[PA-11-11] ポスター:脳血管疾患等 11脳卒中重度片麻痺患者の立位訓練における肩関節装具の導入基準の検討~重心動揺検査を用いた予備調査~
【はじめに】
肩関節装具療法は,脳卒中重度片麻痺患者の肩甲帯マルアライメントに対する介入手段の一つであり,その副次効果として立位姿勢や歩行に関するパラメータへ影響を与えることが報告されている(Hesse;2013).当院での臨床場面でも,立位および歩行訓練の効率化を図るために肩関節装具を導入する例はしばしば確認されるが,導入について統一された基準はない.
今回,脳卒中重度片麻痺症例2名に重心動揺検査を実施し,その結果から立位訓練の効率化を目的とした肩関節装具の導入基準について予備調査を行ったため報告する.
【方法】
対象は当院に入院された脳卒中重度片麻痺症例2名とした.症例A:50歳代男性,右脳出血,BRS上肢Ⅱ,手指Ⅱ,下肢Ⅱ,肩関節亜脱臼0.5横指.症例B:40歳代男性,左脳出血,BRS上肢Ⅱ,手指Ⅱ,下肢Ⅲ,肩関節亜脱臼1横指.肩関節装具は当院で所有している備品の中から対象の体格に合わせそ>れぞれ選定し,症例Aには肩関節装具ショルダーサポート,症例Bには上肢懸垂用肩関節装具オモニューレクサ (いずれもOttobock社)を使用した.
方法は肩関節装具未装着時と肩関節装具装着時にて,静的立位バランスと動的立位バランスに着目し重心動揺検査を実施した.検査機器はC-Mill VR+(Motek Medical社)を使用し,静的立位バランスの評価はAssessment Postural stabilityモードを用い,計測時間は30秒,計測条件は開脚位・開眼で実施し,機器より算出された単位時間軌跡長と左右への重心偏位の距離を比較した.動的立位バランスの評価はAssessment Limits of stabilityモードを用い,計測回数は前後左右4方向へ各2試技ずつ実施し,機器より算出されたCenter of pressure面積(以下,COP面積)を比較した.本報告は対象者に口答及び書面による説明を行い,書面による同意を得ている.また,本報告に利益相反関係は存在しない.
【結果】(肩関節装具未装着時→肩関節装具装着時)静的立位バランスは,単位時間軌跡長が両者とも減少した(症例A:3.87cm/s→3.16cm/s,症例B:4.67cm/s→4.22cm/s).しかし,左右への重心偏位の距離は症例Aのみ非麻痺側方向へ増加した(症例A:左3.0cm~右0.5cm→左1.0cm~右3.0cm,症例B:左1.5cm~右3.0cm→左1.5cm~右3.0cm).動的立位バランスのCOP面積は両者とも拡大した(症例A:4.07㎠→19.41㎠,症例B:36.44㎠→46.44㎠).
【考察】
本結果より,両症例において静的立位・動的立位バランス訓練ともに肩関節装具の導入が有効だと推察される.しかし,症例Bは左右への重心偏位の距離に変化がみられなかった点から,静的立位バランス訓練よりも動的立位バランス訓練において肩関節装具の導入効果が高い可能性がある.当院ではC-Millを用いたバランス評価を定期で行っている.その中に肩関節装具の導入に関する評価も組み込むことで,簡便かつ適切に訓練レベルに合わせた肩関節装具の導入判断が行えるのではないかと考える.今後,症例経験を増やし長期的な変化を確認していくことで,立位および歩行訓練の効率化を目的とした肩関節装具導入の判断基準の一つとして役立てることが出来ると期待する.
肩関節装具療法は,脳卒中重度片麻痺患者の肩甲帯マルアライメントに対する介入手段の一つであり,その副次効果として立位姿勢や歩行に関するパラメータへ影響を与えることが報告されている(Hesse;2013).当院での臨床場面でも,立位および歩行訓練の効率化を図るために肩関節装具を導入する例はしばしば確認されるが,導入について統一された基準はない.
今回,脳卒中重度片麻痺症例2名に重心動揺検査を実施し,その結果から立位訓練の効率化を目的とした肩関節装具の導入基準について予備調査を行ったため報告する.
【方法】
対象は当院に入院された脳卒中重度片麻痺症例2名とした.症例A:50歳代男性,右脳出血,BRS上肢Ⅱ,手指Ⅱ,下肢Ⅱ,肩関節亜脱臼0.5横指.症例B:40歳代男性,左脳出血,BRS上肢Ⅱ,手指Ⅱ,下肢Ⅲ,肩関節亜脱臼1横指.肩関節装具は当院で所有している備品の中から対象の体格に合わせそ>れぞれ選定し,症例Aには肩関節装具ショルダーサポート,症例Bには上肢懸垂用肩関節装具オモニューレクサ (いずれもOttobock社)を使用した.
方法は肩関節装具未装着時と肩関節装具装着時にて,静的立位バランスと動的立位バランスに着目し重心動揺検査を実施した.検査機器はC-Mill VR+(Motek Medical社)を使用し,静的立位バランスの評価はAssessment Postural stabilityモードを用い,計測時間は30秒,計測条件は開脚位・開眼で実施し,機器より算出された単位時間軌跡長と左右への重心偏位の距離を比較した.動的立位バランスの評価はAssessment Limits of stabilityモードを用い,計測回数は前後左右4方向へ各2試技ずつ実施し,機器より算出されたCenter of pressure面積(以下,COP面積)を比較した.本報告は対象者に口答及び書面による説明を行い,書面による同意を得ている.また,本報告に利益相反関係は存在しない.
【結果】(肩関節装具未装着時→肩関節装具装着時)静的立位バランスは,単位時間軌跡長が両者とも減少した(症例A:3.87cm/s→3.16cm/s,症例B:4.67cm/s→4.22cm/s).しかし,左右への重心偏位の距離は症例Aのみ非麻痺側方向へ増加した(症例A:左3.0cm~右0.5cm→左1.0cm~右3.0cm,症例B:左1.5cm~右3.0cm→左1.5cm~右3.0cm).動的立位バランスのCOP面積は両者とも拡大した(症例A:4.07㎠→19.41㎠,症例B:36.44㎠→46.44㎠).
【考察】
本結果より,両症例において静的立位・動的立位バランス訓練ともに肩関節装具の導入が有効だと推察される.しかし,症例Bは左右への重心偏位の距離に変化がみられなかった点から,静的立位バランス訓練よりも動的立位バランス訓練において肩関節装具の導入効果が高い可能性がある.当院ではC-Millを用いたバランス評価を定期で行っている.その中に肩関節装具の導入に関する評価も組み込むことで,簡便かつ適切に訓練レベルに合わせた肩関節装具の導入判断が行えるのではないかと考える.今後,症例経験を増やし長期的な変化を確認していくことで,立位および歩行訓練の効率化を目的とした肩関節装具導入の判断基準の一つとして役立てることが出来ると期待する.