[PA-9-7] ポスター:脳血管疾患等 9テント下病変における高次脳機能障害とCerebral Microbleedsとの関連
【はじめに】小脳病変による言語・認知・記憶および感情の障害は,Cerebellar cognitive affective syndrome(以下CCAS)という疾患概念として1998年にSchmahmannらにより提唱され,以後,小脳による高次脳機能への関与が注目されている.また,臨床上,小脳以外のテント下病変においても高次脳機能障害を経験している.微小脳出血(Cerebral Microbleeds,以下CMBs)は加齢,高血圧,ラクナ梗塞,大脳白質病変と関連があり,脳の小動脈病変(small vessel diseases)の血管脆弱性,易出血性の指標であると考えられている.また,WerringらはCMBsの存在が,認知機能低下に関連していると報告している.
我々は,第55回日本作業療法学会においてテント下病変における高次脳機能障害と大脳白質病変との関連について報告した.今回,CMBsとの関連について検討したので報告する.
【対象】2015年4月から2020年8月までの5年4ヶ月間に当院から当法人回復期リハビリテーション病棟(以下回復期リハ病棟)に転院した初発脳血管障害,テント下病変例88例を対象とした.なお,1.回復期リハ病棟入院時のMMSEが23点以下の事例,2.既往に認知症を認める事例,3.発症前のADLが介助レベルの事例,4.死亡退院の事例は除外した.平均年齢は68.8±13.2歳,男性46例,女性42例.疾患の内訳は,脳梗塞66例,脳出血22例,病巣部位は,橋44例,小脳30例,延髄14例であった.
【方法】診療録から1.年齢,在院日数(回復期リハ病棟),性別,病巣の局在,2.高次脳機能評価としてMMSE,Trail Making Test A/B(以下TMT),リバーミード行動記憶検査(以下RBMT),Frontal Assessment Battery(以下FAB),コース立方体テスト,3.意欲の指標としてVitality Index(以下V.I)を抽出し,後方視的に調査した.また,T2*強調画像を施行した症例のCMBsについては,脳ドックガイドライン2014の定義を参考とし,Microbleed Anatomical Rating Scaleを基に部位(Lobar,Deep,Mixed,Infratentorial)を同定した.結果は,CMBsの有無でCMBs陽性群と陰性群に分類し検討した.統計処理には,IBM SPSS statistics 26を使用し,Mann-Whitney U検定を用いた.統計学的有意水準は危険率5%未満とした.本研究は当法人研究倫理審査委員会の承認を得ている.
【結果】全症例中のCMBs陽性群は43例(48.9%)であり,部位別ではLobar36例(83.7%),Deep22例(51.2%),Mixed15例(34.9%),Infratentorial4例(9.3%)であった.また,CMBs陽性群の内,18例(41.9%)に大脳白質病変が認められた.CMBs陽性群/陰性群の比較では,年齢,回復期リハ病棟入院時TMT-A/B,退院時MMSE・V.I・TMT-A/B・RBMTで陽性群が有意に低い結果となった.FAB,コース立方体テストでは差は認められなかった.
【考察】van Nordenらは,CMBsの多発で認知機能が低下しやすく,特に情報処理速度や注意機能が障害されやすいと述べている.また,Von Monakowらは,CCASを始めとするテント下病変における高次脳機能障害は,小脳と大脳皮質間の神経回路の損傷によって生じるCerebellar Diaschisisによるのではないかと報告しており,CMBsや大脳白質病変がCerebellar Diaschisisに影響していた可能性も考えられる.
今回の結果から,CMBsの存在がテント下病変における高次脳機能障害の改善度合いに影響していた可能性が示唆された.CMBsや大脳白質病変を認めるテント下病変を有する症例に対しては,復職や自動車運転再開といった社会参加を念頭に置いた詳細な高次脳機能評価・訓練を行う必要があると思われる.
我々は,第55回日本作業療法学会においてテント下病変における高次脳機能障害と大脳白質病変との関連について報告した.今回,CMBsとの関連について検討したので報告する.
【対象】2015年4月から2020年8月までの5年4ヶ月間に当院から当法人回復期リハビリテーション病棟(以下回復期リハ病棟)に転院した初発脳血管障害,テント下病変例88例を対象とした.なお,1.回復期リハ病棟入院時のMMSEが23点以下の事例,2.既往に認知症を認める事例,3.発症前のADLが介助レベルの事例,4.死亡退院の事例は除外した.平均年齢は68.8±13.2歳,男性46例,女性42例.疾患の内訳は,脳梗塞66例,脳出血22例,病巣部位は,橋44例,小脳30例,延髄14例であった.
【方法】診療録から1.年齢,在院日数(回復期リハ病棟),性別,病巣の局在,2.高次脳機能評価としてMMSE,Trail Making Test A/B(以下TMT),リバーミード行動記憶検査(以下RBMT),Frontal Assessment Battery(以下FAB),コース立方体テスト,3.意欲の指標としてVitality Index(以下V.I)を抽出し,後方視的に調査した.また,T2*強調画像を施行した症例のCMBsについては,脳ドックガイドライン2014の定義を参考とし,Microbleed Anatomical Rating Scaleを基に部位(Lobar,Deep,Mixed,Infratentorial)を同定した.結果は,CMBsの有無でCMBs陽性群と陰性群に分類し検討した.統計処理には,IBM SPSS statistics 26を使用し,Mann-Whitney U検定を用いた.統計学的有意水準は危険率5%未満とした.本研究は当法人研究倫理審査委員会の承認を得ている.
【結果】全症例中のCMBs陽性群は43例(48.9%)であり,部位別ではLobar36例(83.7%),Deep22例(51.2%),Mixed15例(34.9%),Infratentorial4例(9.3%)であった.また,CMBs陽性群の内,18例(41.9%)に大脳白質病変が認められた.CMBs陽性群/陰性群の比較では,年齢,回復期リハ病棟入院時TMT-A/B,退院時MMSE・V.I・TMT-A/B・RBMTで陽性群が有意に低い結果となった.FAB,コース立方体テストでは差は認められなかった.
【考察】van Nordenらは,CMBsの多発で認知機能が低下しやすく,特に情報処理速度や注意機能が障害されやすいと述べている.また,Von Monakowらは,CCASを始めとするテント下病変における高次脳機能障害は,小脳と大脳皮質間の神経回路の損傷によって生じるCerebellar Diaschisisによるのではないかと報告しており,CMBsや大脳白質病変がCerebellar Diaschisisに影響していた可能性も考えられる.
今回の結果から,CMBsの存在がテント下病変における高次脳機能障害の改善度合いに影響していた可能性が示唆された.CMBsや大脳白質病変を認めるテント下病変を有する症例に対しては,復職や自動車運転再開といった社会参加を念頭に置いた詳細な高次脳機能評価・訓練を行う必要があると思われる.