第56回日本作業療法学会

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ポスター

脳血管疾患等

[PA-11] ポスター:脳血管疾患等 11

Sat. Sep 17, 2022 3:30 PM - 4:30 PM ポスター会場 (イベントホール)

[PA-11-3] ポスター:脳血管疾患等 11急性期脳卒中患者の日常生活活動改善と異なる精神心理面の経過

木本 茉佑1田邊 芽衣1青木 江里奈1 (1沼田脳神経外科循環器科病院リハビリテーション部門)

【はじめに】
 脳卒中後うつおよび意欲低下は脳卒中患者に起こりやすく,生活の質を低下させることが知られている(脳卒中治療ガイドライン2021).しかしながら,急性期の時期におけるうつ状態や意欲低下の経過は日常生活活動(Activities of Daily Living ; ADL)の改善に比べて十分に検討されていない.本研究の目的は,急性期脳卒中患者におけるADL,うつ状態,意欲低下の経過を調査することである.
【方法】
 後ろ向き前後比較研究を実施した.対象者は令和3年8月1日~12月31日に脳卒中治療のため入院し,作業療法が処方された患者とした.高次脳機能障害や意識障害により評価が実施困難な患者,病前自宅以外で生活していた患者は除外した.年齢,性別,診断名,家事,趣味,仕事の有無,在院日数を診療録から調査した.アウトカムを機能的自立度評価法(Functional Independence Measure:FIM,得点範囲:総得点18-126点,運動13-91点,認知5-35点であり,高値ほど自立していることを示す),自己評価式抑うつ性尺度(Self-rating Depression Scale:SDS,得点範囲:総得点20-80点,高値ほどうつ傾向強いことを示す),やる気スコア(Apathy Scaleの邦語版,得点範囲:0-42点であり,高値ほど意欲低下が強い傾向を示す)とし,入院時,退院時の2時点で調査した.統計解析はWilcoxonの符号付き順位検定を使用し,入院時と退院時のFIM,SDS,やる気スコアを比較した.有意水準は5%未満とした.本研究は研究実施施設の倫理委員会の承認を得て実施した.
【結果】
15名が対象となった(年齢の中央値72歳,男性9名,女性6名,脳梗塞7名,脳出血3名,くも膜下出血1名,その他4名).在院日数の中央値は23日であった.病前の家事,趣味,仕事を行っていた対象者は,それぞれ8名(53.3%),9名(60.0%),10名(66.7%)であった.前後比較の結果,FIM総得点,運動FIM,認知FIMに有意な差が認められ,それぞれの中央値は,60点から116点,34点から83点,32点から34点に向上した.一方,SDS及びやる気スコアは有意な差が認められず,それぞれの中央値の変化は32点から35点,11点から15点であった.
【考察】
対象者のFIMは向上したが,SDS,やる気スコアの改善は見られなかった.本研究の対象者は半数以上病前に家事,趣味,仕事を行っており,ADLが改善したとしても,脳卒中後の生活に対しての不安がうつ状態および意欲低下を助長させている可能性がある.脳卒中急性期におけるADLと精神心理面は異なる経過を示し,ADLだけではなく,精神心理面への作業療法介入が必要なことが示唆された.