[PA-11-10] ポスター:脳血管疾患等 11意味のある作業を考慮した書字課題によるCI療法~麻痺側上肢の使用頻度が向上した一症例~
【はじめに】Constraint-induced movement therapy(CI療法)は脳卒中片麻痺患者における麻痺側上肢に対し,有効な介入の1つとされる.CI療法に含まれるTransfer package(TP)は実生活での麻痺側上肢を日常生活に反映させるための重要な要素であるが,実臨床では麻痺側上肢の使用頻度の増加に苦慮することを多く経験する.そこで,人間作業モデルの概念である,『意味のある作業』を考慮したTPを導入することで,麻痺側上肢の使用頻度が増加するのではないかと考えた.今回,脳卒中後に右片麻痺を呈した症例に対し,意味のある作業を書字課題としてCI療法による介入を行った.その結果,麻痺側上肢の使用頻度が増加したため報告する.本症例にはヘルシンキ宣言に基づき,口頭にて十分な説明を行い,書面による同意を得て介入した.
【症例紹介】50歳代の男性で,利き手は右であった.病前ADLは自立していた.職業は配管工の管理職で,管の接合作業や社員の工程表を手書きで作成することが役割であった.20xx年9月初旬,左アテローム血栓性脳梗塞を発症し,急性期病院にて加療後,発症25日で回復期病院へ転院となった.初回評価として,Fugl-meyer assessment (FMA)は29/66点で,手指はわずかな屈曲と伸展が可能であったが,対立つまみが困難であった.日常生活における麻痺側上肢の参加状況として,Motoractivity log(MAL)はAmount of use(AOU)0.71/5点,Quality of movement(QOM)0.42/5点であり,食事や洗体で左上肢を使用し,麻痺側上肢の使用はみられなかった.麻痺側上肢の使用について,本症例からは「何もできないね」と悲観的な発言が聞かれた.高次脳機能は,著明な障害は認めなかった.FIMは92/126点であった.リハビリテーションの目標は,カナダ作業遂行測定(COPM)を行い,麻痺側上肢を使用した復職とADL獲得を希望し,①書字(重要度/遂行度/満足度)10/4/1,②箸動作8/1/1,③洗体8/2/2とした.
【方法・経過】介入は,関節可動域訓練に加え,CI療法による課題志向型アプローチとTPを実施した.課題志向型アプローチは,物品移動とADL練習を行った.TPは,書字課題として日記の記帳を行った.書字課題は,手指の分離運動を獲得することを目的に,介入の度に書字動作の指導を行った.リハビリテーションの経過に伴い,書字や箸動作,洗体における麻痺側上肢の使用頻度が増加し,本症例からも「箸で食べてみたよ」と,意欲的に麻痺側上肢を使用する場面もみられた.
【結果】発症61日経過し,FMAは45/66点で手指の屈曲,伸展の出力向上と対立つまみが可能となった.MALはAOU3.00/5点,QOMは2.82/5点となり,箸動作や洗体などに麻痺側上肢を自ら使用するようになった.FIMは124/126点となった.COPMでは①書字(遂行度/満足度)7/8,②箸動作9/9,③洗体9/9と改善がみられた.また,本症例からは「使っていけば良くなるよ」と,肯定的な発言が聞かれた.
【考察】リハビリテーション介入における最小変化量(MCID)は,FMAは9~10点,MALのAOUは0.5点,QOMは1.1点,COPM(遂行度,満足度)は2点とされている.本症例における介入は,MCIDを超える変化を認めており,効果的な介入に至ったと考えた.また,麻痺側上肢の使用頻度が増加した要因として,書字が本症例にとって復職に不可欠な意味のある作業であり,日記の記帳を通じて書字の機会が増加し,遂行度も増加したことで,本症例の自信や満足感を見出し,他の作業に取り組む動機づけになったと考える.本症例における介入は,意味のある作業を考慮したTPにより,麻痺側上肢の使用頻度の増加に寄与したことが示唆された.
【症例紹介】50歳代の男性で,利き手は右であった.病前ADLは自立していた.職業は配管工の管理職で,管の接合作業や社員の工程表を手書きで作成することが役割であった.20xx年9月初旬,左アテローム血栓性脳梗塞を発症し,急性期病院にて加療後,発症25日で回復期病院へ転院となった.初回評価として,Fugl-meyer assessment (FMA)は29/66点で,手指はわずかな屈曲と伸展が可能であったが,対立つまみが困難であった.日常生活における麻痺側上肢の参加状況として,Motoractivity log(MAL)はAmount of use(AOU)0.71/5点,Quality of movement(QOM)0.42/5点であり,食事や洗体で左上肢を使用し,麻痺側上肢の使用はみられなかった.麻痺側上肢の使用について,本症例からは「何もできないね」と悲観的な発言が聞かれた.高次脳機能は,著明な障害は認めなかった.FIMは92/126点であった.リハビリテーションの目標は,カナダ作業遂行測定(COPM)を行い,麻痺側上肢を使用した復職とADL獲得を希望し,①書字(重要度/遂行度/満足度)10/4/1,②箸動作8/1/1,③洗体8/2/2とした.
【方法・経過】介入は,関節可動域訓練に加え,CI療法による課題志向型アプローチとTPを実施した.課題志向型アプローチは,物品移動とADL練習を行った.TPは,書字課題として日記の記帳を行った.書字課題は,手指の分離運動を獲得することを目的に,介入の度に書字動作の指導を行った.リハビリテーションの経過に伴い,書字や箸動作,洗体における麻痺側上肢の使用頻度が増加し,本症例からも「箸で食べてみたよ」と,意欲的に麻痺側上肢を使用する場面もみられた.
【結果】発症61日経過し,FMAは45/66点で手指の屈曲,伸展の出力向上と対立つまみが可能となった.MALはAOU3.00/5点,QOMは2.82/5点となり,箸動作や洗体などに麻痺側上肢を自ら使用するようになった.FIMは124/126点となった.COPMでは①書字(遂行度/満足度)7/8,②箸動作9/9,③洗体9/9と改善がみられた.また,本症例からは「使っていけば良くなるよ」と,肯定的な発言が聞かれた.
【考察】リハビリテーション介入における最小変化量(MCID)は,FMAは9~10点,MALのAOUは0.5点,QOMは1.1点,COPM(遂行度,満足度)は2点とされている.本症例における介入は,MCIDを超える変化を認めており,効果的な介入に至ったと考えた.また,麻痺側上肢の使用頻度が増加した要因として,書字が本症例にとって復職に不可欠な意味のある作業であり,日記の記帳を通じて書字の機会が増加し,遂行度も増加したことで,本症例の自信や満足感を見出し,他の作業に取り組む動機づけになったと考える.本症例における介入は,意味のある作業を考慮したTPにより,麻痺側上肢の使用頻度の増加に寄与したことが示唆された.