[PB-2-3] ポスター:心大血管疾患 2大動脈解離術後に脊髄梗塞を発症し不全対麻痺を呈した症例~急性期病院における多職種支援~
【はじめに】大動脈解離は大動脈内膜に生じた亀裂から血液が内膜に流入し外層と内層に解離させていく疾患であり,術後の合併症として3~16%に脊髄梗塞が発症するといわれている. 今回,大動脈解離に対する全弓部置換術,オープンステント内挿術後に脊髄梗塞を発症し不全対麻痺を呈した症例を担当した.対麻痺患者が少ない心臓外科病棟において,OTが中心となって多職種連携を進めたことで早期から活動量の確保と介助量軽減に繋がる経験ができたため経過に考察を加え報告する.なお倫理的配慮として,発表に当たり本症例には書面にて同意を得ている.
【症例紹介】60代男性,妻と二人暮らし.青果店経営を退職後,園芸やSNS活動を趣味にしている.X日胸痛を主訴に前医を受診し,単純CTで大動脈解離A型が疑われ当院救急搬送,緊急手術となった.X+2日PT開始,X+3日覚醒後に下肢の不全対麻痺が確認され,MRI検査でTh2~4にかけて脊髄梗塞が確認された.X+9日にICU退室し,X+12日からOT開始となった.
【作業療法初期評価(X+12~14日)】意識清明で関節拘縮はなかった.筋力はGMT(Rt/Lt)で上肢4/5体幹4/5股関節屈曲2/1膝関節伸展5/2足関節背屈5/2,感覚はTh2以下が中等度鈍麻で肛門周囲は重度鈍麻であった.膀胱直腸障害として排尿はカテーテル挿入中であり,便意はなく失禁で対応していた.基本動作は最大介助,ADL動作は全介助でBarthel Indexは0点であった.
【介入経過】介入初期は術後の全身倦怠感もあり,基本動作,ADL動作ともに介助レベルであったが,動作手順を検討し動作練習することで寝返り,座位保持の介助量が軽減した.またリクライニング車椅子への離床と環境設定を行うことで食事動作が自立に至った.これらの情報を医師,看護師と共有することでリハビリ以外の活動時間の増加につながった.
全身状態が安定しリハビリ室での訓練が可能となってからはpush upを中心とした基本動作練習や更衣動作練習を行い,PTでは下肢体幹筋促通を目的とした立位練習を中心に介入した.対麻痺症状に対して精神的に落ち込む場面もあったが,リハビリテーション科の医師とともに障害受容に向けて支援した.
【作業療法最終評価(X+45~47日)】筋力は上肢5/5体幹5/5と改善し,下肢は変化なかった.感覚はTh2以下から軽度鈍麻,肛門周囲は脱失,両下肢は重度鈍麻となった.膀胱直腸障害として尿意,便意はともになかった.基本動作は寝返り,起き上がり,座位保持,移乗は見守りへと改善した.起立,立位保持は最大介助と変化なく,歩行は両側に長下肢装具を装着し二人介助で実施したが実用的ではなかった.ADL動作は食事,整容,更衣は自立,トイレ動作は自己導尿自立,排便は失禁で最大介助,入浴は対麻痺症状に対応した浴室がなく最大介助でBarthel Indexは45点と改善した.
【考察】大動脈解離術後の脊髄梗塞は,術後早期に発症する急性対麻痺と術後数日後に発症する遅発性対麻痺に分けられる.遅発性対麻痺は適切な治療により回復する可能性が高いが,急性対麻痺は車椅子生活の自立を目指すことが多い.予後予測として長軸方向への病変の広がり,年齢,感覚障害の有無など多くの要因があげられる.
本症例は急性対麻痺と考えられ,症状から歩行の獲得に至らない可能性が示唆された.そのためOTが中心となって対麻痺症状に合わせた環境調整や動作練習を行い,多職種との情報共有に努めた.急性期から多職種で連携した支援を行ったことが,術後早期からの活動量確保と介助量軽減につながったと考えられた.
【症例紹介】60代男性,妻と二人暮らし.青果店経営を退職後,園芸やSNS活動を趣味にしている.X日胸痛を主訴に前医を受診し,単純CTで大動脈解離A型が疑われ当院救急搬送,緊急手術となった.X+2日PT開始,X+3日覚醒後に下肢の不全対麻痺が確認され,MRI検査でTh2~4にかけて脊髄梗塞が確認された.X+9日にICU退室し,X+12日からOT開始となった.
【作業療法初期評価(X+12~14日)】意識清明で関節拘縮はなかった.筋力はGMT(Rt/Lt)で上肢4/5体幹4/5股関節屈曲2/1膝関節伸展5/2足関節背屈5/2,感覚はTh2以下が中等度鈍麻で肛門周囲は重度鈍麻であった.膀胱直腸障害として排尿はカテーテル挿入中であり,便意はなく失禁で対応していた.基本動作は最大介助,ADL動作は全介助でBarthel Indexは0点であった.
【介入経過】介入初期は術後の全身倦怠感もあり,基本動作,ADL動作ともに介助レベルであったが,動作手順を検討し動作練習することで寝返り,座位保持の介助量が軽減した.またリクライニング車椅子への離床と環境設定を行うことで食事動作が自立に至った.これらの情報を医師,看護師と共有することでリハビリ以外の活動時間の増加につながった.
全身状態が安定しリハビリ室での訓練が可能となってからはpush upを中心とした基本動作練習や更衣動作練習を行い,PTでは下肢体幹筋促通を目的とした立位練習を中心に介入した.対麻痺症状に対して精神的に落ち込む場面もあったが,リハビリテーション科の医師とともに障害受容に向けて支援した.
【作業療法最終評価(X+45~47日)】筋力は上肢5/5体幹5/5と改善し,下肢は変化なかった.感覚はTh2以下から軽度鈍麻,肛門周囲は脱失,両下肢は重度鈍麻となった.膀胱直腸障害として尿意,便意はともになかった.基本動作は寝返り,起き上がり,座位保持,移乗は見守りへと改善した.起立,立位保持は最大介助と変化なく,歩行は両側に長下肢装具を装着し二人介助で実施したが実用的ではなかった.ADL動作は食事,整容,更衣は自立,トイレ動作は自己導尿自立,排便は失禁で最大介助,入浴は対麻痺症状に対応した浴室がなく最大介助でBarthel Indexは45点と改善した.
【考察】大動脈解離術後の脊髄梗塞は,術後早期に発症する急性対麻痺と術後数日後に発症する遅発性対麻痺に分けられる.遅発性対麻痺は適切な治療により回復する可能性が高いが,急性対麻痺は車椅子生活の自立を目指すことが多い.予後予測として長軸方向への病変の広がり,年齢,感覚障害の有無など多くの要因があげられる.
本症例は急性対麻痺と考えられ,症状から歩行の獲得に至らない可能性が示唆された.そのためOTが中心となって対麻痺症状に合わせた環境調整や動作練習を行い,多職種との情報共有に努めた.急性期から多職種で連携した支援を行ったことが,術後早期からの活動量確保と介助量軽減につながったと考えられた.