[PA-6-3] ポスター:脳血管疾患等 6発症から1年を経て,使わなかった手を使う手に~再入院から外来での OT の関わりを通して~
【序論】近年,麻痺手の機能改善の阻害因子として,学習性不使用による影響をTaubは示しており1),生活内での麻痺手の使用が推奨されている.今回,生活で麻痺手が不使用となっていた脳出血後遺症を持つ症例を担当する機会を得た.再入院から外来リハビリテーション(以下リハ)を通して,目標を共有し介入を実施したことで,麻痺手が使用手へ変化していったため,報告する.なお,本報告は症例より同意を得ている.
【症例】50代男性,右利き,病前生活は自立,営業の仕事.既往歴:頚椎症現病歴:X年Y月Z日に左被殻出血と診断,Brs(Rt)2-2-2.X年Y月Z+178日に退院,Brs(Rt)4-3-3,退院時FIM111点.退院後4カ月間訪問リハを実施し,屋外歩行まで自立.その後上肢機能の改善,復職支援目的に外来リハにて加療予定も,既往の頚椎症の症状が憎悪しX年Y月Z+267日に頚椎症OPE施行.その後も症状軽快せず麻痺が憎悪したため,約1ヵ月間の短期集中リハ目的にX年Y月Z+309日に再入院.
【初期評価】入院時(X年Y月Z+312日)Brs(Rt)4-3-3 FMA:28/66(上肢運動項目) FIM:103点.右手の使用なし.発言:右手が硬くて使いづらい.希望:茶碗を右手で持ちたい.
【経過】経過①:右上肢へ意識を向ける時期(入院~2週目)右上肢に対しての意識付けを目標に,希望である茶碗の把持に向けた課題指向型アプローチを実施.並行して機能向上を目的に電気刺激療法,自主練習指導を行った.結果,介入内で右上肢での茶碗把持が可能となり,発言に「手が動きやすくなった,右手で他のものを動かしたい」と右上肢機能向上に対する実感や意識に変化が見られた.左記発言時のMALスコアはAOU0.77 QOU0.54.経過②:生活動作へ上肢参加を促す時期(2週目~退院時)意識付けが行えた右上肢に対し,生活への参加を促すために生活動作での使用方法の指導を介入に加えた.本人に生活内で右手を使いたい動作を探してもらい,その動作をどうすれば使用できるかを指導した.結果FMA:39/66,MAL:AOU1.15 QOU0.77,FIM:123点まで向上.生活では「コップやスプーン,茶碗を使ってみた」と使用する様子が出現した.その後退院となる.経過③:生活での上肢使用定着時期(外来開始~1ヵ月)外来リハでは上肢機能訓練,電気刺激療法,生活指導,自主トレ指導を実施.「少しずつ手が使えてきた.自分で出来ることを探している」と前向きな発言が聞かれた.生活内でも洗髪動作への参加や,照明のスイッチ,シャワーヘッド,ドライヤーの操作を右上肢で行い,使用機会が増えた.MALスコアもAOU1.38 QOU0.92と向上.現在も外来リハにて,上肢の使用方法についての提案は続けている.
【考察】経過①②にてMAL,FMAの点数が向上した.これは課題指向型アプローチを中心に電気刺激療法等を併用して実施し,上肢への意識付け,上肢機能改善が行えた為と考える.そして経過③では退院後も生活動作への上肢参加が増えている.北村ら2)が述べた麻痺手使用の過程を本症例に当てはめると,再入院から外来リハを通して麻痺手を使う必要性を実感し,意識的に麻痺手を使用する経験をしたことで,麻痺手を使用する選択ができたと考える.今回,希望である作業を介入に取り入れたことも本人の意欲を向上させ,上肢を使用手へ変化できた要因と考える.今後もOTの関わり方として,対象者にとっての作業の特性を理解し介入していきたい.
【参考文献】1)Taub E:The behavior-analytic origins of constraint-induced movementtherapy:An example of behavioral neurorehabilitation. Behav Anal35(2):155-178,2012.2)北村新,宮本礼子:脳卒中後遺症者が麻痺側上肢の不使用に至るプロセス,作業療法38:45~53,2019.
【症例】50代男性,右利き,病前生活は自立,営業の仕事.既往歴:頚椎症現病歴:X年Y月Z日に左被殻出血と診断,Brs(Rt)2-2-2.X年Y月Z+178日に退院,Brs(Rt)4-3-3,退院時FIM111点.退院後4カ月間訪問リハを実施し,屋外歩行まで自立.その後上肢機能の改善,復職支援目的に外来リハにて加療予定も,既往の頚椎症の症状が憎悪しX年Y月Z+267日に頚椎症OPE施行.その後も症状軽快せず麻痺が憎悪したため,約1ヵ月間の短期集中リハ目的にX年Y月Z+309日に再入院.
【初期評価】入院時(X年Y月Z+312日)Brs(Rt)4-3-3 FMA:28/66(上肢運動項目) FIM:103点.右手の使用なし.発言:右手が硬くて使いづらい.希望:茶碗を右手で持ちたい.
【経過】経過①:右上肢へ意識を向ける時期(入院~2週目)右上肢に対しての意識付けを目標に,希望である茶碗の把持に向けた課題指向型アプローチを実施.並行して機能向上を目的に電気刺激療法,自主練習指導を行った.結果,介入内で右上肢での茶碗把持が可能となり,発言に「手が動きやすくなった,右手で他のものを動かしたい」と右上肢機能向上に対する実感や意識に変化が見られた.左記発言時のMALスコアはAOU0.77 QOU0.54.経過②:生活動作へ上肢参加を促す時期(2週目~退院時)意識付けが行えた右上肢に対し,生活への参加を促すために生活動作での使用方法の指導を介入に加えた.本人に生活内で右手を使いたい動作を探してもらい,その動作をどうすれば使用できるかを指導した.結果FMA:39/66,MAL:AOU1.15 QOU0.77,FIM:123点まで向上.生活では「コップやスプーン,茶碗を使ってみた」と使用する様子が出現した.その後退院となる.経過③:生活での上肢使用定着時期(外来開始~1ヵ月)外来リハでは上肢機能訓練,電気刺激療法,生活指導,自主トレ指導を実施.「少しずつ手が使えてきた.自分で出来ることを探している」と前向きな発言が聞かれた.生活内でも洗髪動作への参加や,照明のスイッチ,シャワーヘッド,ドライヤーの操作を右上肢で行い,使用機会が増えた.MALスコアもAOU1.38 QOU0.92と向上.現在も外来リハにて,上肢の使用方法についての提案は続けている.
【考察】経過①②にてMAL,FMAの点数が向上した.これは課題指向型アプローチを中心に電気刺激療法等を併用して実施し,上肢への意識付け,上肢機能改善が行えた為と考える.そして経過③では退院後も生活動作への上肢参加が増えている.北村ら2)が述べた麻痺手使用の過程を本症例に当てはめると,再入院から外来リハを通して麻痺手を使う必要性を実感し,意識的に麻痺手を使用する経験をしたことで,麻痺手を使用する選択ができたと考える.今回,希望である作業を介入に取り入れたことも本人の意欲を向上させ,上肢を使用手へ変化できた要因と考える.今後もOTの関わり方として,対象者にとっての作業の特性を理解し介入していきたい.
【参考文献】1)Taub E:The behavior-analytic origins of constraint-induced movementtherapy:An example of behavioral neurorehabilitation. Behav Anal35(2):155-178,2012.2)北村新,宮本礼子:脳卒中後遺症者が麻痺側上肢の不使用に至るプロセス,作業療法38:45~53,2019.