第56回日本作業療法学会

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ポスター

運動器疾患

[PD-1] ポスター:運動器疾患 1

Fri. Sep 16, 2022 12:00 PM - 1:00 PM ポスター会場 (イベントホール)

[PD-1-1] ポスター:運動器疾患 1人工肘関節置患者に対し術後早期からADOC-Hを用いた実践経験

清永 健治1 (1医療法人社団友志会石橋総合病院リハビリテーション科)

【緒言】ADOC for Hand(以下ADOC-H)は大野らにより実生活における患側上肢の使用を促す事に焦点を当て開発された.今回関節リウマチ(以下RA)による変形性肘関節症に対し人口肘関節置換術を施行した症例にADOC-Hを用いた作業療法を行った.目標設定を明確化,共有化を図る目的でADOCHを導入し,短期的に良好な成績が得られ,また症例自身からも好意的な反応が得られたので考察を交え報告する.
【症例紹介】症例は60代女性,学童保育支援員で右利きである.30代でRAを発症し,X年に右肘関節の疼痛と可動域制限が著明となり手術目的で当院紹介となった.術前肘関節可動域は屈曲95°,伸展-65.Y月Z日に人口肘関節置換術施行.作業療法はZ+3日から介入開始.症例の希望は箸を使用しラーメンが食べられるようになる事であった.発表に際し症例には書面にて同意を得ており,当院倫理委員会の承認を得ている.
【介入経過】ADOC-Hによる合意目標は経時的に表記するため通し番号とし,面接は1か月に1度の頻度で実施した.Z+4日目から介入開始.Z+7日目にADOC-Hにて面接を実施し,合意目標として①右手で箸の使用②両手で洗顔③両手で上衣のボタン操作④重いものが洗える⑤両手でアクセサリーの装着となった.面接実施後,症例からは「目標がはっきりするとやる気が出るね.頑張って右手でラーメン食べなきゃ」と話が聞かれた.Z+8日目から作業療法時のみ愛護的に肘ROMを開始し,屈曲95°,伸展-60°であった.また箸操作の練習を開始した.箸操作はZ+12日目で口元まで到達可能となり,肘ROMは伸展-45°,屈曲110°まで拡大した.Z+24日目から外来作業療法ㇸ移行し,Z+26日目には箸でラーメンを食べる,アクセサリーの装着は行え,「以前よりもスムーズにできるようになった」と嬉しそうに症例は話していた.作業療法ではリーチ動作練習や上腕筋群のストレッチなどを中心に実施.Z+35日目に2回目の面接を実施.初回面接の結果として①が満足度5,②が満足度2,③が満足度4,④が満足度2,⑤が満足度5となった.また,新たな合意目標として⑥化粧水が塗れる⑦高い棚に食器を収納できる⑧拭き掃除が出来る⑨飲料容器の蓋の開け閉め両手で行えるとなった.症例には項目別に必要な練習プランを伝え作業療法を継続した.Z+71日目で3回目の面接を実施,2回目の結果は⑥が満足度4,⑦が満足度4,⑧が満足度4,⑨が満足度5となった.新たな合意目標として⑩根菜類が包丁で切れる⑪洗濯鋏の操作⑫服の袖通し・抜きが疼痛なく行えるとなった.症例には必要なプランを伝え,練習を継続しZ+105日で作業療法は終了となった.
【結果】ADLは荷重制限以外の部分において支障なし.3回目の面接の結果は⑩が満足度4,⑪が満足度5,⑫が満足度2となった.症例からは「毎回目標が更新されて行くことは励みになるし,達成できたことや出来たことの確認になって嬉しい」と話が聞く事ができた.肘ROMは屈曲120°,伸展-45°,回内65°,回外60°まで拡大した.
【考察】術後早期から症例に必要な作業活動を可視化,またそれに対するプロセスを共有していく事によって,症例のモチベーションの向上に寄与できた事が早期の目標獲得に繋がったのではないかと考えられた.また経時的に面接を重ねることで,レベルアップしていく目標が症例の患側上肢を使用する意識への向上にも影響を与えていた事も印象的であった.急性期の運動器疾患では疼痛の影響や機能面へ視点が向きやすく,作業活動に焦点を当てた目標設定が後手に回りやすい印象があるが,ADOC-Hを効果的に用いる事で早期から患側上肢の使用に焦点を当てる事ができる可能性が示唆された経験であった.