工夫点,3)使用教材(複数回答可),4)実習への導入状況(理由含),実施領域およびMTDLP臨床実習の利点と課題(複数回答可),5)MTDLP実習推進の見込み,とした.結果開示は,協会誌記事,作業療法白書,作業療法の手引き,協会養成教育委員会主催研修会の基礎資料,学会発表等で使用することを文書で説明した.養成校名や記入者氏名等の個人資料は公開しないことを明記した.アンケート冒頭に,アンケート調査の主旨を理解しアンケートへの回答に同意するチェックを設けた.実施期間2021年11~12月(3週間).関連する利益相反(COI)は無い.【結果】全205校のうち122校より回答(59.5%).4年制大学45.9%,3年制昼間部専門学校26.2%,4年制昼間部専門学校21.3%等.1)推進協力校に今後申請する予定は,検討段階48.6%,申請予定11.2%等.2)授業数は講義が2時限26.2%,3時限18%,4時限15.6%等,演習が2~4時限が各16.4%,1時限9%等.3)使用教材は「作業療法マニュアル改訂第3版」59.8%,「事例で学ぶ生活行為向上マネジメント第2版」46.7%,基礎研修用資料41.8%,協会登録事例26.2%等.4)実習への導入は,特定数施設42.6%,今後取り入れる予定23%,1/3程度の実習施設13.1%等.実習が行われている領域(複数回答可)は,身体領域(回復期)77.5%,高齢期領域67.5%,身体領域(生活期)56.3%,精神科(回復期)31.3%,身体領域(急性期)25%等.MTDLP臨床実習の利点は,「活動と参加に焦点」69.7%,「臨床実習指導者の思考過程を学習」62.3%,「学生が考えをまとめやすい」53.3%,「包括的に対象者を捉える」51.6%等.課題は,「指導できる指導者がいない」88.5%,「全領域で実施可能とは考えない」58.2%,「養成校で十分教授できていない」32%等.5)実習推進の見込みは,できれば推進したい49.2%,ぜひ推進したい20.3%,どちらとも言えない30.5%.【考察】約60%の回答があり,概ね全体傾向を捉えられたと考える.講義・演習の時限数にはばらつきが多い.教材は学生向けの刊行物がなく,講義・演習教材の開発が求められる.臨床実習は主に一部の実習施設で行われており,身体領域(回復期・生活期)や高齢期領域が中心だが,精神科回復期でも行われるようになっている.様々な利点から臨床実習で推進したいと考える養成校は多いが,実習指導者や各領域,学内教育での課題等が明らかとなった.