[PA-3-4] ポスター:脳血管疾患等 3脳卒中後の上肢麻痺と失語症を呈した患者にmodified CI療法を行い,麻痺手の使用頻度が向上した一例
【はじめに】Constraint-Induced Movement Therapy(CI療法)における行動戦略は対象者と療法士との意思決定が必要となることから,失語症患者への治療報告は少ない.本報告では脳卒中後に右片麻痺と失語症を呈した患者に対して,練習時間などを修正した当院独自のmodified ConstraintInduced Movement Therapy(mCI療法)を実施し,失語症状に合った工夫を行った.その結果,麻痺手の機能改善や生活上での使用頻度,主観的な動作の質が向上し,退院後も麻痺手を使用した生活が継続できていた.この経過を考察を交えて報告する.なお本報告において症例及び家族から書面にて同意を得ている.
【症例紹介】本症例は60歳代女性,修正右利きであり,左内頚動脈狭窄と散在性脳梗塞により右片麻痺と失語症を呈し,第21病日後に当院へ入院となった.入浴以外のADLが自立となり,第102病日後にmCI療法を開始した.mCI療法開始前の上肢機能はBRS上肢・手指ともにⅢ~Ⅳ,FMA上肢項目33点,STEF36点,ARAT15点であった.MALではAOUとQOMともに平均0.27点と,生活上での麻痺手の不使用が著明であったが問題意識は低かった.SLTAでは聴覚的理解や読解項目は短文レベルでの理解が可能であったが,発話項目や書字項目全般において検査の遂行が困難であった.簡単な常套句は表出できたが会話では音韻性錯語が多く,聞き手側の汲み取りが必要であった.
【方法】当院のmCI療法プロトコルとして,参加基準は麻痺手の随意運動が手関節随意伸展20度以上,母指を含む3本のIP及びMP関節が10度以上随意伸展可能であることなどを条件とした.練習時間は2時間の課題志向型訓練を中心とした自主練習時間に作業療法1時間を加えた1日3時間を,開始日から連続した14日間実施するものとした.行動戦略として,行動契約,動作目標の設定,日々の記録や問題解決を行った.目標の設定にはADOCのイラストを使用し,共通認識を持ちながら意思決定を進めた.また取り組みの中でNsやPT,STと動作目標の共有を行い,作業療法以外でも麻痺手を意識する時間を確保できるように多職種チームで連携をした.日々の記録では,文字表出が困難であった症例の理解度に合わせて三段階評定の記録シートを作成した.これによりセルフモニタリングを促し,麻痺手の使用について問題意識を持つことを視覚的に提示できるようにした.退院後の追跡調査においては,当院退院約3か月後に生活状況の聞き取りやMALの評価を行った.
【結果】mCI療法実施後の上肢機能はFMA37点,STEF63点,ARAT35点と各項目で改善がみられた.MALではAOU平均2.27点,QOM平均2.09点であり,項目の大部分で使用頻度,主観的な動作の質が向上した.実施前後で点数が向上したMALの項目は「タオルを使って顔や身体を拭く」,「フォークやスプーンを把持して食事をとる」などであった.mCI療法後には,麻痺手に関する問題解決を症例自身が考える様子もみられた.退院後の追跡調査では目標であった独居生活を継続できており,MALの評価も退院前より向上していた.
【考察】本報告では失語症を呈した症例であっても,mCI療法により上肢機能の改善と麻痺手の使用頻度や動作の質を向上させることができた.これは失語症状に合わせた工夫を行うことでセルフモニタリングが促され,麻痺手の使用について主体的に取り組めたことが一つの要因と考えられる.また「学習性不使用」(Taub,2002)からの脱却としては,対象者が望む作業の環境や実現の仕方を共有(北村,2019)することとされており,本症例では目標とする生活を多職種で共有して統一した取り組みができたことも,麻痺手の使用行動を変容させる一助になったと考える.
【症例紹介】本症例は60歳代女性,修正右利きであり,左内頚動脈狭窄と散在性脳梗塞により右片麻痺と失語症を呈し,第21病日後に当院へ入院となった.入浴以外のADLが自立となり,第102病日後にmCI療法を開始した.mCI療法開始前の上肢機能はBRS上肢・手指ともにⅢ~Ⅳ,FMA上肢項目33点,STEF36点,ARAT15点であった.MALではAOUとQOMともに平均0.27点と,生活上での麻痺手の不使用が著明であったが問題意識は低かった.SLTAでは聴覚的理解や読解項目は短文レベルでの理解が可能であったが,発話項目や書字項目全般において検査の遂行が困難であった.簡単な常套句は表出できたが会話では音韻性錯語が多く,聞き手側の汲み取りが必要であった.
【方法】当院のmCI療法プロトコルとして,参加基準は麻痺手の随意運動が手関節随意伸展20度以上,母指を含む3本のIP及びMP関節が10度以上随意伸展可能であることなどを条件とした.練習時間は2時間の課題志向型訓練を中心とした自主練習時間に作業療法1時間を加えた1日3時間を,開始日から連続した14日間実施するものとした.行動戦略として,行動契約,動作目標の設定,日々の記録や問題解決を行った.目標の設定にはADOCのイラストを使用し,共通認識を持ちながら意思決定を進めた.また取り組みの中でNsやPT,STと動作目標の共有を行い,作業療法以外でも麻痺手を意識する時間を確保できるように多職種チームで連携をした.日々の記録では,文字表出が困難であった症例の理解度に合わせて三段階評定の記録シートを作成した.これによりセルフモニタリングを促し,麻痺手の使用について問題意識を持つことを視覚的に提示できるようにした.退院後の追跡調査においては,当院退院約3か月後に生活状況の聞き取りやMALの評価を行った.
【結果】mCI療法実施後の上肢機能はFMA37点,STEF63点,ARAT35点と各項目で改善がみられた.MALではAOU平均2.27点,QOM平均2.09点であり,項目の大部分で使用頻度,主観的な動作の質が向上した.実施前後で点数が向上したMALの項目は「タオルを使って顔や身体を拭く」,「フォークやスプーンを把持して食事をとる」などであった.mCI療法後には,麻痺手に関する問題解決を症例自身が考える様子もみられた.退院後の追跡調査では目標であった独居生活を継続できており,MALの評価も退院前より向上していた.
【考察】本報告では失語症を呈した症例であっても,mCI療法により上肢機能の改善と麻痺手の使用頻度や動作の質を向上させることができた.これは失語症状に合わせた工夫を行うことでセルフモニタリングが促され,麻痺手の使用について主体的に取り組めたことが一つの要因と考えられる.また「学習性不使用」(Taub,2002)からの脱却としては,対象者が望む作業の環境や実現の仕方を共有(北村,2019)することとされており,本症例では目標とする生活を多職種で共有して統一した取り組みができたことも,麻痺手の使用行動を変容させる一助になったと考える.