第56回日本作業療法学会

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ポスター

呼吸器疾患

[PC-3] ポスター:呼吸器疾患 3

Sat. Sep 17, 2022 12:30 PM - 1:30 PM ポスター会場 (イベントホール)

[PC-3-3] ポスター:呼吸器疾患 3呼吸器疾患に対する訪問作業療法の実施状況

宇佐美 好洋1中本 久之1伊藤 剛1下岡 隆之1盛田 路子1 (1帝京平成大学健康メディカル学部作業療法学科)

【はじめに】
 2025年には団塊の世代が75歳に達し高齢化が一層進むことから,今後さらなる呼吸器疾患患者の増加が予想される.このことから,筆者らは在宅での作業療法士(以下,OT)の需要が増えるとともに,OTはこの需要に応えられるだけの専門的知識を身につける必要があると考えている.実際に,在宅での呼吸リハビリテーションの必要性や需要があることは,いくつかの先行研究で示されている.しかし,在宅での作業療法の実施状況については,事例報告,文献レビュー,他の職種が含まれている調査,病院に焦点を当てている調査などで報告されており,訪問での作業療法に焦点を当てた調査報告はない.そこで本研究では,訪問リハビリテーション(訪問看護ステーションからのリハビリテーションスタッフによる訪問)において,呼吸器疾患に対する作業療法の実施状況を明らかにすることとした.
【方法】
 研究対象者は,日本作業療法士協会会員名簿に登録されている訪問リハビリテーション勤務者の中から常勤,非常勤に関わらず,600名を無作為抽出した.なお,現在OTとして勤務していない者は除外した.名簿の使用許可ならびに無作為抽出は,日本作業療法士協会へ申請,依頼した.調査はGoogleフォームを活用してwebアンケートを実施した.アンケートの内容は,「基本属性」「評価について」「目標について」「内容について」とした.アンケートは無記名とし,回収期間は約1ヶ月とした.アンケートにおける「回答の提出」をもって同意を得られたものとした.データの分析方法は,各質問項目について,総数に対する割合を単純集計にて百分率(%)で算出した.統計ソフトは,Excelを使用した.本研究は,所属機関の倫理審査委員会の承認を受けた上で実施している.
【結果】
 アンケートが回収されたのは218名(回収率36.3%)であった.そのうち,呼吸器疾患のある方を担当しているOTは154名(70.6%)であった.「評価について」は,「生育歴・生活歴」「現病歴・治療歴」「職業歴・学歴」「趣味・興味」「生活時間」「役割」「筋力・筋持久力」「姿勢・肢位」「関節可動域」「心肺機能」「起居移動」「身辺処理」「福祉用具などの代償手段の適用」「生活リズム」「個人生活適応」「余暇活動面」「家族構成・関係」「その他の人的環境・公的支援」「生活環境」「住居」の項目について80%以上のOTが実施したと回答した.「目標について」は,「運動機能の維持・代償指導」「起居動作の維持・代償」「身辺処理能力の維持・代償」「生活リズムの改善」「健康管理能力の維持・改善」「日常生活活動の改善」「人的環境の調整・利用」「物理的環境の調整・利用」の項目について80%以上のOTが設定したと回答した.「内容について」は,「基本動作訓練」「各種作業活動-日常生活活動」「相談・指導・調整」の項目について80%以上のOTが実施したと回答した.
【考察】 今回の調査結果では,回答していただいたOTの70%以上が呼吸器疾患を担当しており,そのうち80%以上が,心肺機能の評価を実施していた.さらに,環境調整や代償指導を通して身体機能を維持しながら日常生活活動の改善を目標としているOTが多いことがわかった.以上のことから,先行研究と同様に呼吸器疾患に対する訪問作業療法の必要性や需要があることが考えられ,これから呼吸器疾患患者を担当するOTは心肺機能の評価を行い,その結果に基づいて環境調整や代償指導を行い,身体機能を維持しながら日常生活活動を改善できる専門的な知識が必要であると考えられる.今後は,作業療法を実施していて困っていることなども明らかにしていく必要があると考えている.