第56回日本作業療法学会

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一般演題

教育

[OR-4] 一般演題:教育 4

Sat. Sep 17, 2022 12:30 PM - 1:30 PM 第7会場 (RoomD)

座長:山根 伸吾(藍野大学)

[OR-4-1] 口述発表:教育 4コロナ禍における大学病院での臨床実習実施の取りくみ

長島 泉12二田 未来2早坂 友成123 (1杏林大学保健学部作業療法学科,2杏林大学医学部付属病院精神神経科,3杏林大学医学部精神神経科学教室)

【はじめに】精神科作業療法(OT)の教育において,学生が精神疾患患者と接し,座学と体験の統合を図る機会を創出することは重要である.しかし,新型コロナウイルス感染拡大(コロナ禍)により,臨床実習機会は減少した.我々は,学外で実習受け入れ困難となった学生に対して,付属病院側の制限を遵守しつつ,臨床実習の役割を果たすための方策を検討した.
【目的】本報告は,コロナ禍における付属病院のある作業療法士養成大学の臨床実習の取り組みを紹介し,若干の考察を加えることを目的とする.なお,本報告では,学生および関係者の個人情報を扱わず,COI関係にある企業等はない.
【当学付属病院精神科作業療法室の概要】[スタッフ]常勤1名と保健学部教員3名(非常勤)[実施頻度,場所]病棟OT(火曜と金曜の午前・午後,精神神経科病棟),外来OT(週に1回,精神神経科外来),精神科リエゾンチーム(週に1回,対象者の入院病棟),カンファレンス(新入院,難治性うつ,診療プロセスそれぞれ週に1回,会議室)[通常時の実習生数]3-4名(当学学生)[実習生の制限]病棟内滞在は最大2名(うちプログラム参加は1名),カンファレンス参加は1名
【方法】対象は,2021年6月~7月(7週間)に行われた4年生の総合臨床実習(第II期)であった.実習生は当学学生8名で,全員他施設にて第I期を経験済みであった.実習内容は,場面と内容により,病院実習,学内実習,課題に分けた.実習生シフトを組み,3つの実習内容を組み合わせた.事例の評価や治療の計画立案,および課題としたセッション計画立案は,実習生全員によるグループワークを行ったのち,学内ミニカンファレンスで教員から指導を受けた.評価や治療の模倣実施,および課題の実施は,シフトにより一部の実習生に限られた.評価や治療の模倣実施により得られた結果は,実習生間で共有した.[実習生シフト]8名からランダムにペアを作成し,病棟プログラムごとに各ペアが病院実習を行い,全員が必ず週に1回は病院に赴いた.カンファレンス,精神科リエゾン,外来OTは,実習生全員が実習期間中に必ずどちらかには参加した.
【経過】1週目は,情報共有やグループワークでは戸惑いがあり,学内ミニカンファレンスにおいて,プログラムの治療構造や,事例情報の読み解きについて教員が指導した.2週目以降は,実習生主導でグループワークを進めた.学内実習学生からは質問や意見が多く出され,病院実習学生は,ホワイトボードで図を示しながら情報を伝達し,直接事例に関わった実感として情報の解釈を共有した.必要に応じて,大学図書館を利用し,知識を整理した.学生は,他者の意見を聞きながら統合と解釈を深め,常勤OTRと教員の指導により臨床推論を得ていった.評価や治療の模倣実施が一部の学生に限られたことについて,「自分も実施体験をしたかった」という意見が聞かれた.
【振り返りと考察】当該実習は,第3・4回の緊急事態宣言,およびまん延防止等重点措置下で行われた.許可された範囲内で,我々は作業療法臨床実習指針(2018)に則り,「就労時の業務に近い場や環境の中で人間性を育み,確かな作業療法の臨床推論と基本的な作業療法技能を体験」し,学内でのグループワークなどによって「自ら学ぶ力を育てる」ことを試みた.この試みが一定程度の成果を上げることができたのは,実習生全員が,先に臨床実習を経験し,積極的な実習態度を得ていたことが大きく影響したと考える.一方で,評価や治療の模倣実施が,一部の学生に限られたことは今後の課題であり,改善する必要がある.