[PA-9-11] ポスター:脳血管疾患等 9脳血管障害患者の回復期施設における上肢運動機能回復: Fugl-Meyer assessmentにおける時間的推移
【背景】
本邦の脳卒中リハビリテーション領域においては,発症後の運動機能評価として, Brunnstrom recovery stage (BRS) がルーチン評価ツールとして定着している. しかしながら, BRSは6段階順序尺度であり, 作業療法におけるテイラーメイドのプログラム立案においては数字や文字に還元されにくい,より質的な評価を併用している場合が多い. 一方, 国際的な支持を強く受ける Fugl-Meyer assessment(FMA)はBRSと比較し, より細やかに対象者の運動機能を評価することができるとされている. また, 本邦における脳卒中治療の進歩に合わせて, その後の作業療法治療に必要となる情報もアップデートする必要がある. そのため, 脳卒中後の運動機能の回復をFMAで表現することが, 運動機能障害の程度や発症後の経過に合わせた個別性の高い作業療法実践のための重要な情報の一つになると考えた.
【目的】
脳血管障害患者の回復期施設における上肢運動FMA得点を経時的に評価し, その推移を探索的に整理する.
【方法】
当院倫理承認番号:B 16-180.対象は2017年から2020年までに回復期病棟に入院した脳血管障害患者で入院時取得項目は年齢,性別,BMI,病型,発症後日数,発症時NIHSS, 上肢運動FMAであり, その後の経時的変化は上肢運動FMAで1ヶ月ごと,もしくは退院時に評価した. また, 上肢運動FMAは合計得点(66点),肩/肘/前腕項目得点(36点),手首/手指/協調性項目得点(30点)で整理した. 加えて, 15名以上の対象者が確認できた区間では入院時からの改善の有無とその程度をWilcoxon符号符順位和検定と効果量を用いて検討することとした.
【結果】
対象となった99例のうち,上肢FMAの評価が困難であった18例,入院期間が8日であった1例を除く,80例が解析対象となった. 15名以上確認できた区間は入院時から1ヶ月(以下,BL -1M),2ヶ月(以下,BL -2M),3ヶ月(以下,BL -3M)であった(順に80例, 53例, 17例). 上肢FMAの各期間における中央値(BL-最終評価の順)は以下の通りある:BL -1M [合計] 55.5-60,[肩/肘/前腕] 31-34,[手首/手指/協調性] 24-27;BL -2M [合計] 50- 59,[肩/肘/前腕] 29-34,[手首/手指/協調性] 20-25;BL -3M [合計] 52- 59,[肩/肘/前腕] 30-34,[手首/手指/協調性], 22- 25. 全ての期間のFMA得点にて統計学的有意差(P<0.01)を確認した. また, 効果量は[合計/肩-肘-前腕/手首-手指-協調性]の順に, BL -1Mで0.50/0.39/0.48, BL-2Mで0.56/0.53/0.56, BL-3Mで0.60/0.46/0.61であった. 事後検討された検出力は, BL-1MとBL-2Mで0.9以上あることが確認されたが, BL-3Mでは0.4~0.6程度であった.
【考察】
時間の経過に伴い脳血管障害患者の上肢運動機能が段階的に改善することを確認した.また, 各区間での合計変化量の95%信頼区間は, BL-1M=4–7,BL-2M=6–11,BL -3M=3–15であり, 急性期から回復期で算出された臨床的意義のある最小変化量4.0と同等かそれを上回る症例が多く, 入院期間の延長に伴い変化量は増加する場合が多いことを確認した. 今後は, FMA得点の変化に影響を与える要因や作業療法実践で着目すべき運動機能回復を対象者の個別性に合わせて検討する必要がある.
本邦の脳卒中リハビリテーション領域においては,発症後の運動機能評価として, Brunnstrom recovery stage (BRS) がルーチン評価ツールとして定着している. しかしながら, BRSは6段階順序尺度であり, 作業療法におけるテイラーメイドのプログラム立案においては数字や文字に還元されにくい,より質的な評価を併用している場合が多い. 一方, 国際的な支持を強く受ける Fugl-Meyer assessment(FMA)はBRSと比較し, より細やかに対象者の運動機能を評価することができるとされている. また, 本邦における脳卒中治療の進歩に合わせて, その後の作業療法治療に必要となる情報もアップデートする必要がある. そのため, 脳卒中後の運動機能の回復をFMAで表現することが, 運動機能障害の程度や発症後の経過に合わせた個別性の高い作業療法実践のための重要な情報の一つになると考えた.
【目的】
脳血管障害患者の回復期施設における上肢運動FMA得点を経時的に評価し, その推移を探索的に整理する.
【方法】
当院倫理承認番号:B 16-180.対象は2017年から2020年までに回復期病棟に入院した脳血管障害患者で入院時取得項目は年齢,性別,BMI,病型,発症後日数,発症時NIHSS, 上肢運動FMAであり, その後の経時的変化は上肢運動FMAで1ヶ月ごと,もしくは退院時に評価した. また, 上肢運動FMAは合計得点(66点),肩/肘/前腕項目得点(36点),手首/手指/協調性項目得点(30点)で整理した. 加えて, 15名以上の対象者が確認できた区間では入院時からの改善の有無とその程度をWilcoxon符号符順位和検定と効果量を用いて検討することとした.
【結果】
対象となった99例のうち,上肢FMAの評価が困難であった18例,入院期間が8日であった1例を除く,80例が解析対象となった. 15名以上確認できた区間は入院時から1ヶ月(以下,BL -1M),2ヶ月(以下,BL -2M),3ヶ月(以下,BL -3M)であった(順に80例, 53例, 17例). 上肢FMAの各期間における中央値(BL-最終評価の順)は以下の通りある:BL -1M [合計] 55.5-60,[肩/肘/前腕] 31-34,[手首/手指/協調性] 24-27;BL -2M [合計] 50- 59,[肩/肘/前腕] 29-34,[手首/手指/協調性] 20-25;BL -3M [合計] 52- 59,[肩/肘/前腕] 30-34,[手首/手指/協調性], 22- 25. 全ての期間のFMA得点にて統計学的有意差(P<0.01)を確認した. また, 効果量は[合計/肩-肘-前腕/手首-手指-協調性]の順に, BL -1Mで0.50/0.39/0.48, BL-2Mで0.56/0.53/0.56, BL-3Mで0.60/0.46/0.61であった. 事後検討された検出力は, BL-1MとBL-2Mで0.9以上あることが確認されたが, BL-3Mでは0.4~0.6程度であった.
【考察】
時間の経過に伴い脳血管障害患者の上肢運動機能が段階的に改善することを確認した.また, 各区間での合計変化量の95%信頼区間は, BL-1M=4–7,BL-2M=6–11,BL -3M=3–15であり, 急性期から回復期で算出された臨床的意義のある最小変化量4.0と同等かそれを上回る症例が多く, 入院期間の延長に伴い変化量は増加する場合が多いことを確認した. 今後は, FMA得点の変化に影響を与える要因や作業療法実践で着目すべき運動機能回復を対象者の個別性に合わせて検討する必要がある.