[PC-3-2] ポスター:呼吸器疾患 3呼吸器疾患患者に対する作業選択意思決定支援ソフト(ADOC)を用いた目標の傾向調査
【目的】呼吸リハビリテーション(以下,呼吸リハ)は,呼吸困難,運動耐容能,不安や抑うつを改善,健康関連QOLや健康状態を向上させ,入院を予防するエビデンスの確立された治療介入である.呼吸リハにおける評価では日常生活活動(Activities of daily living;以下,ADL)は必須の評価とされており,ADLトレーニングは作業療法士(以下,OT)が行うことが望ましいとされている.今回,当院に呼吸リハを目的に入院となった呼吸器疾患患者に対して,ADL,手段的ADL(Instrumental ADL;以下,IADL)の評価,介入を行うにあたり,作業選択意思決定支援ソフト(Aid for Decision-making in Occupation Choice;以下,ADOC)を用いて作業に焦点を当てた目標共有を行った.目標共有を図るにあたって呼吸器疾患患者が抱える重要な作業について,その傾向を調査・集計した結果について報告する.本報告は各患者に説明,同意のうえ実施している.
【対象】2020年8月~2021年8月までの1年間で当院に呼吸リハ目的で入院され,作業療法を処方された呼吸器疾患患者22名を対象とした.対象疾患は慢性閉塞性肺疾患12名,間質性肺炎10名.平均年齢は76.2歳.性別は男性18名,女性4名であった.
【方法】ADOCのインフォメーションに倣い重要な作業(1.できるようになりたいこと,2.新しくやってみたいこと,3.できなくて困っていること,4.心配に思っていること,5.できるようになる必要があること)を選択してもらい,最終的に選出した重要な作業5項目のカテゴリ名,作業名をそれぞれ集計した.
【結果】移動・運動24件(屋外の移動7件,屋内の移動5件,階段昇降5件,起き上がり2件,運転や操作2件,物を持って運ぶこと2件,交通機関の利用1件),家庭生活24件(建物の管理6件,掃除5件,買い物5件,洗濯4件,炊事3件,用具や車の手入れ1件),セルフケア22件(入浴8件,更衣6件,排泄4件,食事2件,整容2件),趣味22件(園芸11件,釣り3件,日曜大工2件,ドライブ1件,日記・ブログ1件,ペットの世話1件,本・雑誌を読む1件,旅行1件,カラオケ1件),スポーツ9件(ウォーキング6件,ゴルフ3件),対人交流5件(友人との交流3件,家族との交流2件),仕事・学習4件(仕事(有給)4件)という結果となった.屋内外の移動,建物の管理や家事などの家庭生活,入浴や更衣などのセルフケア,畑仕事を含む園芸などの趣味で,困難感や改善希望の訴えが多く聞かれた.
【考察】呼吸リハ目的で入院となる呼吸器疾患患者の主訴では「歩くと息切れがする」など,移動面での呼吸困難感が多く聞かれる印象があるが,今回ADOCを用いた目標設定を行い,移動面だけでなく,セルフケア,家庭生活や趣味活動も,重要な作業として比重が高いことが示唆された.先行研究では,患者が呼吸リハに望むことは,「息切れを気にしないで生活したい」が最も多いのに対し,患者が呼吸リハで指導を受けた内容としては「呼吸訓練」が最も多く,次いで「運動療法」,「呼吸体操」,「日常生活動作の工夫」の順となっている.包括的呼吸リハの中での作業療法士の役割は,ADLやIADLにおける呼吸困難の軽減を中心とした支援であるとされており,患者のニーズに応えるためには,OTによる意味のある作業の聴取,具体的な目標設定,効率的な動作指導,住環境整備などが必要であると考える.今後はADOCの作業満足度の変化や,長崎大学呼吸器日常生活評価表(Nagasaki university respiratory activities of daily living questionnaire;NRADL)の粗点の変化を追跡調査し,OT介入による効果検証を行っていきたい.
【対象】2020年8月~2021年8月までの1年間で当院に呼吸リハ目的で入院され,作業療法を処方された呼吸器疾患患者22名を対象とした.対象疾患は慢性閉塞性肺疾患12名,間質性肺炎10名.平均年齢は76.2歳.性別は男性18名,女性4名であった.
【方法】ADOCのインフォメーションに倣い重要な作業(1.できるようになりたいこと,2.新しくやってみたいこと,3.できなくて困っていること,4.心配に思っていること,5.できるようになる必要があること)を選択してもらい,最終的に選出した重要な作業5項目のカテゴリ名,作業名をそれぞれ集計した.
【結果】移動・運動24件(屋外の移動7件,屋内の移動5件,階段昇降5件,起き上がり2件,運転や操作2件,物を持って運ぶこと2件,交通機関の利用1件),家庭生活24件(建物の管理6件,掃除5件,買い物5件,洗濯4件,炊事3件,用具や車の手入れ1件),セルフケア22件(入浴8件,更衣6件,排泄4件,食事2件,整容2件),趣味22件(園芸11件,釣り3件,日曜大工2件,ドライブ1件,日記・ブログ1件,ペットの世話1件,本・雑誌を読む1件,旅行1件,カラオケ1件),スポーツ9件(ウォーキング6件,ゴルフ3件),対人交流5件(友人との交流3件,家族との交流2件),仕事・学習4件(仕事(有給)4件)という結果となった.屋内外の移動,建物の管理や家事などの家庭生活,入浴や更衣などのセルフケア,畑仕事を含む園芸などの趣味で,困難感や改善希望の訴えが多く聞かれた.
【考察】呼吸リハ目的で入院となる呼吸器疾患患者の主訴では「歩くと息切れがする」など,移動面での呼吸困難感が多く聞かれる印象があるが,今回ADOCを用いた目標設定を行い,移動面だけでなく,セルフケア,家庭生活や趣味活動も,重要な作業として比重が高いことが示唆された.先行研究では,患者が呼吸リハに望むことは,「息切れを気にしないで生活したい」が最も多いのに対し,患者が呼吸リハで指導を受けた内容としては「呼吸訓練」が最も多く,次いで「運動療法」,「呼吸体操」,「日常生活動作の工夫」の順となっている.包括的呼吸リハの中での作業療法士の役割は,ADLやIADLにおける呼吸困難の軽減を中心とした支援であるとされており,患者のニーズに応えるためには,OTによる意味のある作業の聴取,具体的な目標設定,効率的な動作指導,住環境整備などが必要であると考える.今後はADOCの作業満足度の変化や,長崎大学呼吸器日常生活評価表(Nagasaki university respiratory activities of daily living questionnaire;NRADL)の粗点の変化を追跡調査し,OT介入による効果検証を行っていきたい.