[PA-9-6] ポスター:脳血管疾患等 9脳卒中により手指重度麻痺を呈した患者に対して上肢装具使用にて修正CI療法を実施した一症例
【序論】脳卒中後の上肢麻痺に対するエビデンスの高いアプローチにCI療法がある.CI療法のプロトコルでは,手関節の背屈と手指の随意的な伸展が必要であるとされており適応に制限があるが,適応外に対して装具療法や電気刺激療法を併用することで成果を挙げている報告がある.今回,手関節の背屈と手指の伸展が困難な症例に対して,機能面を補う目的で3種類の装具(手関節背屈装具,母指対立装具,スパイダースプリント)を着用して修正CI療法,電気刺激併用での促通反復療法とロボット療法を複合的に介入したことで,上肢機能の改善と麻痺手の使用頻度の改善に至ったため以下に報告する.なお,本報告における主旨を本人に説明し同意を得た.申告すべきCOIは無い.
【症例紹介】50歳代男性(右利き),右脳梗塞を発症し41病日後に当院の回復期リハ病棟へ転入した.Brunnstrom recovery stage(以下BRS)は左上肢Ⅴ手指Ⅲ,Fugl-Meyer assessment Upper Extremity(以下FMA-UE) 23 /66点,感覚は,表在・深部ともに上肢は中等度鈍麻,手関節以遠は重度鈍麻,Action Research Arm Test(以下ARAT) 4/57点,左手の握力とピンチ力は0kgであった.Motor Activity Log(以下MAL)はAmount of use(以下AOU) 0.17/5点,Quality of Movement(以下QOM) 0.17/5点であった.認知機能に低下はなく,入浴以外のADLは独歩で自立していた.
症例から「左手は動かないから,リハビリ以外では使ってない」という発言がある一方で「両手で苗床を持ちたい」と米農家への復職希望が聞かれた.
【方法】43病日目より,3種類の装具(手関節背屈装具,母指対立装具,スパイダースプリント)を着用し修正CI療法,ロボット療法と電気刺激併用での促通反復療法を複合的に実施した.
【経過】第一期(43〜50病日):装具を使用し修正CI療法,ロボット療法と電気刺激併用での促通反復療法を実施
肩関節周囲筋の筋緊張が低下していたため,ロボット療法( ReoGo-J)を自動運動で実施した.麻痺手での物品操作は困難なため,麻痺側手指と手関節の随意性向上を目的に電気刺激併用での促通反復療法を実施した.また,生活に汎化させるために3種類の装具(手関節背屈装具,母指対立装具,スパイダースプリント)を使用し修正CI療法を行った.
第二期( 51〜58病日):生活場面で装具を着用し麻痺手の使用を促進
母指対立の随意性が向上し,手関節背屈装具とスパイダースプリントの2種類を使用して物品操作が可能となった.また,症例自身で装具の着脱が可能となったため,課題指向型訓練とTPの項目を増やした.
【結果】59病日目の再評価でBRS上肢Ⅴ手指Ⅳ,FMA-UE 37/66点,感覚は表在深部ともに中等度鈍麻となった.ARATは 10/57点,左手の握力7.0kg,ピンチ力(側腹つまみ)1.8kgとなりAOU 1.50点,QOM1.33点まで改善した.また,装具なしでも苗床を模した物品を両手で持ち運搬することが可能になり,症例からは「これなら持てそうだ」と前向きな発言が聞かれた.
【考察】回復期における臨床的に有意な最小変化量(MCID)について,Aryaら(2011)はFMA-UEは10〜11点,Van der Leeら(1999)はAOUは0.5点QOMは非利き手で1.1点,Simpsonら(2013)はARATは非利き手で17点であると示している.本症例においてはFMA,MALに関してはMCIDを超えたが,ARATはMCIDに達しなかった.
本症例はCI療法の適応外に対して装具着用下での修正CI療法と複合的アプローチを併用したことで,改善した上肢機能を生活に汎化させ,麻痺手の使用頻度,本人の使用感の向上に繋がったと考える.
【症例紹介】50歳代男性(右利き),右脳梗塞を発症し41病日後に当院の回復期リハ病棟へ転入した.Brunnstrom recovery stage(以下BRS)は左上肢Ⅴ手指Ⅲ,Fugl-Meyer assessment Upper Extremity(以下FMA-UE) 23 /66点,感覚は,表在・深部ともに上肢は中等度鈍麻,手関節以遠は重度鈍麻,Action Research Arm Test(以下ARAT) 4/57点,左手の握力とピンチ力は0kgであった.Motor Activity Log(以下MAL)はAmount of use(以下AOU) 0.17/5点,Quality of Movement(以下QOM) 0.17/5点であった.認知機能に低下はなく,入浴以外のADLは独歩で自立していた.
症例から「左手は動かないから,リハビリ以外では使ってない」という発言がある一方で「両手で苗床を持ちたい」と米農家への復職希望が聞かれた.
【方法】43病日目より,3種類の装具(手関節背屈装具,母指対立装具,スパイダースプリント)を着用し修正CI療法,ロボット療法と電気刺激併用での促通反復療法を複合的に実施した.
【経過】第一期(43〜50病日):装具を使用し修正CI療法,ロボット療法と電気刺激併用での促通反復療法を実施
肩関節周囲筋の筋緊張が低下していたため,ロボット療法( ReoGo-J)を自動運動で実施した.麻痺手での物品操作は困難なため,麻痺側手指と手関節の随意性向上を目的に電気刺激併用での促通反復療法を実施した.また,生活に汎化させるために3種類の装具(手関節背屈装具,母指対立装具,スパイダースプリント)を使用し修正CI療法を行った.
第二期( 51〜58病日):生活場面で装具を着用し麻痺手の使用を促進
母指対立の随意性が向上し,手関節背屈装具とスパイダースプリントの2種類を使用して物品操作が可能となった.また,症例自身で装具の着脱が可能となったため,課題指向型訓練とTPの項目を増やした.
【結果】59病日目の再評価でBRS上肢Ⅴ手指Ⅳ,FMA-UE 37/66点,感覚は表在深部ともに中等度鈍麻となった.ARATは 10/57点,左手の握力7.0kg,ピンチ力(側腹つまみ)1.8kgとなりAOU 1.50点,QOM1.33点まで改善した.また,装具なしでも苗床を模した物品を両手で持ち運搬することが可能になり,症例からは「これなら持てそうだ」と前向きな発言が聞かれた.
【考察】回復期における臨床的に有意な最小変化量(MCID)について,Aryaら(2011)はFMA-UEは10〜11点,Van der Leeら(1999)はAOUは0.5点QOMは非利き手で1.1点,Simpsonら(2013)はARATは非利き手で17点であると示している.本症例においてはFMA,MALに関してはMCIDを超えたが,ARATはMCIDに達しなかった.
本症例はCI療法の適応外に対して装具着用下での修正CI療法と複合的アプローチを併用したことで,改善した上肢機能を生活に汎化させ,麻痺手の使用頻度,本人の使用感の向上に繋がったと考える.