[PC-2-3] ポスター:呼吸器疾患 2当院における呼吸器疾患患者のFIM利得に影響する因子の検討
【はじめに】
近年,高齢化社会が進み,呼吸器疾患を有する患者に関わることが増加してきている.呼吸器疾患の作業療法はADLやIADLへの支援が中心であり,その重要性は認識されてきている.呼吸器疾患におけるADLの低下には安静臥床期間,経過中の精神症状,誤嚥が影響を与えていること,自宅復帰のためにはセルフケアが自立している必要がある(前本英樹,2007)との報告があり,入院中のADL回復に関連する因子を把握することは重要であると考える.よって本研究は当院における呼吸器疾患患者のFIM利得にどのような因子が影響するのか検討した.なお,今回の発表に際し当院倫理委員会の承認を得た.
【方法】
対象は令和元年9月から令和2年1月までに当院に呼吸器疾患で入院及び呼吸リハビリテーション介入となった患者98名の内,65歳未満,死亡例,データ欠損例に該当した患者を除外した61名とした.疾患の内訳は肺炎48名,気管支喘息3名,気胸2名,間質性肺炎2名,その他6名であった. 調査項目は年齢,性別,身長,入院時体重,BMI,介護保険の有無,在院日数,リハビリテーション開始までの日数,退院先の変更,入院時LD,CRP,TP,Alb,Hb,リンパ球実数,入院時FIM,退院時FIM,FIM利得を診療録より後方視的に抽出した.
統計解析は,まずFIM利得が中央値8点以上を高回復群,8点未満を低回復群の2群に分類して2群間比較,FIM利得との相関関係をSpearmanの順位相関係数を用いて検討した.解析には統計解析ソフト「EZR」version1.40を使用し,いずれの検定においても有意水準は5%とした.
【結果】
2群間比較の結果,低回復群と比較して高回復群では入院時FIMの総得点,運動項目の食事,排尿コントロール,排便コントロール,認知項目の理解,表出,社会的交流,問題解決,記憶の項目,入院時Hbが優位に高値であった.
FIM利得と入院時FIMの総得点(rs=0.332),運動項目の食事(rs=0.295),排尿コントロール( rs=0.303 ) , 排便コントロ ー ル ( rs=0.337 ) , 認知項目の理解 ( rs=0.453 ) , 表 出(rs=0.511),社会的交流(rs=0.512),問題解決(rs=0.508),記憶(rs=0.501)の項目,入院時Hb(rs=0.281)に有意な相関関係が認められた.
【考察】
今回の結果において入院時FIMの食事,排泄コントロール,認知項目,及びHbが低い患者ではFIM利得が低い傾向にある結果となった.先行研究より呼吸器疾患患者において食事動作は疲労感といった全身への影響が生じる(河田照絵,2009),排泄動作は身体的負担が大きい(西山佐知子,2006)との報告があり,食事や排泄項目の改善がFIM利得に影響するものと考える.また認知機能障害の進行に伴いADLは低下する(横井輝夫,2003),Hb値が低い患者はリハビリテーションの結果が悪くなる可能性が高い(Wakabayashi H,2011)との報告があり,認知機能障害や低栄養状態がADLの改善に影響を及ぼしたと考える.以上の結果より,FIM利得を高めるためには,食事動作,排泄動作,認知機能,栄養状態に着目して早期から介入することが重要であると考える.
近年,高齢化社会が進み,呼吸器疾患を有する患者に関わることが増加してきている.呼吸器疾患の作業療法はADLやIADLへの支援が中心であり,その重要性は認識されてきている.呼吸器疾患におけるADLの低下には安静臥床期間,経過中の精神症状,誤嚥が影響を与えていること,自宅復帰のためにはセルフケアが自立している必要がある(前本英樹,2007)との報告があり,入院中のADL回復に関連する因子を把握することは重要であると考える.よって本研究は当院における呼吸器疾患患者のFIM利得にどのような因子が影響するのか検討した.なお,今回の発表に際し当院倫理委員会の承認を得た.
【方法】
対象は令和元年9月から令和2年1月までに当院に呼吸器疾患で入院及び呼吸リハビリテーション介入となった患者98名の内,65歳未満,死亡例,データ欠損例に該当した患者を除外した61名とした.疾患の内訳は肺炎48名,気管支喘息3名,気胸2名,間質性肺炎2名,その他6名であった. 調査項目は年齢,性別,身長,入院時体重,BMI,介護保険の有無,在院日数,リハビリテーション開始までの日数,退院先の変更,入院時LD,CRP,TP,Alb,Hb,リンパ球実数,入院時FIM,退院時FIM,FIM利得を診療録より後方視的に抽出した.
統計解析は,まずFIM利得が中央値8点以上を高回復群,8点未満を低回復群の2群に分類して2群間比較,FIM利得との相関関係をSpearmanの順位相関係数を用いて検討した.解析には統計解析ソフト「EZR」version1.40を使用し,いずれの検定においても有意水準は5%とした.
【結果】
2群間比較の結果,低回復群と比較して高回復群では入院時FIMの総得点,運動項目の食事,排尿コントロール,排便コントロール,認知項目の理解,表出,社会的交流,問題解決,記憶の項目,入院時Hbが優位に高値であった.
FIM利得と入院時FIMの総得点(rs=0.332),運動項目の食事(rs=0.295),排尿コントロール( rs=0.303 ) , 排便コントロ ー ル ( rs=0.337 ) , 認知項目の理解 ( rs=0.453 ) , 表 出(rs=0.511),社会的交流(rs=0.512),問題解決(rs=0.508),記憶(rs=0.501)の項目,入院時Hb(rs=0.281)に有意な相関関係が認められた.
【考察】
今回の結果において入院時FIMの食事,排泄コントロール,認知項目,及びHbが低い患者ではFIM利得が低い傾向にある結果となった.先行研究より呼吸器疾患患者において食事動作は疲労感といった全身への影響が生じる(河田照絵,2009),排泄動作は身体的負担が大きい(西山佐知子,2006)との報告があり,食事や排泄項目の改善がFIM利得に影響するものと考える.また認知機能障害の進行に伴いADLは低下する(横井輝夫,2003),Hb値が低い患者はリハビリテーションの結果が悪くなる可能性が高い(Wakabayashi H,2011)との報告があり,認知機能障害や低栄養状態がADLの改善に影響を及ぼしたと考える.以上の結果より,FIM利得を高めるためには,食事動作,排泄動作,認知機能,栄養状態に着目して早期から介入することが重要であると考える.