[OR-4-5] 口述発表:教育 4新型コロナウイルス流行期に学生だった新人職員の実態調査
~新人職員と先輩職員のアンケート調査より~
【はじめに】新型コロナウイルスの流行により臨床実習の機会が減っている.そのような中で2021年度新人作業療法士(以下OT)に対し指導にあたる機会があった.例年に比べ不安が聞かれる場面が多々ある印象を受けたため,実際に不安の理由はどのようなものなのか,また他の指導にあたっている先輩OTも,どのように捉えているのか疑問に感じた.そこで今回双方に対しアンケートを実施し,その結果から新人OTの実態についてまとめたため報告する.【方法】本研究の内容を説明し同意を得た2021年度当院に就職した新人OT10名と,新人教育にあたった先輩OT42名に対し,11月中旬に,選択方式と自由記載にてアンケート調査を実施した.設問項目は,新人OT対象に1)臨床実習の実施状況2)臨床実習の減少による不安の有無3)入職してから約7ヶ月経過後の残存している不安の割合4)前設問の不安割合の理由5)臨床現場で困難と感じたこと,先輩OT対象に1)臨床実習の有無による違いを感じたか2)どのような場面で違いを感じたか3)6月以降に費やした指導項目4)今年度指導に関わり実感したこととした.分析は,選択方式の設問を選択肢ごとに回答を集計,自由記載の設問では,アフターコーディングでカテゴリー分けを実施し集計した.【結果】臨床実習の実施状況は10名中8名が2回,2名が1回,学内実習に変更しており,臨床実習機会の減少を経験している.また,臨床実習の減少による不安の有無は「強くあった」7名,「少しあった」3名であった.約7ヶ月経過後の残存している不安の割合は,1~3割が6名,4~5割が2名,8割が2名であった.不安の割合の理由は,残存理由として「治療・評価技術の不足」4/7件「実習機会の減少」「患者とのやりとり」「業務量」が1/7件ずつだった.軽減理由としては「先輩の指導」2/5件「研修」「同期の共感」「経験を経て」が1/5件ずつであった.困難と感じたことでは,カテゴリー別の件数で見ると,「認知領域」2/20件,「精神運動領域」10/20件,「情意領域」8/20件だった.先輩OTの結果は,5月時点で全体の約7割が例年との違いを感じていた.どのような場面に違いを感じたかについて,カテゴリーごとの割合では,「認知領域」20/75件「精神運動領域」44/75件,「情意領域」11/75件だった.6月以降に費やした指導項目は,「認知領域」11/63件「精神運動領域」32/63件,「情意領域」20/63件だった.今年度指導に関わり実感したことにおいて,個々の意見として「実習の減少による未熟さ」「社会性の乏しさ」「意欲的な姿勢が見られる」と複数名から聞かれ,少数意見として「時間はかかるが伸び代が大きい(8年目)」「数ヶ月遅れて例年通りのレベルに到達する(21年目)」という意見が聞かれた.【考察】2021年度の新人OTは,臨床実習機会が減少したことで入職当初は不安を抱えていた. しかしその不安も軽減傾向となっている.また「精神運動領域」と「情意領域」の双方に困難さを感じていたが,後の不安の残存理由は「精神運動領域」が多かったことから,「情意領域」の不安は臨床経験の中で軽減されていると考えられ,つまり不安の実態は「情意領域」の経験不足が一因であり,「先輩の指導」「研修」「同期の共感」で緩和することが示唆された. 先輩職員の視点では,5月時点の感じた違いと6月以降に費やした指導内容のカテゴリー割合で比較すると大きな差はなく,入職当初の印象と大きく変わらず指導にあたったと考えられる.