第56回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

脳血管疾患等

[PA-11] ポスター:脳血管疾患等 11

2022年9月17日(土) 15:30 〜 16:30 ポスター会場 (イベントホール)

[PA-11-7] ポスター:脳血管疾患等 11回復期脳卒中患者のADL自己評価と機能予後との関連

金堀 友紀子1佐々木 清美1葛西 恭恵1田中 尚文2 (1メディカルコート八戸西病院リハビリテーション部,2帝京大学ちば総合医療センターリハビリテーション科)

【はじめに】回復期脳卒中患者が自らの日常生活動作(以下,ADL)の問題点を正しく認識していることはリハビリテーション(以下,リハ)の有効性に大いに関与すると思われるが,ADLの自己評価の高さが機能予後と関連するかについて検討した報告は見あたらない.また,ADLの自己評価は認知機能や情動によっても影響を受ける可能性があると考えられる.そこで,今回われわれは,回復期脳卒中患者のADL自己評価が機能予後に及ぼす影響を検討した.
【対象】2018年1月~ 2018年11月に当院回復期リハ病棟に入棟した50歳以上の脳卒中患者を対象とした.除外基準は発症前のADLが非自立,Mini-Mental State Examination (以下,MMSE)が10点未満,精神疾患,パーキンソン病,ADLに支障となる運動失調や失行症状の合併とした.
【方法】入棟時にMMSE,高齢者用うつ尺度短縮版-日本版(以下,GDS-S-J),アパシー評価スケール(以下,AES),Brunnstrom stage上肢・手指・下肢の合計スコア(以下,Br合計)を,入退棟時にFunctional Independence Measure(以下,FIM)やBarthel Index(以下, BI)を評価した.BIについては自己評価から担当OTによる他己評価を引いた値をBI差とした.本研究では,ADL自己評価により, BI差が15点以上を過大評価あり群,-10~10点を過大評価も過小評価もない群(以下,過大評価なし群),-15点以下を過小評価群とした.統計解析ではMann–Whitney検定またはχ二乗検定を用い,有意水準は5%とした.なお,本研究は当院倫理委員会にて承認を得て行った.
【結果】組入基準を満たした143名のうち,同意が得られ,GDSやAESにおいて有効な回答が得られた患者は78名であった.過大評価あり群は17名,過大評価なし群は59名, 過小評価あり群は2名であった.今回は,過小評価あり群を除いた76名(女性31名,年齢70±9歳)を解析対象とした.過大評価あり群の入棟時MMSE,入棟時FIM,入棟時FIM運動項目,入棟時FIM認知項目,FIM利得,FIM利得(運動項目),FIM効率,FIM効率(運動項目)は,過大評価なし群よりも有意に大きかった.次に,MMSEが24点以上と10点以上24点未満に分けてから,過大評価あり群と過大評価なし群で比較検討した.MMSE24点以上の群ではすべての項目において有意差を認めなかったが,10点以上24点未満の群においては,過大評価あり群の FIM効率(運動項目)は過大評価なし群よりも有意に大きかった.
【考察】今回の結果より,回復期リハ病棟入棟時に認知機能の低下した回復期脳卒中患者においてADL自己評価が高いことは ADLの向上に大きく関与することが示唆された.したがって,認知機能が低下した回復期脳卒中患者の機能予後予測にADL自己評価が有用である可能性が考えられた.