第56回日本作業療法学会

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ポスター

運動器疾患

[PD-1] ポスター:運動器疾患 1

Fri. Sep 16, 2022 12:00 PM - 1:00 PM ポスター会場 (イベントホール)

[PD-1-2] ポスター:運動器疾患 1橈骨遠位端骨折患者の患側上肢の日常使用を促すためのアプリケーションツール(ADOC-DRF)の開発

大野 勘太1古桐 瞳2友利 幸之介1 (1東京工科大学医療保健学部リハビリテーション学科作業療法学専攻,2五反田リハビリテーション病院リハビリテーション科)

【はじめに】我々は,上肢の日常使用を促進するためのアプリケーションツールであるADOC-H(Aid for Decision-making in Occupation Choice for Hand)を開発した(Ohno et al. 2016).ADOC-Hには,130種の上肢の使用場面のイラストが,ADLやIADLのカテゴリーごとに分類されて搭載されている.本報告では,ADOC-Hの整形外科領域の適応を目的に,手の外科領域でも発生頻度が最も高い橈骨遠位端骨折の掌側ロッキングプレート術後のリハビリテーションプロトコルに準じてADOC-Hのイラストを選定したADOC-DRF(distal radius fractures)を開発することを目的とした.本報告は東京工科大学研究倫理委員会の承認を得ており(E18HS-025),研究対象者には,アンケートの冒頭で研究概要について十分に説明し,同意を得ている.
【研究デザイン】項目の妥当性を検証するために,はじめに1)Nominal group法を実施してADOC-DRFのプロトタイプを作成し,2)Delphi法を用いてプロトタイプに採用された項目に関する合意形成を検証した.
【対象】1)Nominal group法:手の外科領域に10年以上の臨床経験がある作業療法士3名.2)Delphi法:スノーボールサンプリング法を用いてリクルートした手の外科領域に5年以上の臨床経験がある作業療法士22名.
【方法・結果】1)Nominal group法:各所属施設のリハビリテーションプロトコルを参照しながら,ADOC-DRFの活動を分類するための術後経過期間の区分を検討し,第1期:術後から抜糸まで,第2期(前期):抜糸~軽負荷活動可能,第2期(後期):ADL・IADLの制限なし,3期:荷重制限なしの全4期の構成とした.ADOC-Hの130項目から各期に患側上肢の使用を促す場面として適している項目を抽出し,参加者の意見を集約した.最終的にプロトタイプとして,第1期に15項目,2期(前期)に14項目,第2期(後期)に14項目,第3期に4項目の計47項目を採用した.2)Delphi法:研究参加者に対してWebアンケート(Google form)を実施し,ADOC-DRFのプロトタイプの各項目に関して,「①患側上肢の日常使用を促す活動として適切か?」,「②掲載する時期は適切か?」,「③イラストは活動を適切に反映しているか?」について,それぞれ「適切」,「不適切」の2択で回答を依頼した.また,自由記述欄も設けて意見を集約した.研究代表者が回答や自由記述のコメントを集計して匿名化して参加者にフィードバックを行い,賛成率が75%に満たない項目に関しては検討を繰り返した.計3回のラウンドが実施され,合意達成率は1stラウンド90.9%,2ndラウンド83.0%,3rdラウンド100%となった.また,時期の表記に関して《1)固定期(術後〜抜糸・抜鉤):術後1日~2週目》,《2)固定除去期(自動運動開始):術後2~3週,《3)固定除去期(仮骨形成):術後3~6週》,《4)抵抗期(骨癒合):術後6週~》に名称が変更され,1)固定期に16項目,2)固定除去期に16項目,3)固定除去期に8項目,4)抵抗期に12項目の計58項目が選択された.さらに,自由記述のコメントを受けて,橈骨遠位端骨折の疫学情報を参考にすべてのイラストを高齢女性に統一し,既存のADOC-Hのイラストの修正を行った.また,ADOC-DRFの適応外となる要件として,腱断裂や神経損傷,複合性局所疼痛症候群などの合併症が追加された.
【考察】本研究では,ADOC-Hの項目を専門家の意見を集約して,橈骨遠位端骨折患者の掌側ロッキングプレート術後のリハビリテーションプロセスに準じて選定してADOC-DRFの開発を行った.今後は,ADOC-DRFの臨床有用性について検証するために,患者や作業療法士へのアンケート調査などを進めていくこととする.