[PC-3-5] ポスター:呼吸器疾患 3呼吸困難感により活動意欲が低下したクライエントに対し,認知行動療法を応用した作業療法を実践した1症例
【はじめに】今回,慢性呼吸不全急性増悪により活動意欲が低下しているクライエント(CL)に対し認知行動療法(CBT)を併用した作業療法を実践した.CLの思考を把握し,CL自身が気づきを得られるように仕向け円滑な作業療法の実践が可能となった症例を経験したため報告する.尚,本報告は本人の同意を得ている.
【症例紹介】70歳代男性.妻と二人暮らし.自宅内は伝い歩きで移動,排泄は自立し,更衣と入浴は妻の介助の元生活していた.慢性閉塞性肺疾患,特発性肺線維症により在宅酸素療法(HOT)が既に導入され安静時4L,労作時6Lの酸素流量で生活をしていた.今回は発熱と呼吸困難感を認め当院受診し,慢性閉塞性肺疾患と特発性肺線維症の急性増悪の診断で入院.入院後リハビリテーションは第3病日目から開始.その後細菌性肺炎を併発し,加療を経て第67病日目に自宅退院となった.
【作業療法経過】第3病日目より作業療法を開始するが,細菌性肺炎を併発し呼吸状態の悪化と改善を繰り返しながら約30日間が経過した.第33病日目より酸素化は改善したが,漠然と自宅復帰希望を訴えながらも作業療法には消極的で終日臥床傾向であり,FIM56点(運動38点,認知18点)とADLの低下を認めた.担当療法士は日中臥床傾向にあることと病棟でのADL低下の要因に活動意欲の低下が大きく関わっていると考え,希望である自宅復帰についてCL自身が具体的にどのような想いや考えを抱いているのか,また何故,臥床傾向にあり自宅復帰に向けた作業療法に対し意欲的な行動が反映されないのかを把握する必要があると考えた.そこで第44病日目より,非構成的場面にて「症例の概念化・定式化」により,何が生活の自立を妨げている要因なのかを分析した.結果,「動かなければ苦しくならない」というスキーマが働いていることがわかった.またナラティブインタビューから,入院前は自分で行えていた「排泄」について,「退院後も自立して行いたい」という希望がきかれ,介助者である妻に「これ以上迷惑をかけたくない」と自宅復帰を果たしたい理由について自身で気づくことができた.更にソクラテス式問答法と実際場面での動作練習から,現時点で希望する「排泄自立」に対し現状は大きく乖離が生じており,希望する自宅生活復帰が困難であるという気づきも得られたため,「排泄を自立し自宅退院する」とCLと協働し再度目標設定と共有を行った.その後,「排泄自立」に必要と予測される能力を考慮し自分で訓練内容を提案する姿がみられるようになった.記録表を作成し,訓練や自主練習の実施記録をつけるようにし,動機づけや活動量の自己調整が行えるようにした.更には,面接内容(目標や計画等)を用紙に記録していたため,訓練毎に目標を再確認しその日の訓練内容を決定することができた.経過の中で,CLからは「これだけできるようになったんだね」「こんなにできると思わなかった」「やってみないとわからなかった,やってよかった」「目標が定まるだけでこんなに違うんだね」等の語りがきかれるようになった.結果,目標としていた「排泄自立」は,毎回ではないものの1日に1〜2回はトイレでの排泄が可能となり,オムツ操作は一部介助が必要だがその他トイレ動作は自立し,伝い歩行にてトイレ移動が可能となった.CLからは「安心して家に帰れるから満足」という語りがきかれ,FIM65点(運動46点,認知19点)で希望であった自宅復帰を果たした.
【考察】CBTを用いたことでCL自身に気づきを与えることができ,それにより作業療法を円滑に実施することができた.慢性呼吸器疾患においてCBTを併用した作業療法は有用である可能性が示唆された.
【症例紹介】70歳代男性.妻と二人暮らし.自宅内は伝い歩きで移動,排泄は自立し,更衣と入浴は妻の介助の元生活していた.慢性閉塞性肺疾患,特発性肺線維症により在宅酸素療法(HOT)が既に導入され安静時4L,労作時6Lの酸素流量で生活をしていた.今回は発熱と呼吸困難感を認め当院受診し,慢性閉塞性肺疾患と特発性肺線維症の急性増悪の診断で入院.入院後リハビリテーションは第3病日目から開始.その後細菌性肺炎を併発し,加療を経て第67病日目に自宅退院となった.
【作業療法経過】第3病日目より作業療法を開始するが,細菌性肺炎を併発し呼吸状態の悪化と改善を繰り返しながら約30日間が経過した.第33病日目より酸素化は改善したが,漠然と自宅復帰希望を訴えながらも作業療法には消極的で終日臥床傾向であり,FIM56点(運動38点,認知18点)とADLの低下を認めた.担当療法士は日中臥床傾向にあることと病棟でのADL低下の要因に活動意欲の低下が大きく関わっていると考え,希望である自宅復帰についてCL自身が具体的にどのような想いや考えを抱いているのか,また何故,臥床傾向にあり自宅復帰に向けた作業療法に対し意欲的な行動が反映されないのかを把握する必要があると考えた.そこで第44病日目より,非構成的場面にて「症例の概念化・定式化」により,何が生活の自立を妨げている要因なのかを分析した.結果,「動かなければ苦しくならない」というスキーマが働いていることがわかった.またナラティブインタビューから,入院前は自分で行えていた「排泄」について,「退院後も自立して行いたい」という希望がきかれ,介助者である妻に「これ以上迷惑をかけたくない」と自宅復帰を果たしたい理由について自身で気づくことができた.更にソクラテス式問答法と実際場面での動作練習から,現時点で希望する「排泄自立」に対し現状は大きく乖離が生じており,希望する自宅生活復帰が困難であるという気づきも得られたため,「排泄を自立し自宅退院する」とCLと協働し再度目標設定と共有を行った.その後,「排泄自立」に必要と予測される能力を考慮し自分で訓練内容を提案する姿がみられるようになった.記録表を作成し,訓練や自主練習の実施記録をつけるようにし,動機づけや活動量の自己調整が行えるようにした.更には,面接内容(目標や計画等)を用紙に記録していたため,訓練毎に目標を再確認しその日の訓練内容を決定することができた.経過の中で,CLからは「これだけできるようになったんだね」「こんなにできると思わなかった」「やってみないとわからなかった,やってよかった」「目標が定まるだけでこんなに違うんだね」等の語りがきかれるようになった.結果,目標としていた「排泄自立」は,毎回ではないものの1日に1〜2回はトイレでの排泄が可能となり,オムツ操作は一部介助が必要だがその他トイレ動作は自立し,伝い歩行にてトイレ移動が可能となった.CLからは「安心して家に帰れるから満足」という語りがきかれ,FIM65点(運動46点,認知19点)で希望であった自宅復帰を果たした.
【考察】CBTを用いたことでCL自身に気づきを与えることができ,それにより作業療法を円滑に実施することができた.慢性呼吸器疾患においてCBTを併用した作業療法は有用である可能性が示唆された.