[PC-2-1] ポスター:呼吸器疾患 2くも膜下出血を合併したCOVID-19患者に対する急性期作業療法の報告
【はじめに】
当院は救命救急センター・SCUを含む380床の三次救急を担う急性期病院である.今回,新型コロナウイルス感染症(以下COVID-19)にくも膜下出血(以下SAH)を合併し,急性期から自宅退院を目指した症例を担当した.本症例は,隔離時期から作業療法士(以下OT)が介入し,感染対策を行いながらリスク管理や回復状況に応じた介入を行う事で自宅退院が可能となった為報告する.尚,今回の報告に対して本人より同意を得ている.
【症例紹介・経過】
50歳代後半の男性.妻と二人暮らしで仕事は自営業.既往歴は高血圧.某年X月Y日,PCR陽性(発熱のみ).ホテル宿泊療養中Y+3病日,室内で倒れている所を発見され当院へ緊急搬送.搬送時,意識レベルGCS:E3V3M5,BP;169/100,SPO2:92%,CTにてSAH(WFNS分類gradeⅣ)の診断に至る(SAH発症日:Z日).搬送後,挿管・鎮静(RASS-4)管理,スパイナルドレナージ施行.Z+4病日,右VA解離性脳動脈瘤に対してコイル塞栓術を施行.術後7日目に鎮静解除・人工呼吸器離脱するが,両下肺野にすりガラス陰影を認め,COVID-19による肺炎増悪(中等症Ⅱ)にて酸素3L/min投与(鼻カニューレ)を継続,レムデシビル投与が開始.その間,水頭症・脳血管攣縮認めずZ+14病日にスパイナルドレーン抜去,同日PCRにて陰性を確認し一般病棟へ転棟.その後理学療法も追加となり,酸素投与にて棟内歩行はZ+25病日に自立,最終的には室内気でZ+46病日で自宅退院.
【評価・介入状況】隔離ゾーンの介入時期:術後翌日よりOT介入開始.鎮静・挿管中は,痰量が多く感染拡大予防を図りつつ,短時間の介入にて看護師と連携し,ドレーンをクランプした清拭ケアの時間帯に合わせて,体位ドレナージを中心に介入した.抜管・鎮静解除後は意識清明で麻痺は認めなかった.しかし頭痛・眩暈・嘔気があり,血圧は指示範囲逸脱し離床困難が続いた為,呼吸ケアを最優先としベッド上にて排痰・呼吸訓練を継続したが,呼吸苦の自覚症状は乏しかった.また意識レベルやバイタル,神経症状の有無を管理しながら端座位・車椅子移乗を開始し,SAHの神経症状は軽度複視のみであった.
隔離解除~退院までの時期:評価では明らかな高次脳機能障害は認めず,複視も改善し,SAH発症より約1か月後には酸素投与(2L/min)にて院内ADLは自立した.しかし,労作時の血圧上昇を認め,脈拍・呼吸数の変化はないが,特に自室内のADLでは呼吸苦の自覚症状がない為,呼吸法を意識する事なくSPO2が80%前半まで低下していた(NRADL:55/100点).そこで退院までの約2週間自己管理を促す目的でチェックシートを作成し,各動作を行った直後のSPO2数値・息切れの自覚症状(修正Borg scale)を本人に記入するよう指導した.その間OTでは,直接ADL場面にて呼吸法やエネルギー節約の行動パターンの指導・助言を継続した.最終的には本人もチェック用紙を振り返る事で,自覚症状と実際のSPO2数値の差異に気付きが得られ,呼吸を意識した動作が定着し最終的には労作時SPO2:90%以上(室内気)で,院内ADL自立(NRADL:75/100点)に至った.
【考察】
本症例は,SAH・COVID-19を合併し隔離期間中は介入方法にも難渋したが,看護師との連携や適切なリスク管理で,水頭症や脳血管攣縮のリスクのある時期でも肺炎改善に向けて支援が行えた一例であったと考える.またCOVID-19のsilent hypoxiaに対しては,本人自身に病態を正しく認識してもらう事が退院後の自己管理を行っていく上で非常に有用であった.コロナ禍による入院患者の外出・外泊制限がある昨今,今後も入院中の在宅復帰に向けての生活指導は急性期OTの重要な役割であると考える.
当院は救命救急センター・SCUを含む380床の三次救急を担う急性期病院である.今回,新型コロナウイルス感染症(以下COVID-19)にくも膜下出血(以下SAH)を合併し,急性期から自宅退院を目指した症例を担当した.本症例は,隔離時期から作業療法士(以下OT)が介入し,感染対策を行いながらリスク管理や回復状況に応じた介入を行う事で自宅退院が可能となった為報告する.尚,今回の報告に対して本人より同意を得ている.
【症例紹介・経過】
50歳代後半の男性.妻と二人暮らしで仕事は自営業.既往歴は高血圧.某年X月Y日,PCR陽性(発熱のみ).ホテル宿泊療養中Y+3病日,室内で倒れている所を発見され当院へ緊急搬送.搬送時,意識レベルGCS:E3V3M5,BP;169/100,SPO2:92%,CTにてSAH(WFNS分類gradeⅣ)の診断に至る(SAH発症日:Z日).搬送後,挿管・鎮静(RASS-4)管理,スパイナルドレナージ施行.Z+4病日,右VA解離性脳動脈瘤に対してコイル塞栓術を施行.術後7日目に鎮静解除・人工呼吸器離脱するが,両下肺野にすりガラス陰影を認め,COVID-19による肺炎増悪(中等症Ⅱ)にて酸素3L/min投与(鼻カニューレ)を継続,レムデシビル投与が開始.その間,水頭症・脳血管攣縮認めずZ+14病日にスパイナルドレーン抜去,同日PCRにて陰性を確認し一般病棟へ転棟.その後理学療法も追加となり,酸素投与にて棟内歩行はZ+25病日に自立,最終的には室内気でZ+46病日で自宅退院.
【評価・介入状況】隔離ゾーンの介入時期:術後翌日よりOT介入開始.鎮静・挿管中は,痰量が多く感染拡大予防を図りつつ,短時間の介入にて看護師と連携し,ドレーンをクランプした清拭ケアの時間帯に合わせて,体位ドレナージを中心に介入した.抜管・鎮静解除後は意識清明で麻痺は認めなかった.しかし頭痛・眩暈・嘔気があり,血圧は指示範囲逸脱し離床困難が続いた為,呼吸ケアを最優先としベッド上にて排痰・呼吸訓練を継続したが,呼吸苦の自覚症状は乏しかった.また意識レベルやバイタル,神経症状の有無を管理しながら端座位・車椅子移乗を開始し,SAHの神経症状は軽度複視のみであった.
隔離解除~退院までの時期:評価では明らかな高次脳機能障害は認めず,複視も改善し,SAH発症より約1か月後には酸素投与(2L/min)にて院内ADLは自立した.しかし,労作時の血圧上昇を認め,脈拍・呼吸数の変化はないが,特に自室内のADLでは呼吸苦の自覚症状がない為,呼吸法を意識する事なくSPO2が80%前半まで低下していた(NRADL:55/100点).そこで退院までの約2週間自己管理を促す目的でチェックシートを作成し,各動作を行った直後のSPO2数値・息切れの自覚症状(修正Borg scale)を本人に記入するよう指導した.その間OTでは,直接ADL場面にて呼吸法やエネルギー節約の行動パターンの指導・助言を継続した.最終的には本人もチェック用紙を振り返る事で,自覚症状と実際のSPO2数値の差異に気付きが得られ,呼吸を意識した動作が定着し最終的には労作時SPO2:90%以上(室内気)で,院内ADL自立(NRADL:75/100点)に至った.
【考察】
本症例は,SAH・COVID-19を合併し隔離期間中は介入方法にも難渋したが,看護師との連携や適切なリスク管理で,水頭症や脳血管攣縮のリスクのある時期でも肺炎改善に向けて支援が行えた一例であったと考える.またCOVID-19のsilent hypoxiaに対しては,本人自身に病態を正しく認識してもらう事が退院後の自己管理を行っていく上で非常に有用であった.コロナ禍による入院患者の外出・外泊制限がある昨今,今後も入院中の在宅復帰に向けての生活指導は急性期OTの重要な役割であると考える.